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【東京ヤクルト】2024ドラフト振り返り&選手ピックの変化(個人的見解)

はじめまして。じんから(@jinkara_1)です。
2024年ドラフトが終了してから、個人的にドラフト指名選手のことを諸々調べていた中で新たに感じた変化フロントの指名意図といった要素をまとめたかったので、あくまで個人的な見解ではありますが、今回備忘録がてら形にしておきたいと思い執筆に至ります。

今回は東京ヤクルトスワローズ『2024ドラフトの振り返り&選手のピックに関する個人的に感じた変化』を書いてきたいと思います。
※本記事内の選手名は敬称略させていただいておりますので、予めご了承ください

ドラフト前の個人的な所感として、編成面で様々な課題点があるとはいえ、24年シーズン中にオスナ、サンタナ両助っ人の引き留めをしたこと&来季は村上宗隆のラストイヤーということから、2025年シーズンは「優勝を狙う年」として位置付けているだろうと見ていて、その点から即戦力投手に特攻するのではないかとなんとなく思っていました。

最初にヤクルトの現有戦力や年齢分布図含めて、諸々述べていきます。
ドラフト指名選手の詳細を見たいという方は目次項目にて飛ばしてお読みいただければ幸いです。


1.事前の補強ポイントについて

本指名振り返りの前に、今年のドラフトで補充しておきたかったポジションや補強ポイント諸々を簡単に整理していきたいと思います。(個人的見解)

ヤクルトスワローズ【全体デプス表】(2025年度の年齢)

近年のヤクルトはドラフトで投手中心に獲得してきた影響も相まって、野手層(特に23,24歳以下)が薄い現状でもありました。

よく言われるヤクルトスワローズの課題点といえば、先発投手不足が指摘されることが多い一方で慢性的な野手不足、主砲・村上宗隆が来季限りの想定、野手の主力メンバーの高齢化など諸々相まって、日々ヤクルトスワローズのことを追っている方々からは投手課題以上に「野手課題(未来の野手問題)」の方を不安視されていたのではないでしょうか。

投手面、野手面でのそれぞれ課題を簡単に述べていきます。

1.(A)投手面

引用元:nf3プロ野球ヌルデータ置き場

【主な課題点(最下位項目)】
・先発投手の平均回数(5.36回)
・QS数(60)
・QS率(42.0%)
・救援投手の平均回数(3.44回)
・全体防御率(3.64)

本拠地神宮球場とはいえ、今季も投手課題は顕著で、特に「先発投手」の弱さ(イニング面諸々)は明白でした。

シーズン終盤に吉村、高橋、高梨が良い内容を見せてくれたことは来季に向けて好材料でしたが、下記4つの要素は依然として懸念点だったのではないかと。
・奥川の後半戦離脱
・25年は西舘(23年ドラフト1位)の全休がほぼ確定
・24シーズン中に先発転向組or候補組(阪口、清水、山下、金久保、西舘など)が1軍先発として結果的に爪痕を残せなかったこと
・22,23年投球回数チーム1,2位の小川、
サイスニード(去就不透明)の低調

ヤクルトスワローズ【投手デプス表】(2025年度の年齢)

年齢分布図を見ても、先発候補(プロスペクト級の若手投手)や23歳以下の投手左投手の母数が少なく、その中でも1軍投手戦力も決して潤っているとは言えず、下記カテゴリに該当する類の選手は今回のドラフトで確保しておきたいポイントだと捉えてました。
①「来季1軍で "確実に使えそうな先発投手"」
②「(即戦力)左腕」
③「将来有望な高卒投手(できれば大型)」

①②はここ近年ほぼ毎年補充しているカテゴリではあるものの、フロントが来季勝ちに行くと考えているのであれば、特に①②の優先度は高いだろうと。

また、イニング消化の観点で見ても、現時点で少なくとも来季120,130イニング以上を計算(期待値込)したいのは主に吉村、高橋、ヤフーレの2名ではあるものの、実際どうなるかはわからないところで、ここ近年「年間通してローテを支えてくれていた」小川、サイスニードに目処が立ちにくくなってしまったことは、来季に備える上でかなり深刻な問題でもありました。

