
Capt's Log004:本音を引き出す対話術~「信頼の扉」を開くコミュニケーション~
はじめに
リーダーがチームの信頼を得るには、行動だけでなく、メンバーの本音を引き出す「対話」も不可欠です。チームの雰囲気がぎこちなかったり、メンバーが本心を隠していたりすると、問題が表面化せず、気づかないうちにチームの機能不全を招くこともあります。
しかし、多くのリーダーが「どうやって対話をすればいいのか分からない」「本音を引き出せない」と悩んでいるのです。
特に、
「チームの雰囲気が悪いが、誰もはっきり言わない」
「メンバーが何を考えているのか分からない」
といった状況は、多くのリーダーが直面する問題です。
本章では、私の経験をもとに、メンバーの本音を引き出し、信頼を深めるための対話術についてお伝えします。
1. なぜ本音を引き出すことが重要なのか
本音を言えないチームでは、以下のような問題が起こりがちです。
意見が表に出ず、意思決定が表面的になる
メンバーが問題を抱えたまま動けず、モチベーションが低下する
「なんとなく空気が悪い」という漠然とした不安がチーム内に広がる
一方で、リーダーが本音を引き出せる環境を作ると、
メンバーが主体的に意見を出すようになる
問題が早期に共有され、解決しやすくなる
チーム内の相互理解が深まり、心理的安全性が向上する
では、どのようにしてメンバーの本音を引き出せばよいのでしょうか?
2. 本音を引き出すための具体的なアプローチ
リーダーは「伝える」こと以上に、「聴く」ことが重要です。ただし、「聴き方」によって相手の本音を引き出せるかどうかが決まってきます。
例えば、
NG例:「最近どう?」 → 漠然とした質問では、本音は引き出せない
OK例:「最近のプロジェクトで一番やりにくかったことは何?」 → 具体的な問いかけで、本音が出やすくなる
といったイメージです。更に私が考えるポイントは、次の3つです。
①「沈黙」を恐れず待つ
リーダーが沈黙を埋めようと焦ると、メンバーは考える余裕を失ってしまいます。問いかけをした後は、あえて沈黙の時間をつくり、相手が話し出すのを待ちましょう。「相手のペースを尊重する」ことが大切です。
実体験
私は以前、あるメンバーとの1on1で、「最近の仕事で困っていることは?」と質問したとき、相手がなかなか答えられず沈黙が続いたことがありました。普通なら別の質問に切り替えてしまうかもしれませんが、あえて10秒ほど沈黙を保ちました。すると、そのメンバーは「実は今の業務に自信が持てなくて…」と、悩みを打ち明けてくれました。
②「正解」を求めず、相手の視点を深掘りする
メンバーが意見を言いにくいのは、「間違ったことを言ってはいけない」と思っているからです。そのため、リーダーは「あなたの考えを聞きたい」「正解はないから自由に話してほしい」と伝えることが重要です。
実体験
ある会議で、若手メンバーに「このプロジェクトの課題は何だと思う?」と質問したところ、誰も発言しませんでした。そこで、「正しい答えはないから、気になっていることを何でも教えてほしい」と促したところ、ようやく「進行が遅れているのが気になります」と意見が出ました。そこから話が広がり、具体的な改善策を議論できるようになりました。
③「共感」と「質問」で深く聞く
メンバーが話し出しても、それを表面的に受け流すのではなく、「共感」と「質問」を使ってさらに深掘りしましょう。
共感のフレーズ:「それは大変だったね」「そう感じるのは当然だと思う」
質問の例:「そのとき、どう感じた?」「どうすればもっとやりやすくなる?」
実体験
バスケ部主将時代、後輩が「試合で思い切りプレーできない」と相談してきたことがありました。最初は「もっと自信を持てばいい」とアドバイスしようと思いましたが、それでは表面的な解決策になってしまいます。そこで「具体的にどんな場面でそう感じる?」と聞くと、「ミスをしたときに上級生の視線が気になる」との答えが返ってきました。そこで、「チームのために思い切ってプレーする方が、仲間も喜ぶと思うよ」と伝えたところ、少しずつ積極的なプレーが増えていきました。
3. 本音を引き出すためにリーダーが持つべき姿勢
① 「聞くこと」を優先し、自分の意見を押しつけない
リーダーはつい「自分の経験からアドバイスしなければ」と思いがちですが、それがプレッシャーになることもあります。まずは「聴くこと」を優先し、アドバイスよりも「話を整理する役割」に徹しましょう。
② 「批判しない」姿勢を貫く
メンバーが本音を話せるのは、「否定されない」と確信できる環境があるからです。意見が未熟でも、「なるほど、そう考えたんだね」と肯定的に受け止めることが大切です。
③ 「日常の対話」を大切にする
1on1の場だけでなく、日常の雑談の中で信頼関係を築くことが、本音を引き出す土台になります。「おはよう」「元気?」「最近〇〇にハマってるんだけど知ってる?」と気軽に声をかける習慣をつけましょう。
まとめ
本音を引き出す対話術は、単なるテクニックではなく、「相手を理解したい」というリーダーの本気度が試される場でもあります。本章で紹介した方法を実践しながら、メンバーとの信頼関係を深めていってください。リーダー自身が耳を傾け、寄り添う姿勢を示すことで、メンバーも本音を話しやすくなり、結果的に強いチームが生まれるのです。