わかりやすくてびっくりぽん;『現代経済学の直観的方法』/長沼伸一郎
こんなに「経済学」をわかりやすく説明してくれる本は、今まで出会ったことがない。これまでも「経済学」への苦手意識を克服しようと何冊が挑んできたが、全体の概略がここまですっと理解できたのは初めてだ。
確信犯的に、経済学の事象を単純化して示している。もしかしたら専門家の中には眉をひそめる向きもあるかもしれない。しかし、専門家は、自身の専門分野に関することが気になって、結局、専門的な説明しかできないものである。部外者が苦労して本質を理解した、その手法で教えて貰った方が、いちばん大事な主題がするっと理解できるものだったりする。
確かに細かいところでは、そこまで言い切っていいの?と思うところもある。しかし、とかくわかりにくい経済学の概略、根幹に横たわる理屈をいかにコンパクトに示すかという点では、見事と言うほかなかった。
本書の内容は相当練り込まれているなぁ、と思ったら、後書きに書籍化の構想から20年経ているとのこと。決して、ぽっと出の本ではない。
あとがきで、本書を書いた同機についてこう書いている。
それは何よりも、科学者の社会的無力を見てきたからである。現在の世の中では特に日本の場合、科学者や技術者は「役に立つ使われ人」でしかない。
科学技術を志している人も、すべからく経済社会の中で生きている。社会人の基礎知識として「経済」の概要はしっかり理解しておく必要があろう。そういう人にとって、確かに最適の導入書となるだろう。
それだけではなく、多くの人に広く読まれるべき内容なのではないかと、経済学素人の私が思った次第。
そして、専門分野をわかりやすく説明できるのは、必ずしも専門分野の人ではないのだなぁと、そういうことを感じている。
お前はどうなのだと自問しながらね。