【10月活動レポート】 「聞き書き」がスタートしました!
★人体改造カブ式会社??と疑問を抱かれた方はこちらをご覧ください。
2020年10月、予てより進めていた企画「聞き書き」がスタートしました。現在も札幌駅前通地区でお暮らしになっている方を訪問し、この記事を執筆している時点で既に2回お話を伺いました。今回は実際「聞き書き」までの段取り、「聞き書き」当日の所感などをお伝えします。
前回のおさらい
2020年2月から3ヶ月ほど、新型コロナウイルス感染拡大を受けて人体改造カブ式会社は活動を見合わせていました。その後、5月12日から社内会議をオンライン会議にシフトし、活動を再スタート。現在は駅前通地区の健康の向上を目指しながら、「聞き書き」に取り組んでいます。
前回の社内会議では「聞き書き」本番に備えて練習をしました。練習と銘打ってはいますが、お互いの知られざる幼少時代のエピソードを聞いたり話したり、とても興味深い体験を分かち合いました。その際に感じた課題や所感はこちらの記事にまとめています。
さて、まずは企画実施の段取りからお話を始めます。
実際に「聞き書き」するまでの流れ
最初に、語り手を引き受けてくださる方を探さなければいけません。人体改造カブ式会社が「聞き書き」に取り組む意義のひとつに『まちの歴史をかたちにして残す』ことを掲げていますので、昔からこの地区にお住まいだった方に語り手をお願いするのが理想的です。
しかし、「聞き書き」創始者である小田豊二さんの教科書『「聞き書き」をはじめよう』においても、語り手探しの難しさについて書かれているように、たとえこちらに熱意があったとしても、飛び込みで語り手にお願いするようでは、了承のハードルは非常に高いと思います。誰だって、見ず知らずの人に自分の過去を話すことには抵抗がありますよね...。
この教科書では自分の身の回りの関係、人脈から語り手を探すことを推奨していました。その点において事務局である札幌駅前通まちづくり株式会社は、札幌駅前通地区に根ざした事業を通して信頼関係を構築してきたので、この地区の企業、事業者(ステークホルダー)に相談をしやすい環境でした。
会社設立から今まで、筆者の先輩たちが築き上げてくれた信頼をもとに、今回は事務局(札幌駅前通まちづくり株式会社)とお付き合いがある方から語り手をご紹介いただき、快くお引き受けいただきました。その後お互いのスケジュールを調整し、日程を設定しました。
事前に用意しておくもの
必ず用意しておくもの
・録音機(予備入れて2台くらい)
任意だけどあると良いもの
・聞き書きの概要説明ペーパー
・語り手の人生周辺の年表
「聞き書き」は「①話を聞く」→「②録音を文章に書き起こす」→「③「聞き書き」の文体(語り手の話し言葉)に整える」フローで動くので、あたり前ですが『録音機』は必須です。必ず録音機を持っていき、iphoneの使用は避けたほうがベターでしょう。先日実際に起こった事故ですが、iphoneのボイスメモアプリは、電話の着信によって録音が停止します。幸いこの日は別の録音機が稼働していましたが、せっかくのお話も録れていないと台無しです。
『聞き書きの概要説明ペーパー』は、初回の「聞き書き」を始める前に語り手にお渡しし、企画趣旨を説明をする物です。その際「聞き書き」の意義や特性の説明も必要ですが、人体改造カブ式会社がこの企画に取り組む意義もお伝えし、ご理解をいただいた上で「聞き書き」に臨みます。なお、文字のサイズは少し大きめにしておきます。
そして、ハンドアウトとして用意し、大活躍だった資料が下図の『年表』です。具体的には語り手が過ごされた時代前後の歴史を「①語り手(と家族)の歴史」「②まち(札幌、北海道)の歴史」「③日本の歴史」「④世界の歴史」の順に並行して並べます。「ご本人の歴史」については、生年月日など事前に判明しているものがあれば記載し、あとは「聞き書き」を重ねながら順次書き加えていきます。
年表を作るメリットは大きく以下の3点に分けられると思います。
①語り手の話を歴史に沿って時系列で捉えやすくなる
②その年に地元、日本、世界で何が起きていたかわかる
③話題に出た出来事の年月がすぐ確認できる
①は「聞き書き」中も一目で参照できますし、後日、録音の内容と照らし合わせて話の流れを整理することもできます。
②は話題作りにも一役買ってくれます。「ご結婚の年はちょうど雪まつりが初開催された年ですね」と話すと、雪まつりの思い出の話に繋がったりもします。若い世代にとって歴史上の出来事として捉えられている出来事が、語り手の世代ではリアリティを感じる出来事であったり、その親世代から伝え聞いた話とリンクしたりして、色々思い出す契機にもなるので、世界規模の歴史でも大きな事件やメジャーな出来事は記載しました。
③も重要なポイントです。話の最中に「えーと、あの出来事はいつだったかな...」と、語り手が考え込むことが何度かありました。こちらから「昭和40年です」と助け舟が出せると、その昭和40年に紐づけられたいくつかの記憶が蘇るようです。
「聞き書き」当日のようす
1回あたりのお話の時間は1時間程度が適切だと感じられました。あまり長く話されていると語り手も疲れてしまうでしょうし、録音を書き起こす負担も増えてしまいます。
書き起こし作業は人体改造カブ式会社のシャイン(社員)で作業を分担しています(一人あたり15分〜20分あたりの分量)が、集中しても2〜3時間はかかります。個人で「聞き書き」をする場合は1時間の分量でもハードだと思いますし、語り手の体調にも寄り添う必要があるので、適切な時間はケースバイケースですね。
今回の語り手はご高齢にも関わらずとても矍鑠(かくしゃく)とされた方でしたので、聞き手も語り手も楽しい時間を共有することができました。戦争にまつわる悲しいエピソードもありましたが、笑える話、ご家族のお話は嬉しそうにお話しされていたことがとても印象に残っています。
語り手も、聞き手も共に楽しい時間を分かち合えたことはもちろん、様々な記憶を思い出すことができたと感謝のお言葉をいただき、語り手の心のケアに寄与できた実感がありますし、とてもやりがいのある仕事だと感じています(むしろ聞き手である我々のメンタルの方が上向きになっているのではないでしょうか...笑)。
次回の社内会議は...?
Zoomにて社内会議を開催します。「聞き書き」の所感や、書き起こしにトライした感想、課題点をを共有します。
録音では聞き取れなかった部分を聞き取る人、聞き書き文体にリデザインする人、年表を更新する人、冊子のレイアウトを考える人など、今後の分担作業はより細分化されます。どの作業が必要で、どのように割り当てていくかも含めて今後の「聞き書き」の方向性を考えていく会議になりそうです。
次回の活動レポートもお楽しみに!
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