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コミュニティを成功させるためのKPI設計ってどうするの?

こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。

「コミュニティがうまくいっているのか分からない」「自分の行動がどのくらいコミュニティに貢献しているのか分からない…」

こんな悩みの原因は、KPI設計がしっかりできていないことにあるかもしれません!

今回は、JINEN株式会社のコミュニティディレクター藤田に、コミュニティ運営におけるKPI設計の方法や、大切な考え方を聞きました。


そもそもコミュニティの理想状態やゴールってなに?

若林:今回のテーマは「コミュニティにおけるKPIの設計方法」です。まず、そもそもコミュニティの理想状態やゴールとは何なのかをお聞きしたいのですが、藤田さんはどのようにお考えですか?

藤田:そうですね、理想の状態とは「コミュニティメンバー1人ひとりが、コミュニティに属することに誇りを持ち、コミュニティをより発展させるために能動的に貢献しようと思っている状態」です。

具体的には、例えばコミュニティが少し盛り上がりに欠けてきたときに自ら発信してアクティブにしたり、運営メンバーになって無報酬でもコミュニティの発展のために司会をしたり、イベントを企画する人が増えているような状況ですね。

ゴールとしては、必ずしも大きな発展が必要とは思っていません。大事なのは「安定運用」です。「メンバー一人ひとりが、持続的にコミュニティを回していける仕組みができ、運用されている状態」がゴールかなと思います。

そうすることで、自然と長続きするコミュニティが生まれます。長続きするコミュニティは少ないので、それ自体が価値になります。まずは「継続できるコミュニティ」を育てていくことが非常に大切だと思います。

KPI設計は「2軸」で考える

若林:理想状態やゴールを達成するために、どのようなKPI設計が必要ですか?

藤田:大きく2つありまして、1つ目は非常に一般的ですが「コミュニティ内のアクティブ率」です。
メッセージ発信数とか、イベント参加率、運営メンバーがちゃんとミーティングに参加しているかなど、コミュニティの「中身」を測る指標がまず大事かなと思います。

もう1つ非常に大事な観点は、コミュニティが外から見たときにどう思われているかという「第三者視点の評価」です。例えば、コミュニティの新規会員数とかですね。もう少し詳しくお話しすると、例えばWeb3関係のコミュニティの場合は、NFTのフロア価格をKPIにすることがある。つまり、コミュニティの発行しているNFTが どれぐらいの高値で売買されているかをKPIに置いたりします。

要するに、コミュニティの「中身(文化醸成)」と「第三者視点(ブランド構築)」という2軸で考えることが非常に大事ということです。

なぜこれが必要かというと、例えば地域に昔から住んでいる方たちがお酒を飲んで盛り上がっているような状況って、アクティブ率としては非常に高いのですが、新規メンバーからすると「自分は馴染みにくいかもしれない」「あまり移住したくないな」と思うきっかけになってしまうこともあると思います。

内部の盛り上がりが良いからといって、それが必ずしも良いコミュニティであるとは限りません。内部の盛り上がりも大事ですが、外から見た時に、 例えばお祭りのように外からでも参加したくなるようなブランドが育っているかどうかを測ることが非常に大事です。

最大の落とし穴は、己の承認欲求!?

若林:コミュニティのKPI設計における落とし穴や、担当者が躓きがちなポイントがあればお伺いしたいです。

藤田:それはもう「コミュニティマネージャーが自身の承認欲求といかに戦うか」という話になってきます。
 
例えば、地域で権力を持っている方の場合、承認欲求を満たしたいがゆえに権力に執着し手放せないことがあります。そのコミュニティの発展よりも、自分の権限や承認欲求という内側に意識が向いてしまっている。つまり、コミュニティを私物化してしまっているというわけです。

若林:それってどうしたら回避できるんですか?

藤田:めっちゃ難しいですね。だからこそ、コミュニティの中身の価値を測る指標とは別に、コミュニティを外から見たときに良いコミュニティになっているかということを測る必要があります。

例えば、日本が大好きで日本に住んでるけど円安になっていくって感じですね。これって大きく見ると、日本に住んでいることに対する肯定感って下がっていくと思うんですよ。自分の住んでいる町とか、自分の所属しているコミュニティの価値が下がっていくって結構きついので。

若林:たしかにそうですね。斜陽産業の企業の中で働いているといった状況も近いですかね。

藤田:はい! まさにそうですね。

衰退産業の中にいると、いくら盛り上がって飲み会が楽しくても年収が下がっていくから、いつまでもそこにいられないっていう話に繋がるかもしれないですよね。

若林:内々の盛り上がりだけにとどまってしまって、結果的に世の中から見たら価値が創出できていないという状況にならないために、中身の評価と第三者から見た評価という2つの軸でKPIを考えることが大切なんですね。

KPIは「水質」のようなイメージで

若林:KPI設計において、全てのコミュニティに共通する重要なポイントってありますか?

