『インタビューというより、おしゃべり。 担当は「ほぼ日」奥野です。』 ここまでがタイトルだったのですか。
本のタイトルとしては長くて変。これは装丁に文字を並べてからタイトルを決めたためでしょうか。あぁ、ウェブページっぽいつくりなのか。「おしゃべり」がメインメッセージであることは読み取れる。
私は「ほぼ日」の読者ではないので、すべて初見でした。
すごい読み物でした。いやはや、これらが無料で読めるほぼ日ってすごい。すごいが重複するくらいすごい。
インタビュアー自身が感動してしまう話が山盛りです。この方の対象者への興味・尊敬と、言葉に対する感性に感嘆します。
おそらく、ウェブの記事ではなく、紙の本だからこその面白さがあると思います。というのは、インタビューとしての統一性というか、全体でひとつの連作短編小説を読んでいるようでもあったから。
冒頭の柄本明さんの話題が後半の窪塚洋介さんにつながったり、映画監督・原一男さんが語るドキュメンタリーの中の虚構と、同じく映画館監督・佐々木昭一郎さんのフィクションで真実を描くという言葉が対比のように感じられたり。
小説のようだとしたら、その主人公は紛れもないインタビュアーの奥野さんでしょう。
佐々木昭一郎さんの
読書は、主人公といっしょに歩くんです。
とのコメントが、そのまま当てはまります。
インタビュアーの奥野さんは、話をしながら共感し、納得し、驚く。それは、読んでいる我々が全く同じ気持ちを抱くところです。自分が聞いているような、話をしているような感覚で、対象者の言葉を追っていました。
インタビューは、それぞれの道で必死に取り組んだ、生きてきた人たちの哲学のようなものを「言葉」として抽出した、貴重な記録でもあります。会話ならではの、そこでしか生まれなかったであろう言葉も少なくないでしょう。
奥野さん自身が書いていますが、質問に対してスッとまとまったコメントが出てくる場合、その人は普段からそのことについて考えている。一方、時間がかかったり、話の中で次第に考えが整理されていったりするような場合もあり、そういうところに「インタビュー」「会話」の醍醐味を感じます。
インタビュー自体もおもしろいのですが、インタビューの終りに奥野さんによるコラムが載っており、これが素晴らしい!
巻末の、奥野さん自身へのインタビューも非常に興味深かったです。
紙の本で読むっていいと思うよ。
それにしても、引越しが終わってから順調に積み本が増えています。読むスピードを遥かに上回って。次の引越しが怖いけど今は考えないことにする。