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コミュニティの歴史と未来「ビジネスの世界線を変える鍵」とは?
こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。
最近、ビジネスの場で「コミュニティ」という言葉を耳にする機会が増えてきましたよね。しかし、「コミュニティってなぜ必要なの?」「重要性は何となくわかるけど、具体的なメリットは本当にあるの?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、JINEN株式会社のコミュニティディレクターである藤田に、コミュニティの歴史、その重要性、導入することのメリットについて聞きました。
コミュニティに取り組むうえでの重要なポイントが凝縮されていますので、ぜひご一読ください!
歴史から考えるコミュニティの重要性
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若林:ファンコミュニティといった言葉を耳にする機会が増え、SNSやオンラインフォーラムなどデジタルコミュニティが成長してきている昨今ですが、コミュニティはこれまで歴史的にどのような役割を担ってきたのでしょうか。また、今ビジネスの分野でコミュニティが重要視されるようになってきている理由についてもお伺いしたいです!
藤田:まず、歴史的な観点からお話ししたいと思います。かつてコミュニティの役割を担っていたのは宗教でした。
たとえば、聖徳太子は「四箇院制度」を設けましたが、これは病院・宗教・福祉の機能をすべて一体化したような施設です。現代では病院や薬局、社会福祉施設、寺院はそれぞれ分離していますが、当時はこれらを1つにまとめていました。
病院やお寺がコミュニティの役割を果たしていたんですね。昔のお寺や教会には人々が集まり、心のよりどころとなっていました。聖書に「信じる者は救われる」とあるように、自分を認めてくれる無償の愛のようなものを感じる場所でもありました。寺や教会に行けば、自分がこの世に存在していていい理由を教えてくれたんです。そこで、過去の行いや未来への願いをコミュニティで共有するという歴史がありました。
この歴史が変わり始めたのが約150年前です。ニーチェが「神は死んだ」と言って、宗教に頼っても救われるわけではない、という考え方が広がりました。その後、資本主義の世界で「ビジネスで成功する人が偉い」「お金を稼げば幸せになれる」という価値観が浸透しましたが、それが本当に正しいのかと疑問視されているのが今の時代です。
かつては、「三種の神器」のように生活を豊かにするものや、品質の良いものを作って届けることが大事でしたが、現代ではこれらが十分に満たされています。
そこで、どうやって事業を差別化するかというと、商品の品質やデザインももちろん大事ですが、それ以上に、商品を使っている人同士が集まれるコミュニティを作ることで差別化しようとする流れが出てきたのです。
若林:昔はおいしい食べ物や便利なものが十分に手に入らなかったけれど、今はそれが満たされたので、その次のステップに進んでいるわけですね。
コミュニティが重要視されるという点では、宗教がコミュニティの役割を果たしていた時代と現代には共通点があると思うのですが、違いもありますか?
藤田:そうですね、大きな違いは、自分で所属したいコミュニティを選べるようになったことです。昔は、コミュニティに依存するしかなかったんです。「少ない食べ物を分けてもらうためにはキリスト教に入らないといけない」「適切な教育を受けるためにはこの寺に入らないといけない」というように、コミュニティに強制力がありました。
しかし今は、好きなアイドルのファンクラブに入ったり、テレワークの普及で地方に住みながら東京の会社で働いたりもできる時代です。
若林:たしかに! 絶対にその場所にいなければ何かを享受できない、そこにいなければ生きていけない、といった状況はなくなりましたね。
コミュニティを導入して、マーケティングの落とし穴「偽りの回答」を防ぐ
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若林:コミュニティに入るかどうかを選べるようになったのが現代、というお話がありましたが、そうなるとますますコミュニティのメリットが気になるところです。とくにビジネスの領域では、コミュニティを導入することでどんなメリットが生まれるのでしょうか?
藤田:大きく分けると、対内的な観点と対外的な観点の2つのメリットがあります。
まず対内的な観点からお話しします。対内的というのは主に採用に関する話です。会社というコミュニティ、つまり社内コミュニティに外部の人が加わる際、「我々の会社はこういう世界、こういうコミュニティを目指します」といった企業メッセージが発信され、それに共感する人が集まってくることで、完全な離職が無くなるはずです。
若林:離職が無くなるんですか……!?