1.(B)野手面

引用元:nf3プロ野球ヌルデータ置き場

ヤクルトの24年スタメンポジション別成績をザッと見ても、OPS、打率、長打率諸々で他球団と比べてアドを取れていると言えるのは3B(村上)、LF(サンタナ)、SS(長岡)の主に3ポジション。次点で1B(オスナ)が及第点というところ。
とはいえ、本拠地神宮という観点ではやや物足りなさは否めないもので、レギュラークラスの野手が離脱すると、露骨にチーム力が下がってしまうのもリスキーな編成で考えなければならないところ。

ヤクルトスワローズ【野手デプス表】(2025年度の年齢)

1軍戦力では来季24歳の長岡の台頭はとても心強い一方で、前述の通り主力野手らの高齢化(山田、塩見ら)村上の流出といった懸念事項が多く、世代交代の過渡期になりつつある状況。

おそらく今季は「両翼起用」として想定されていたであろう西川遥輝(来季33歳)が塩見離脱によって今季最もセンター起用されていて、塩見が以前のように中堅手として稼働できるかも不透明であることから、塩見の後継(中堅手問題)も考えなければならないところ。
また、内山・古賀の稼働不安西田・フェリペの自由契約もあって捕手の補充も必須。

2024年ヤクルトスワローズ:主なセンター起用一覧

また、2軍のチーム打撃成績は以下の通り。

引用元:NPB公式から抜粋(イースタンチーム打撃成績)

【主な課題点(懸念項目)】
・打率(.246)※1位DeNA.264
・長打率(.330)※1位日本ハム.387
・本塁打数(46本)※1位日本ハム109本
・安打数(1008本)※1位DeNA1120本
・得点数(442点)※1位DeNA533点
(打率は5位タイ、その他は全てリーグ6位)

24年序盤に昨季イースタン本塁打王・澤井廉が怪我離脱していたとはいえ、今季の2軍チーム打撃成績を見ても2軍野手らの火力不足は否めない要素。
さらに、現状24歳以下の野手は比較的小粒な選手が多くスケール感という観点ではこちらも物足りず、「打力期待の野手」も今ドラフトで確保しておきたいとは個人的に感じていました。

ヤクルトスワローズ【24歳以下の野手デプス表】(2025年度の年齢)

現有戦力は「俊足巧打」タイプの野手が多い印象で、22年ドラフト組の西村(ドラ2)、澤井(ドラ3)、北村恵(ドラ5)が怪我やまだまだ未知数なことを鑑みても、野手ではこれらも補充したいポイントだろうと。
・「未来の主軸野手候補(村上、山田の後釜候補)」
・「即戦力野手(特に中堅手)」

今季の課題や今後のこと&現状の編成面を洗い出した上で補充したいと考えられるポイントは以下のようになります。

【投手】
・「来季1軍で "確実に使える先発投手"」(来季勝ちに行くなら優先)
・「即戦力系の左腕」
・「将来有望な高卒投手(できれば大型)」
【野手】
・「未来の主軸野手候補(特に打力期待)」
・「即戦力野手(特に中堅手)」
・「捕手の獲得(支配下育成問わず)」

テコ入れしなければならない点が多いとはいえ、2軍戸田施設諸々の現状もありますので、これら全てを1回のドラフトで補うのは無理があるだろうとは感じていて、個人的には「どのカテゴリを優先して、どんな選手をピックするのか」は非常に気になる点ではありました。

2.指名結果

※年齢は2024年度

投手に関しては、支配下指名の中村優斗(1位)、荘司宏太(3位)即戦力期待(先発&左腕)、育成指名の廣澤優(育成2位)はスケール感の大きいタイプで可能性を秘めていて、下川隼佑(育成3位)は24年イースタンリーグ最多奪三振のタイトルを獲得した変則系・アンダースロー投手と即戦力期待の投手を4名指名。

