「燃えよ剣」「坂の上の雲」…。いま改めて読みたい司馬遼太郎
日本でも週末の「不要不急」な外出自粛願いが政府や各自治体から出され、(奇しくも桜の咲いた都内で3月末に似合わぬ雪が降るなど)世界が、否、地球すらもコロナの収束に向けて意識を一つに合わせ始めている今、
少しずつではあるがアフターコロナや、1年の延期となったポスト東京オリンピックパラリンピックを見据えた動き、そのこと自体を考える人が出てきているように思います。
日経の特集でも各分野を代表するオピニオンリーダーが2030年の世界について語るインタビュー「#GO2030」が連載され、様々な視点で10年後の世界や、その時に自分は何をしていたいかを話しています。例えば、
サントリーホールディングス社長の新浪さんはデジタルトランスフォーメーションが進む中で技術革新を巡り、冷え込む可能性のある米中関係において国際協調に向けて日本の果たす役割や、各国企業のリーダーが持つ対話の重要性を(ご自身もその懸け橋として担う役割を)
将棋棋士の羽生善治九段は、AIを活用するようになってきた将棋の世界において、まだまだ未知の分野であるものの、AIの活用自体は洗練されていき、棋士全体のレベルが上がっていくことを(AIが答えそのものを教えてくれるのではなく、選択肢や可能性を広げるものとして)
サイバーエージェント創業者の藤田さんは、イノベーションを恐れない国にすることの重要性や、有事こそ変革を起こせるチャンスであることを、そして今を生きる私たちが後世にイノベーションを後押しできる存在であることの大切さを
シェアリングエコノミー協会事務局長の石山アンジュさんは、幸せや豊かさを実現する価値観として、シェア経済が定着し、個々人が直接つながり、各々の資産を活かして新たな価値が生まれ、介護や子育てがなされていく時代の懸け橋になることを
各領域を牽引する皆さんが、それぞれのバックグラウンドをもって、これからと自身の役割について話をしています。
そんな皆さんの記事を拝読しつつ、僕自身はなぜだか久しぶりに司馬遼太郎の「燃えよ剣」を手に取って読みたくなりました。「燃えよ剣」は江戸時代末期の動乱の中、わずか6年ほど存在していた「新選組」について、その副局長であった土方歳三に焦点を当てながら書かれた歴史小説です。※1962年から1964年と前回の東京五輪の年まで連載されていた作品でもあり、2020年の今年岡田准一さん主演で映画化もされている
司馬遼太郎の作品は「燃えよ剣」はもとより、
「国盗り物語」(斎藤道三や織田信長を扱った作品)
「関ケ原」(皆さんご存知の徳川家康と石田三成の天下分け目の戦いを扱った作品)
「竜馬がゆく」(今や世間一般の竜馬像をつくる上げたとも言われる作品)
「坂の上の雲」(明治維新から日露戦争勝利までの近代日本の礎とも言われる時代を扱った作品)
「花神」近代日本兵制を創始した大村益次郎の生涯を描いた作品
など、世の中が大きく変化する時代を様々な角度から切り取り、人物に焦点を当て、ストーリーの要所要所に司馬遼太郎ならではの、物語と関係ないエピソードや経験談(比較的、余談が多い)を交えながら、時にウィットに、時に雑さのような読み手への余白も与えながら、書かれているように思います。
「燃えよ剣」の土方歳三も、幕末の動乱、大きな変化の中で、時代に飲み込まれながらも、己の実直なまでの生きざまを持って描かれています。(同時にそこには変化を受け入れ、変化していくことで時代を生き抜いた人も描かれています)
冒頭の日経の #GO2030 特集を読んで「燃えよ剣」を読んで思うのは、これからも変わらず起こり続ける変化の中で、今を生きる他者はもちろん、過去を生きた他者や、その時代の組織、その他者を想い書き残した司馬遼太郎の作品から学べることが多くあるという事実。
コロナによる外出自粛できっと多くの人が家にいることが多い今だからこそ、過去の出来事や史実から学び、未来につなげる肥やしにする。主観だけでなく客観から学ぶ時間へ。一人ひとりがアフターコロナ―が早く訪れる未来へ協力し、1年後になった東京オリンピックパラリンピックと、ポスト東京オリンピックパラリンピックに向けた時間に出来ればと思う。