「大勢の中にいる孤独に安堵する」
「新装版」の新書として売られている吉本隆明氏の『ひきこもれ』を読んだ。
吉本隆明というと、思想界の巨人といわれ、文章が大変難しい印象を持っている。しかし、この本は口頭で語られた言葉をまとめたもので、非常に平易でわかりやすかった。短時間でササッと読んだものの、問題意識への切り込みは鋭く、しばらく心に残りそうである。
たぶん、読む世代、読むひとの持っている経験や考え方で、こころに残るポイントはかなり違うんじゃないだろうか。
私の場合「ひきこもり性」という部分は多分に持っているので、うなずく部分と励まされる部分が多かった。
特に、後半に出てくる自身の経験談のところで、「大勢の中にいる孤独に安堵する」という記述をみつけて、小躍りした(こころの中で)。
私も学生時代からそういうところがある。誰かと一緒に行動するのは煩わしいけど、賑やかな場所は嫌いではない、というか積極的に賑やかな場所にいたいと思うことがしばしばある。我ながら矛盾した行動だと思っていたのだが、他の人もそうなのかと合点がいった。
そうなのだ、外界とのつながりを持ちながら、ひとりでいることでバランスを取っているのだ。
自分自身でもう一度フラットに考えてみようと思ったことがある。いろいろなところで感じる違和感に対して、誰かの言葉を期待するのではなく、自分の言葉を持ちたいということだ。
いままでもそう感じていたが、改めてはっきり言葉で認識させてもらった気がする。その歳で今更か、と言われそうだが、「今でしょ」なのだ。
たぶん、本をたくさん読まなきゃと感じているのも、そういう気持ちがどこかにあるからだろう。誰かに何かを伝えたいということから出発するのではなく、まず自分の中にちゃんとした言葉を持ちたいと思う。
短時間の読書でいろいろ考えました。お得な本だと思います。