一方野手に関しては、支配下指名のモイセエフ・ニキータ(2位)、田中陽翔(4位)大型の高校生野手(将来の大砲候補&遊撃手)、捕手不安解消のため独立リーグで実戦経験を積んでいる矢野泰二郎(5位)、高卒2年目の代の松本龍之介(育成4位)といったそれぞれ異なるタイプの2名の捕手を指名。
中でも意外な指名となったのは、昨年に引き続き「海外からの隠し玉枠」根岸辰昇(育成1位)といった打撃期待型の選手を指名。

ザッと振り返っても、今年は特に「フィジカル面に長けている選手」を多く指名したというところは印象的で、投手&野手ともに足りなかったところを補う且つ「例年以上に的確な指名」ができたのではないかと感じます。

近年のヤクルトは競合覚悟で1位入札をし、抽選を外してから上位の枠で即戦力評価の投手を乱獲した後に他ポジションが手薄になることが多く、本命選手を取れなった際のリカバリーは見直す必要があると感じていました。
その点では今回1位に本命と目論んでいた「即戦力投手・中村優斗」を狙い通り獲得できたことで、2巡目以降のドラフト戦略もほぼイレギュラーなくスムーズに立ち回れていた感はあります。

次に各選手の寸評に移りたいと思います。

2.【ドラフト1位】中村 優斗

愛知・愛知工業大学
176cm/81kg 右投左打 投手 22歳
MAX160km/h (スライダー、カット、カーブ、チェンジアップ、スプリット、ツーシーム)

24年ドラフト市場にて右投手No. 1評価をするならば、真っ先に彼の名前が挙がるのではないでしょうか。
今春の侍ジャパン壮行試合に大学生ながら金丸、宗山、西川らとともに招集され、好投を披露した逸材です。

身長は176cmと小柄ながら、とにかく馬力があって先発時でも常時150km/h代を計測、MAXは今秋リリーフ時に160km/hを計測とプロに引けを取らないトップクラスのスピード帯を誇っています。

この類ながら、スライダー、カット、カーブ、チェンジアップ、スプリット、ツーシームを操り変化球も多彩で、縦横どちらも駆使していながら制球力抜群であるのも素晴らしい点。

リーグ通算で奪三振率10.65、四死球率1.89と地方リーグとはいえ抜群で、今秋に至っては30イニングを投げて与えた四球が僅か1つのみと、抜群の制球力を発揮していました。

懸念する要素とすれば、被打率の高さ&防御率は若干気になるところで、ピッチングスタイルの確立諸々は修正の余地がありそうではあるかと。

また、個人的にずっと気になっていた要素として、中村優斗が4年間主戦場としていたマウンドが独特な場所であったというところ。
中村が愛知リーグで主に投げていた瑞穂球場のマウンドは、とにかく掘れやすい上に傾斜がほぼなく、巷では有名で独特なマウンド形状となっています。

瑞穂球場のマウンドから投じる中村優斗投手

実際に私もアマチュア時代に瑞穂球場で投げた経験があるのですが、本当に特殊なマウンドで、とにかく傾斜がないマウンドであった記憶が鮮明にあります。
あの独特なマウンドの環境で怪我なくハイパフォーマンスを維持し続けてきた中村であれば、マウンドの傾斜や球場形状が独特な神宮球場でもそこそこ対応できるのではと感じていた次第です。(その環境下で大きな怪我がなく、ドラフト時に怪我懸念がなかったのも良い点ですね)

今春の侍ジャパン・壮行試合の京セラドームでは凄まじい球を投げ込んでいた部分からまだ伸び代を感じますし、NPBの球場でどんなパフォーマンスを見せてくれるのかは非常に楽しみな要素です。

2.【ドラフト2位】モイセエフ・ニキータ

愛知・豊川高
180cm/82kg 左投左打 外野手(中堅手)18歳
遠投100m 50m6秒2

ヤクルトに足りないポイントの一つでもある「高卒大砲候補」のプロスペクト枠として、高校生外野手・モイセエフ・ニキータ(豊川高)を2位指名しました。
素材系高卒野手は欲しい枠ではありましたが、ヤクルトがこの選手をピックするとは個人的に良い意味で意外な人選でした。
スケールの大きさという観点なら高校生トップ級且つNo.1評価ではないでしょうか。