藤田:はい。仮に離職があったとしても、たとえば業務委託で関わり続けるなど、完全に縁が切れることは少なくなります。逆に、転職後に一切関わらなくなる場合は、そもそも会社が提供しているコミュニティと個人が求めるコミュニティが一致していなかったということです。そうなると、採用にかかったコストや人件費が無駄になってしまいますよね。
次に対外的な観点についてお話しします。こちらは主にマーケティングに関するものです。ユーザーコミュニティを作ることで、たとえばユーザー同士が繋がり合い、双方向で課題解決ができるため、カスタマーサポートの工数が削減されるというメリットがあります。また、ユーザーが会社のあたたかみを感じることができるため、サブスクリプションサービスなどでは解約率が減る可能性もあります。
さらに、コミュニティを通じて直接ユーザーの声を聞くことができるので、サービスの改善や新機能の開発、新規事業のアイデアが得られるといったメリットもあります。
若林:ユーザーの声を聞いてサービス改善ができる点がユーザーコミュニティのメリットの1つだとおっしゃっていましたが、コミュニティがなくてもアンケートなどで意見を集めることは可能ですよね。コミュニティがない場合と比べて、とくにどのような点がメリットになるのでしょうか?
藤田:実はアンケートにはデメリットがあります。無関心なユーザーが適当に回答してしまう、いわゆる“偽りの回答”が多く含まれてしまうことです。アンケートは回答数を集めれば良いわけではなく、そのサービスに関心のある人がどのように回答するかが重要だと思います。
たとえば「この町は住みやすいですか?」という質問に90%が「はい」と答えたとしても、町に関心のある人が残りの10%で、その全員が「住みにくい」と感じているかもしれません。関心のある人の意見を集めるという点で、アンケートには限界があるんです。
若林:ありがとうございます! 今の例を聞いて、非常に納得できました。関心のある人ほど課題に目が向いていて「これじゃダメだ!」と強く感じている場合もありそうですね。
藤田:そうですね。新規事業を作ったり商品を改善したりするためにユーザーコミュニティを作る場合は、商品に強い関心のある人だけを入れることが大切です。逆に、単純にユーザーのエンゲージメントを高めるためのコミュニティなど、入り口を限定しなくて良い場合もあります。コミュニティの目的によって設計方法が変わるため、初期設計からしっかり考えることが重要ですね。
自転車操業に陥ってない?コミュニティで「保険」をかけろ
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若林:ここまでメリットについてお聞きしてきましたが、逆にコミュニティを導入しないことによるデメリットはありますか?
藤田:緊急度と重要度でタスクを整理する「アイゼンハワーマトリクス」という手法がありますが、その中の“緊急かつ重要”なことばかりをやり続けると、結果として自転車操業に陥ってしまうという点が挙げられます。
たとえば「来月は広告を出して新規顧客をこれだけ獲得しよう」という短期的な施策ばかりだと、どうしても自転車操業的な動きになり、“顧客からの信頼を刈り取ったビジネス”になってしまうんですよね。
とくに人材業界ではその傾向が顕著です。人材紹介の仕事って、たとえば社会人3年目くらいまで一生懸命に築き上げた信頼関係をその会社から引き離して、別の会社に送り込むことになります。その際に紹介手数料が発生します。
もちろん、最適なマッチングが実現できれば転職先の会社が良いコミュニティに成長します。しかし、ひたすら毎月のKPIだけを追い続けていると、求職者の元の会社との信頼関係も、転職先での信頼関係も崩してしまう恐れがあります。その結果、会社というコミュニティ全体が破壊されてしまうことに繋がります。
どんな仕事でも言えることですが、顧客を獲得するということは、ある意味で顧客の時間やリソースを奪うことでもあります。顧客のコミュニティを切り崩しているという自覚を持ち、その分を補って育む努力をすることが重要です。少なくともプラスマイナスゼロにして、マイナスにならないようにすることが大切ですね。
若林:KPIばかりを追い求めて、自転車操業的に目の前の顧客を“刈り取る”ことを続けていると、顧客や社会全体にマイナスの影響を与える恐れがある、ということですね。
藤田:そうです。コミュニティを導入している場合と導入していない場合を比較すると、見えないコストが確実に削減されていることが多いんです。
たとえば、“良い社風”と“悪い社風”を比べた時、悪い社風の方が離職率が高くなりやすいですし、労働トラブルや訴訟問題が発生することも多くなります。その際に発生する弁護士費用などを考慮すると、やはり良質なコミュニティを維持する方がはるかに良いと考えられます。
将来の損失を防ぐという意味では、コミュニティを「保険」として捉えるのが適切かもしれませんね。
若林:たしかに! 未来に備えるためのコミュニティですね。
コミュニティは複利である
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若林:これまでお話を伺って、コミュニティを導入することのメリットがよく理解できました!
とはいえ、コミュニティの重要性には気づいているけれど、一歩踏み出せないという方も多いのではないかと思います。そうした方々は、まずどのようなことから始めるのが大事でしょうか?
藤田:マインドセットの話ですが、まずは短期的な成果を期待しないことです!
