いい会社づくり、その第一歩の極意
よし今日から「いい会社」をつくるぞ。
「これからわが社は、人を大切にする人本経営を実践して関わる人が幸せになる会社にしていきます。業績軸から幸せ軸です。皆さんも協力をお願いします」
朝礼で一大決意をして、社長は発表しました。
これで社員も喜んでくれるだろうと思いましたが、なんか変です。予想していた反応がありません。全然表情に変化がないのです。
鏡は先に笑わない
社長の話を社員たちはどう感じていたのでしょう。
「なんかまた思いつきで新しいこと始めるのか?」
「人本経営?なんだそれ。どうせこの会社は変わらんさ」
「目の前の仕事こなすだけで精一杯。余計な事させられなけりゃいいが・・・」
ひょっとしたら、そんなことを一人ひとりの社員は心の中でつぶやいていたのかもしれません。
その時点での社員の幸福度は、そこまで経営者や経営陣がやってきたことに対する信頼度合いに比例しています。業績最優先だった方針をある日突然、業績は手段、働く人の幸せをこれからは最優先に考えていくといったところで、信頼感が低ければ、それだけの反応しかないのは当然です。
鏡は先に笑わないという言葉があります。鏡の向こうにいる自分に対して真面目な顔して「ほら、笑いなさい」と投げかけても決して笑いません。でもこちらが笑顔になると鏡の向こう側の自分も笑顔になります。対人関係でも同じです。
まず社長としての本気度をみせる
大阪にヒグチ鋼管株式会社という会社があります。経営者の樋口浩邦社長は、今から6年前、大阪では2期目として開催した「人本経営実践講座」に参加され、人本経営を学ばれました。人口減少の社会環境の中で、これからは人を大切にする人本経営を自社で実現していくことが何よりも大切だと感じて、経営方針を業績軸から幸せ軸へ転換していくことを目指していきます。
しかし、それまでに染みついていた業績最優先の経営は、職場に長時間労働を蔓延させ多くの社員は疲弊し、社長が伝えようとしている言葉が、その耳になかなか届きません。
当時、ヒグチ鋼管では、たくさんの注文をいただき、いつも受電が鳴りっぱなし状態でした。お昼時も、定時後も電話が鳴り続けていました。
それに対応していると、いつまで経っても適正な労働時間で仕事をしていくことは叶わないと考え、樋口社長は決断しました。
「もう電話取らんでええ。」
担当している社員たちは、19時位までなら残業してもかまわないと進言したが、「あかん、18時までが当社の営業時間や。これからはそうする。」と本気の判断を示したのです。
惰性となっている現状を放置せずに、社員がより幸せを実感して働き続けられるためにはどうあるべきかを判断し経営決断をしていくことで「社長は本気だ」と社員に伝わっていきます。
そして、同時に家族を大切する会社にしていくということを表明するために次の手当てを導入していきました。
子供手当(5000円/人)
結婚祝い金(3~5万円)
出産祝い金(1人目10万円・2人目20万円・3人目以降30万円)
人を大切にしていきたいという思いを手当てや補助で形にしていくのは、わかりやく人本経営初期の段階では効果を発揮するものです。
こうして、ヒグチ鋼管は人本経営へのスタートダッシュに成功していったのです。その後は、手を緩めず人を大切にする人本経営を年々充実させ、今では新聞、テレビ、ラジオなどのメディアで紹介されるほどの「いい会社」になっています。もちろん結果としての業績がきちんとついてきていることは言うまでもありません。