バットスイング後のフォロースルーも大きく、軸もブレずスケールの大きさを感じますし、低反発バット導入後の春の選抜大会では本塁打を放っていました。
まだまだ荒削りではあるものの外角球に対してヘッドが下がらないまま面で捉えられていて、対応力も備わっている印象。

筋トレが日課&愛知県出身と、なんとも澤井廉と被る彼ですが、まだ細身ながらベンチプレスは既に130kgと相当なパワーは兼ね備えていて、プロ入り後に技術面諸々しっかり下積みを積んでいけば一気に化けそうな逸材です。

前述した通り、現状24歳以下の支配下野手がかなり手薄になっていた中で、将来の大砲になり得る素材は確保しておきたかったところでした。
「2位指名は早いのでは」との声もありましたが、ヤクルト3巡目指名が遠かったことを鑑みても納得できますし、他球団に取られる前に「高卒野手(大砲候補)」を優先確保しておきたかったというフロントの意思表示のようにも見受けられます。

橿渕聡スカウトグループデスクの評価
「今年の野手の中では、アマチュア市場では一番主軸を打てる選手だと思って、指名させてもらった。(青学大)西川選手より、(大商大)渡部選手よりもと思った。打線の軸として育てたい。ポジション関係なく」と相当に高い評価だったことを明かした。

ドラフト後の記事を見るに、能力を相当高く買っていたのだなと感じる次第です。

2.【ドラフト3位】荘司宏太

セガサミー
172cm85kg 左左 投手 24歳
MAX150km (スライダー、カーブ、チェンジアップ)

昨年ドラフト3位・石原勇輝に続いて、2年連続で大学・社会人出身の「リリーフタイプ」の左腕投手・荘司宏太(セガサミー)を3位で指名しました。

今季田口が低調、長谷川がサイドスロー転向、石原が1軍戦力として来季確実に計算できるとも言えず、中継ぎ左投手として来季計算できるのは現状山本くらいではないかと見ていて、諸々の事情を踏まえてもリリーフタイプである荘司の指名は理解ができます。

ご覧の通り、ダイナミックなフォームから投げ下ろす独特な投手で、奪三振力の高い即戦力左腕
MAXは150km/hと小柄ながらパワータイプで、一番の特徴は魔球とも称されるチェンジアップ
強いて言うなら、四死球率4.58(24年)と制球面での不安要素は否めないところ。

この類の投手がピックされた時に思わず感じたのが「戸田の投手育成環境」との相性です。
今季戸田を見てきた中で、多くの投手に新球種の習得(特にカットボール、チェンジアップ)及びピッチ構成の改善が積極的に行われており、1軍投手らにも好影響をもたらしていたのかは真偽は不明ですが、シーズン終盤には吉村(カットボール)、高橋奎二、山野(チェンジアップ)らも良い形で操れるようになってきていました。
諸々の観点からチェンジアップの使い手である荘司をピックしたのは個人的には腑に落ちました。

また、「チェンジアップの軌道」という観点で深掘りして考えていくと、現状のヤクルト投手陣の多くは低めに落とすような軌道(又はシンカー気味に逃げる軌道)のチェンジアップを投げているわけですが、一方で荘司に関しては、奥行きを使うかなりブレーキの効いた良いチェンジアップを投じています。(DeNA・濱口や西武・隅田などと似た類)
既存ヤクルト投手陣のタイプとは異なる軌道のチェンジアップを武器にしていて、且つ左腕でありながら左打者にもチェンジアップを投げられているのも良い点で、荘司の獲得はなかなか面白い存在になり得ると思っています。

さらに、戸田でカットボールの習得なんかもテコ入れされれば面白い試みではありますし、新たなピッチスタイルを確立できそうでもありますね。

2.【ドラフト4位】田中 陽翔

群馬・健大高崎高
183cm/83kg 右投左打 内野手(遊撃手)18歳
遠投95m 50m6秒4

ヤクルトは3位終了時点で、即戦力投手を2名確保、素材系の高卒野手を1名確保した中で、モイセエフ・ニキータ(2位)とはポジションが異なる大型高校生内野手・田中陽翔(健大高崎高)を指名しました。
例年のように即戦力評価の投手で指名を重ねることなく、スケールに振った(特に野手)戦略を敢行したことは個人的に好感が持てます。