藤田:「数字から逃げないこと」かなと思います。内部の盛り上がりにしても外部からの見え方にしても、 「なんとなく」で判断するのは良くありません。

もちろん、所属してて楽しいなという個人の感情とかをしっかりシェアすることも大事ですが、イベントに対する満足度は高いのか、コミュニティが盛り上がることによって新規メンバーは増えているのかといったことをしっかり数値化して、週次か月次でコミュニティの状態を可視化していくことがすごく大事だと思います。

あとは、どちらかに偏りすぎないことも重要です。

若林:「どちらかに」というのは、定量か定性かみたいな話ですか?

藤田:その観点もありますし、「中身(文化醸成)」と「第三者視点(ブランド構築)」のどちらかに偏りすぎないということですかね。

若林:そのバランスをうまく取れるようにKPIを設計すべきということなんですね。

藤田:そうですね。あと、コミュニティの場合は、「KPIを追いすぎないこと」が非常に大切です。例えば、内部の交流に関わる目標を達成しようとすると、短期的な施策をやってしまいがちなんですよ。

冒頭でお話しした通り、コミュニティって長く続かせることが大事なので、新規数だけを追ってもダメだし、 バランス良く安定運用されている状態が大切です。だからこそ、安定運用に必要な指標は、 このくらいだったらオッケーっていう線引きが大事。いわば「水質*」のようなイメージです!

若林:水質ですか…!?

藤田:はい。「これ以上汚染されるとちょっと体に毒がある。ただ、これ以上汚染されていなければオッケー」みたいな考え方ですね。 完全な綺麗さを追い求める必要はないんです。

若林:そうすると、コミュニティにおけるKPI設計ってストレッチしすぎない方がいいということですか?

藤田:理想値・通常値・危険値の3つで設計するイメージです。例えば、理想値が新規メンバー月あたり30人であれば、通常値としては10人来てたらコミュニティとしては良いんじゃないかな、ただ0人はさすがにやばいよね、みたいな設計をすることが大事だと思います。

若林:通常値であればとくに問題なし。危険値になりそうだったらさすがにまずいから重点的に施策を打とう、みたいな感じですか。

藤田:そうです。ありがちな失敗は、新規を追いすぎてしまうことです。新規メンバーが多くなればなるほどコミュニティは盛り上がると思ってしまっているケースが非常に多いです。

なので、「コミュニティメンバー1,000人達成しました!」みたいなニュースって結構あるんですが、コミュニティとしてどうなっているのかと言えば、結局1,000人中5人ぐらいしか発言してない。

そもそも大事なのは、コミュニティの人数に対するアクティブ「率」なんですよね。メンバーを増やせばアクティブ数が上がるわけではないので、 アクティブ数よりもアクティブ率を追うことがすごく大事です。

KPIを見ることでモチベーションも上げてほしい!

若林:今までお話ししてきた注意点に気を付けながらKPI設計ができた後に、しっかりコミュニティ全体でそれに向かって進んでいくには、どのようなことが重要ですか?

藤田:しっかり定期的にミーティングの場を作るということですかね。

KPIは、ダッシュボードとして現状を見る手段でしかありません。なので、KPIを見ることによって「今ここ良くないよね、アクティブ率ちょっと減ってるね」といったかたちで問題を共有し合うことがまず大事。そしてチーム内で一丸となって、今後1・2週間どう動いていくのかをすり合わせ、しっかり個人が役割とタスクを持ってコミュニティが良くなるように実行していくことが非常に大切です。

若林:最後に、藤田さんからコミュニティに取り組む担当者の方に伝えたいメッセージはありますか?

藤田:コミュニティは生き物なので、安定運用ってすごく難しいんですよね。サーバーを安定的に運用するより、コミュニティを安定運用する方がやはり難しいと思います。

だから、例えばコミュニティ運営のためにDM送信を頑張りすぎて疲弊するといったことを防ぐためにも、しっかりKPIを設定してダッシュボード化することは非常に大事だなと思います。「自分のやっているタスクがコミュニティ活性化に寄与してるんだ」という実感を得ながら取り組むことを大切にしてほしいです。

若林:たしかに! ダイエットするときに、しっかり体重計に乗って記録した方がモチベーションになって続けやすいという話と似ていますね。

藤田:そうですね!(笑) 現実を見るという意味では少し苦しい部分もあると思いますが、それ以上に、モチベーションが上がるという正の側面を見てやり続けることが大事かもしれないですね。

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