読書感想文 「この気持ちもいつか忘れる」
久しぶりに、小説を読んだ。
素晴らしい作品であり、とても良い時間を過ごせた。
普段、本を読むのにとても長い時間をかけるのだが、この作品は後半6割を夜中に読み切ってしまった。何というか、読み進めるにつれて、読みたいという衝動が加速度的に増していった。
この作品は、私が好きなTHE BACK HORNというバンドの楽曲とのコラボレーション作品であり、作品を知るきっかけも、ハナレバナレという楽曲であった。
読む際には、是非ともこの一枚とともに過ごして欲しいと思う。5曲入りのEPであり、その全てが、物語と深く関わっている。
私がこの本を読んで得た感想・学びは、
・他者の他者性の大切さ
・好きなものや人との向き合い方
主にこの2点である。
正直、小説の感想文を真面目に書いた記憶が朧げなので、どのようにすればネタバレせずに書けるのかが分からない。
だから、可能な限り、私の感覚にフォーカスして書こうと思う。
・他者の他者性の大切さ
他者は他者でしかない。
どんなに強い思いを抱いていても、自分と同化することは無い。
お互いを知る試みは出来ても、知り尽くすことはもちろん、己の考えと同じものを相手が抱いていない可能性を、どんな時も忘れてはいけない。
互いに特別だと思い合う関係であっても、前述の意味合いにおいて、凡庸な(だと思う)存在との差は少ないのかもしれない。
しかし、恐らくは多くの人が、特別な人に特別だと思われたいのだろう。そうであっても、特別だと思う存在と完全に分かり合うことは出来ない。
その当たり前を、改めてリアルな情景をもって突きつけてくれる。電撃が走る様な感覚があった。少しの痛みと、このことを忘れない様にしないとな、と襟元を正された様な気持ちにさせられた。
・好きなものや人との向き合い方
一つめからの展開になるのだが、それならばどう向き合えば良いのだろう?
分かり合えない部分を見つけたとき。特別だと思った存在が、己のためだけには存在していないことを、改めて感じたとき。少なからず、失望を味わうはずだ。
それでも、対象を好きでいたい。そう思えたのなら、その思いは嘘ではない、という確信を与えてくれた。私もまた、この歳になって不安で仕方がなかったのだろう。
相手と対話が出来るのならば、「輪郭」という曲にもある様に、
存在を伝え合い、互いを認め合う
このことの繰り返しに尽きるのだろう。とても難しいこの行いを、少しでも上手になっていきたい。
相手が、例えば音楽のように、人ではない場合はどうか。
私は音楽に、ある意味人格を感じているし、雄弁に語る存在でもあると思っている。
だから、真剣に向き合い続ける気持ちを新たにした。
いつ何時でも私を肯定してくれるわけではない。これも当たり前のことだ。それでも目を背けずに、自分が聴くことを選んだ音楽について、一つひとつの楽曲をただ只管に真剣に聴くこと。音はもちろん、込められた思いも含めて、全てを受けとめられる様な人間を目指したい。
受け入れる、というよりは、受けとめる。
どうでしょう。
私に書ける感想文としては、こんな感じです。
正直、一回読んだだけでは、まだ足りないです。
自らの想いや記憶と共に、もう一度、必要なら何度でも、反芻する様に読みたい作品です。