この選手は元ヤクルトスワローズjr出身&ヤクルト球団史上初のjr出身者で、父親には元ヤクルトの充さん、中学時代は宮本慎也氏から指導を受けていたという実にスワローズと縁の深い選手です。

遊撃手としては50m6.4秒と、ややスピードが懸念点ではあるものの、各主要大会ではハイアベレージを残してきていて、且つ力強さもあり、将来的には打撃を活かして2B,3Bあたりを見越しても面白そうな「打撃期待」の高校生野手

今夏に清水大暉(日本ハム/4位指名)から放った本塁打の打球角度、フォロースルーはとてもスケールの大きさを感じる一打で、インコースの捌き方も天性のものを感じさせます。

打撃技術はかなり高く評価されていそうで、長岡秀樹の高校時代よりも上だとのこと。
高校野球引退後にはウエイトトレーニングに注力しているそうで、フィジカル強化の意識も高く、モイセエフ・ニキータ同様に楽しみですね。

2.【ドラフト5位】矢野 泰二郎

四国独立リーグ・愛媛マンダリンパイレーツ
179cm/80kg 右投右打 捕手 22歳

事前報道の通りヤクルトの支配下指名は5名のみで、支配下最後の指名となったのは四国独立リーグから、矢野泰二郎捕手(愛媛マンダリンパイレーツ)

二塁送球タイムは1.9秒前後、自己最速タイムは1.79秒と強肩が売りの捕手です。

ヤクルト:押尾 健一スカウト
「グランドチャンピオンシップでの二盗阻止が一番印象に残っている」
「去年と比べて明らかにレベルアップしたのが目に見えてわかった」
「守備力も伸びたし、バッティングも勝負強さやしぶとさがついたし、リード面も吸収力があってプロの世界でもやれる」

矢野 泰二郎 各種成績
引用元:四国アイランドリーグplusデータサイト

23年シーズンに比べて今季は打撃面での成長が著しく、打率・長打率・OPSがかなり良化しています。
今季に至っては7月以降の打撃成績がかなり良く、4本塁打のうち3本を7月以降に放ち19打点のうち14打点が7月以降と、夏場以降に打撃面で猛アピールした後、見事支配下指名を勝ち取りました。

今季からスワローズで2軍投手コーチを務めている正田樹コーチが愛媛球団に所属しているタイミングで実際に球も受けており、性格や能力諸々の推薦もあったのではないかとも感じます。

同学年の内山壮真と切磋琢磨していってほしいところですね。

また、今年NPBに入るために昨年から肉体改造を図り、食事やトレーニングの見直しを行ったとのこと。
結果的に打撃成績の向上&怪我なくシーズンを送れたとのことで、諸々意識の高さも好感が持てますので下記の記事も是非。

2.【育成ドラフト1位】根岸 辰昇

ノースカロライナA&T州立大
180cm/95kg 左投左打 内野手(一塁手、外野手)24歳

50m6秒2

今回のドラフトで最も意外な指名となったのは育成1位指名・根岸辰昇ではないでしょうか。
元々は慶應義塾高校に所属(木澤尚文の2つ下の学年)しており、甲子園にも出場。後にMLBに憧れて米国留学という異色の経歴の持ち主。

2024年は打率.371、8本塁打、37打点、OPS 1.065と好成績をマーク。
上記Xの動画でも態勢を崩されながらも、打球速度のある打球を放っていてかなり期待できそうかなと。

また、自身のストロングポイントの一つに「一塁守備」であるという点も下記動画内で触れており(24年:守備率.997)、守備への意識も持たれていたことは関心しました。

除脂肪体重81.4kgは驚きでした

打撃面では主に「広角に打ち分けること」がアメリカでは評価されていたと彼自身自負しており、たしかに打撃動画を見ても的確にヒットコースに運ぶ打球を再三放っていて、本塁打にはしっかり角度も付いていますしクレバーな打者だなという印象。

