見出し画像

マルクス・ガブリエルの『倫理資本主義の時代』はこれまでと違う。

マルクス・ガブリエルの『倫理資本主義の時代』が出版された。
早川書房のハヤカワ新書の一冊としてだ。
そのハヤカワ新書の広告用のNoteに私はこういう書き込みをした。

これまでのマルクス・ガブリエルの主張と違うのは、マルクス主義、新マルクス主義批判を明確に述べていることです。
革命をめざすのではないというマルクス主義への批判は、マルクスの剰余価値説および搾取の考え方が労働価値説を根拠としており、商品交換における価値決定はその要素だけで決まるのではなく、実際には労働価値説で説明できない様々な要素の集合であるということからです。
新マルクス主義への批判としては、この本を監訳している斎藤幸平氏を含む新マルクス主義の「脱成長」への疑問です。監訳者まで批判の対象です。
資本主義は利益を得るために、イノベーションなどにより発展してきました。ケインズやシュンペーターもそれを資本主義の本質と捉えました。脱成長では世界が衰退することを述べています。
「資本主義はひとつの経済システムではない」というマルクス・ガブリエルの主張は、生産手段の私的所有の廃止、計画経済というひとつの社会主義経済システムとは違うということなのでしょう。
マルクス・ガブリエルの思想は、社会主義実験が終わった後の世界で、経済学思想とともに資本主義を再興する一つの思考方法だと思いました。

ただ、これまでマルクス・ガブリエルはスティーブン・ピンカーの『21世紀の楽観主義だとか楽観主義だとかこっぴどく批判していた。
ピンカーとの違いはどこにあるのか?

GPT-4(Copilot)に聞いてみた。

スティーブン・ピンカーとマルクス・ガブリエルは、ともに「啓蒙」の重要性を強調していますが、そのアプローチと解釈には違いがあります。
スティーブン・ピンカーは、啓蒙主義の理念――理性、科学、ヒューマニズム、進歩――が人類に繁栄をもたらしていると主張します12。彼は、世界は決して暗黒に向かっていないと説き、食糧事情から平和、人々の知能まで、多くの領域が啓蒙の理念と実践により改善されてきたことをデータで示しています1。ピンカーは、啓蒙主義の理念が今、かつてないほど援護を必要としていると主張し、ポピュリズムと二極化、反知性主義の時代の今こそ、啓蒙主義の理念は新しく、現代の言葉で語り直される必要があると説いています1。
一方、マルクス・ガブリエルも啓蒙の重要性を認識していますが、彼のアプローチはピンカーとは異なります。ガブリエルは新実在論や新実存主義の論客として知られ、現在は「新しい啓蒙」プロジェクトを展開しています34。彼は「倫理資本主義」を提唱し、倫理的な価値と経済的な価値の両立を可能とする新しい理論を構築することを目指しています5。また、ガブリエルは「新型コロナ前の世界に戻ることは不可能であり、コロナ前の日常に戻りたいという願望は間違いである」と述べ、倫理と経済は相反するものではないと主張しています5。
したがって、ピンカーとガブリエルの共通点は、啓蒙の重要性を認識し、それを現代社会に適用しようとする点です。しかし、そのアプローチは異なり、ピンカーは理性と科学による進歩を強調し、ガブリエルは倫理と経済のバランスを重視するという相違点があります。これらの違いは、それぞれの哲学的背景と視点の違いから来ています。

GPT-4は賢いなあ。
「ピンカーは理性と科学による進歩を強調し、ガブリエルは倫理と経済のバランスを重視する」って端的に示してくれた。

この前の大統領選の直前にジョゼフ・スティグリッツが『プログレッシブ資本主義』という本を出版した。

アメリカは経済格差が進み、政治的な分断が進んでいた。
ジョゼフ・スティグリッツは、それを批判し、医療制度改革などオバマ政権時代にやろうとした政策を進めるべきと提唱していた。
ノーベル賞を受賞した経済学者の資本主義再興の書だった。

マルクス・ガブリエルは哲学者である。
その哲学者であるマルクス・ガブリエルが経済学の原理について考えを述べているのがこの本だ。

今回、アメリカ大統領選挙はどうなるか不透明だ。

いずれにせよアメリカの資本主義はもう目指すべきモデルではない。
マルクス・ガブリエルは資本主義世界は入れ子構造(マトリョーシカのような何重にも重なる構造)になっていると言っている。

社会主義実験の失敗は、中華人民共和国には国家の統治と経済の統治を分けて考える教訓を与え、政治的自由を奪いながら経済的自由を国民に与えようとしている。
資本主義国は一括りにはできない。しかし、社会主義実験の失敗により、パラレルワールドとしての社会主義モデルはなくなった。それはユートピアではなくディストピアになることがわかった。
失敗がそれを補うように新たに包む世界ができる。
そして次の時代の失敗がまたそれらを包み込む。

マルクス・ガブリエルの思想は、企業や社会を見直す上でとても貴重なように思う。

いいなと思ったら応援しよう!