多くの人が広告など短期的な施策に慣れてしまっています。たとえば、「1度広告を出したら10人集まった」「SNSで1投稿したら100いいねがついた」といったことですね。でも、極端な話をすれば、多少誇張して成果を出すことは簡単です。広告だって実際のサービス内容と乖離している場合があるし、SNSで実際にはハワイに行っていないのに“ハワイに行った風”の投稿をすることもできます。
若林:私も同じような経験があります。広告を作るとき、嘘はつかないまでも少し誇張した表現を使ってしまったことがありました。
藤田:そうした工夫は必要な場合もありますし、多くの人がやっていることだと思います。ただ、ビジネスの本質は、困っている人に適切なソリューションを提供し、その対価としてお金をいただくという、非常にシンプルなものですよね。
コミュニティは一種の投資のようなもので、資産運用に近い感覚です。価値が“複利”のように増えていきます。たとえば、導入してすぐに「1ヶ月で100万円の売上が出る」というわけにはいきませんが、心から自社を愛してくれるユーザーが5人いて、その5人がそれぞれ3人の友達に勧めれば、15人にリーチできるわけです。そしてそのリーチは、非常に質が高いのです。
若林:知り合いに勧められたものは、信頼感があるから「とりあえず買ってみよう」と思いやすいですね。
藤田:そうですよね。最近のユーザーは広告に慣れてきたので、広告を見ても実際には購入に繋がらないことが多いんですよね。だからこそ、長期的な施策としてファンコミュニティを育てていく方が持続可能性が高いのは間違いありません。ただ、最初にそこに投資するのが難しいと感じるのも理解できます。
若林:すぐに効果が出ないうえに、効果を測るのが難しいというのも理由の一つになりそうですね。
藤田:たしかに、効果が測りにくいという課題はよくあります。そもそも「コミュニティのどのような状態を“良い状態”とするか」は非常に難しい問題で、どんな数値を目標にするべきかも大きな課題です。
コミュニティが盛り上がっていると、担当者は「事業もうまくいっているのではないか」と錯覚しやすいですが、盛り上がっていれば良いというわけでもありません。大切なのは、主観と客観のバランスです。主観的に「このコミュニティは盛り上がっている」と感じることも必要ですが、同時に「第三者から見ても入りたいと思われるコミュニティになっているかどうか」を客観的に見続けることも大切なんです。
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若林:最後に、コミュニティに価値を感じているけれど、まだ一歩踏み出せていない方に向けて、メッセージをお願いします!
藤田:どうしても短期的な成果に投資しがちですが、長期的に取り組むことで残る価値もあります。少しでも事業としてコミュニティに向き合う時間を作ってほしいです!
長期的には必ず良い結果が出ます。たとえば、1年以上サポートしている企業があるのですが、最近その社長から「コミュニティを常に動かしたい」という依頼がありました。これまでは単発でコミュニティの施策をしていましたが、常に動かしたいと依頼された背景には、コミュニティのおかげでユーザー数が大幅に増加したことがあります。もし1年前にコミュニティを始めていなかったら、こうした成果は得られなかったでしょう。ユーザーコミュニティが事業成長の土台になっていたのです。
若林:すごいですね! コミュニティに取り組んでいるかどうかで、まさに「世界線」が全く違うものになると感じました。「広告を1つ多く出したから売上が20万円上がった」といった短期的な話とは違い、コミュニティはもっと大きな文脈で事業が変わっていくのだと感じました。
藤田:そうですね、「世界線が変わる」という表現はとても良いですね! コミュニティを導入すれば、1年後、2年後の世界線が変わります。今すぐに大きなメリットを感じられないかもしれませんが、後々「やっておいて良かった」と思えることが多いです。
コミュニティが命綱になるケースもあります。人材紹介会社で、エンジニアを目指す上位1%の優秀な学生だけが入れる審査制コミュニティを作ったことがあります。多くの企業が優秀なエンジニアを求めていますが、それを確保できている人材紹介会社は多くありません。一方、その審査制コミュニティは、優秀なエンジニアと強固な接点を築いていました。
そうなると、優秀な学生との接点を失うわけにはいかないので、もはやそのコミュニティを無くすという選択肢はなくなります。さらに、エンジニアを目指す学生の間で「審査制コミュニティに入ること自体がステータス」という認識が広まり、優秀な学生が集まって「このコミュニティに入ることが重要だよね」という“文化”が生まれたんです。
若林:「文化ができる」というのはすごいですね! コミュニティが単に存在するだけでなく、コミュニティに入る過程も含めて良い流れができているんですね。
藤田:そうですね。ただ、コミュニティを安定運用するのは大変で、とくに最初の1年、軌道に乗せるまでは難しいです。だからこそ、ぜひ私たちを頼ってほしいです!