知る人ぞ知る「根鈴道場の門下生」でもあり、MLB主流のバレルスイングのお手本のようなスイングスタイルをしています。
高校在学中から根鈴道場に通っていたそうで、対談の受け答えなどを見てもしっかりとした自分の理論を持っていそうな印象、且つとにかく向上心の高さを感じます。

これまで培ってきた経験や打撃メカニクスに関する知見は相当なものがあるでしょうし、他の選手にも好影響をもたらしてくれることを期待しつつ、早い段階から支配下登録→1軍戦力になってくれることを期待したいですね。

2.【育成ドラフト2位】廣澤 優

四国独立リーグ・愛媛マンダリンパイレーツ
193cm/100kg 右投右打 投手 23歳
MAX158km/h

日大三高時代は甲子園出場、高校卒業後は社会人の名門・JFE東日本に入社とエリート街道を歩んできた選手。

社会人時代はなかなか登板機会がなく、プロ入りするために敢えて独立リーグに挑戦したという経緯も個人的にはとても好感の持てる要素。

193cm/100kgと大型な投手ながら手先が器用な印象で、角度を感じるリリースポイントから投じる球速差のあるチェンジアップの抜けがとても良く、空振りも取れているのは非常に良い点かと。

左打者に対しては若干外に逃げる軌道のチェンジアップも時折投げていて、右打者に対しても臆することなくチェンジアップを投げられているのも面白い要素。諸々戸田でテコ入れしていけばさらに面白そうではあります。

リリーフ転向後は四球数も減っているそうなので、おそらく最初はリリーフ想定だと思いますが、戸田で変化球の習得やピッチングメカニクスの改善を行った丸山翔大のように支配下→1軍戦力へと期待したいです。

2.【育成ドラフト3位】下川 隼佑

オイシックス新潟アルビレックス
176cm/88kg 右投右打 投手 25歳

育成3巡目には変則タイプのアンダースロー投手、下川隼佑(オイシックス新潟アルビレックスBC)投手が指名されました。

下川投手は24年イースタンリーグ・最多奪三振のタイトルを獲得していたのもそうですが、まずは怪我なく年間稼働していたことも評価に値する要素でもありますし、編成的にはドラフト前に獲得した西濱勇星と同様にかなり貴重な存在になってくれそうです。

【2024年2軍成績】下川隼佑(オイシックス)

2024年2軍成績を見る限り、対右には滅法強く被打率.190、一方で対左には.313と苦にしていた印象。

球種構成を見ても、対左に逃げる球(シンカーなど)の再現性がまだ整っていない印象で、現状それに近い球種で言えばチェンジアップかツーシームというところ。
現状の対左へのチェンジアップのストライク率は42%と低水準で、この点は改善の余地があるかと。

シーズン序盤は主に先発起用されており、7月以降はほぼリリーフ起用という形で投げていました。前後半戦別の成績は下記図の通り。

(前半戦は先発メインの成績、後半戦はリリーフメインの成績としてザッと見てもらえればわかりやすいと思います)

【2024年2軍前半戦成績】下川隼佑(オイシックス)
【2024年2軍後半戦成績】下川隼佑(オイシックス)

前半戦後半戦(先発時→リリーフ時)を見比べて感じた印象としては、後半戦は三振が取れるようになっていて、制球面も向上しているというところでしょうか。(今季の被本塁打9本中8本は前半戦)
チェンジアップ、ツーシームのクオリティ(成績)もまずまず改善されているようにも見受けられます。

投球割合は大幅に変わっていないものの、BB%(与四球割合)、各球種のストライク率、空振り率も良化されており、ストレートとスライダー以外でも空振りが取れるようになってきたのも興味深い要素。

チェンジアップの対左成績(前半/後半)はストライク率(35%/56%)空振り率(4%/33%)と数字を見る限りでは精度が上がっている印象で、三振も4つ取れており、課題の左打者に対しては徐々に改善されていた傾向。
また、ツーシームの被打率も前半戦.373、後半戦.133と良化傾向にあり、仮にヤクルトフロントが下川のチェンジアップorツーシーム系の球をさらに改良できると判断して指名に至ったとしたら面白い要素だなと個人的には感じます。

現状で基本的に右打者に対しては空振りも取れていますし、入団後に新球種の習得(シンカー系の変化球)やチェンジアップの精度をさらに磨くことができればかなり面白いかもしれません。

指名挨拶の様子(動画1:25〜

指名挨拶にて高津監督が望んで獲得に至った経緯を話されている様子から、かなり具体的な指名だったんだなという印象。

彼自身、高津監督に「代名詞のシンカーを教えてもらいたい。(自分と)同じようなタイプだと思うので」と意気込んでいますし、2軍で1年間投げ切った体力もあるので、まずは支配下を勝ち取ってほしいですね。

2.【育成ドラフト4位】松本 龍之介

関西独立リーグ・堺シュライクス
176cm/82kg 右投右打 捕手 19歳

24年ドラフト最後の指名となったのは、関西独立リーグから松本 龍之介捕手(堺シュライクス)
堺シュライクス球団史上初のドラフト指名選手となります。(ドラフト前に巨人の入団テストに受験していたそう)

なぜかパワプロ風の堺シュライクスHP:松本龍之介

高卒2年目の代の19歳と非常に若く、二塁送球1.9秒前後の強肩(盗塁阻止率(.328)リーグNo.1)&右打者で一塁到達4.4秒と捕手にしては比較的珍しい脚力を兼ねているタイプの捕手(今季46試合で盗塁数37)です。

23年は打率.186・本塁打0本と打撃課題はあった一方で、24年は打率.370・本塁打5本。この若さで順調に打撃面も伸ばしていたところも今回指名に至った要因の一つでもあるのかと。

打撃フォームは24年以降はヒッチ動作を採用していて、これがプロの投手相手にどのような反応になるのかは気になるところですが、本塁打の映像を見ても飛距離が凄く、低弾道でもそのままスタンドに突き刺さるような打球など打者として非凡なものを持っていそうな印象

まだまだ若く、捕手以外にも外野手や他ポジションとして開花する可能性も秘めていますし非常に楽しみな選手です。

3.総括

ヤクルトスワローズ:新デプス表(2025年度の年齢)

個人的には今回のドラフトでヤクルト球団の戦略や編成諸々に大きな変化を感じた上に、随所に明確な狙いも垣間見えた気もします。
・競合覚悟ではなく、メディアを上手く使って戦略的に一本釣り成功
・荘司、廣澤が武器としている変化球(チェンジアップ)と戸田軍で今年やってきたことの関連性
・下川のチェンジアップ、ツーシームが後半戦は良化傾向気味であったこと
・スケール感のある選手を優先指名(特に高卒野手2名)
・指名した捕手2名はそれぞれ異なるタイプであること
・2年連続で海外からの育成指名
・新たな独立産からの指名

特に今年戸田軍で取り入れていた新球種の習得という観点から「投手育成環境を意識した投手(主にチェンジアップを得意としている投手)」をピックしていたのは方針の一貫性を感じた点です。ここに関しては、今オフの新外国人補強や他球団の戦力外投手の獲得要素にも少なからず通ずる点になってくるかと思いますので、引き続き注視してみたいと個人的には思います。

当初から「野手を多く獲得するべき」との声が多かった今年のドラフトでしたが、結果的に1位で本命の即戦力投手・中村優斗を戦略的に獲得できたことで、その後の指名枠でスケール感のある高卒野手に振ったり、異なるタイプの(実戦性/将来性)捕手を確保したりと計画的で良いドラフトとなったのではないかと。

上記の記事では「ヤクルトは今年の指名で"フィジカルを重視した”」ということも取り上げられており、この点は昨年外部トレーナーからスカウト招聘した余田雄飛スカウトの影響もあったのか、非常に良い傾向に感じます。

欲を言えば、今年豊作だった大型高校生投手や即戦力タイプの中堅手も欲しかったところではありますが、球団が現状抱えている多くの課題点の中から球団が思う「優先度の高いジャンル」を指名していったと見れば理解はできます。

本noteをご覧になっていただいた上で、指名された各々の選手にさらに興味を持っていただければとても嬉しく思います。
オフシーズン中は今季の選手の振り返りなども更新しようと思っております。ここまでご覧いただきましてありがとうございました。


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