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コミュニティは商品原価!マーケティングで成功するための新しい視点

こんにちは! かけだしコミュニティアシスタントの若林です。

今回は、JINEN株式会社のコミュニティディレクターである藤田に話を聞き、マーケティングの観点から、企業がコミュニティを導入するメリットを掘り下げていきます!

「コミュニティをマーケティングに活かしたいけど一歩が踏み出せない」「本当にメリットがあるのか気になる」といった気持ちを抱えるマーケティングのご担当者様はぜひご一読ください!


コミュニティにはどんな種類があるの?

若林:企業のマーケティングにおいて、コミュニティを導入するメリットが今回のテーマです。最近、「ファンコミュニティ」という言葉をよく耳にするようになりましたが、企業のマーケティング活動におけるコミュニティには、いくつかの種類があるのでしょうか?

藤田:大きく分けると、2つの軸があります。1つ目は、直接的に利益に繋げることを目的としたコミュニティ、つまり顧客のエンゲージメントを高めるためのコミュニティです。2つ目は、新規事業や新機能開発のためのコミュニティで、顧客からフィードバックをもらうことが主な目的です。

さらに、1つ目のエンゲージメントを上げるためのコミュニティは、さらに2つに分かれます。1つは、既存顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を向上させることを目的としたコミュニティ、もう1つは、まだ購入には至っていないものの、関心を持っている見込み顧客向けのコミュニティです。

若林:ありがとうございます。とてもよくわかりました。ちなみに、その見込み顧客に向けたコミュニティというのは、具体的にどのようなコミュニティなのでしょうか?

既存顧客のLTVを上げるためのコミュニティであれば、すでに商品を購入した人たちが集まって、良い使い方を紹介し合ったり、他の商品をおすすめし合ったりするイメージがあるのですが、見込み顧客のコミュニティではどのような活動が効果的ですか?

藤田:まず、見込み顧客向けのコミュニティが必要な背景を説明すると、顧客が購入を決定するまでに時間がかかるようになってきているからです。以前は、たとえば「これを食べたら5キロ痩せます」といった広告で比較的簡単に売れていた商品もありました。しかし、最近では詐欺広告が増えた影響もあり、「本当に効果があるのか?」と疑う顧客が増え、購入のハードルが上がっています。

そのため、従来の「認知」「興味・関心」「比較・検討」「購入」というカスタマージャーニーに「信頼」という新しいフェーズが必要になっています。この信頼をどう作るかが、現在のマーケティングにおける重要な課題です。

その信頼構築に有効なのが「コミュニティ」なのです。たとえば『食べログ』のような口コミサイトのように、ユーザーが体験した感想やレビューが共有される場です。「おいしいのか?」「この商品で本当に痩せられるのか?」といった疑問が顧客に湧いたとき、コミュニティの存在が購入の後押しとなります。

「ここに行って、このような体験をして楽しかった」「こんな効果が得られた」という、いわゆるUGC(User-Generated Content)です。UGCがあることで、顧客は「こういう経験ができるなら行ってみようかな」「こんな効果があるなら買っても大丈夫」と安心し、購入に繋がります。

若林:たしかに! 企業が一方的に宣伝する情報だけでなく、UGCがあるからこそ商品を信頼できて、買ってみようという気持ちになりますね。

コミュニティを導入するメリット3つ

若林:次に、企業のマーケティングの観点で、コミュニティを導入するメリットについて教えていただきたいです。

藤田:メリットは大きく分けて、購買意思決定の促進、付加価値の向上、安心感やブランドイメージの向上の3つです。

1つずつ説明していくと、まず「購買意思決定の促進」というメリットについてですが、先ほどもお話ししたような口コミやレビューサイトを想像していただけるとわかりやすいと思います。

これらの情報は、企業や商品に対する信頼性を客観的に確認できる手段です。実際に商品やサービスを購入した人が「社員が誠実で、オフィスや工場を見学したときにとても良い印象を受けた」といった好意的な経験をコミュニティ内で共有することで、他の消費者も「この企業なら安心できそうだ」と感じやすくなります。こうした信頼の蓄積が、最終的に購買意思決定を後押しする要因となります。

次に「付加価値の向上」というメリットについてです。このメリットは大きく2つに分けられます。

1つは“自己表現価値”です。たとえば、環境に配慮したアウトドアブランドの服を購入した場合、その服を身に着けることで、「サステナブルなサービスが好きです」「キャンプが好きです」といった自分の価値観や趣味を表現できます。これが“自己表現価値”です。

もう1つは“社会的価値”です。好きな商品やサービスのコミュニティに貢献したり、自分にしかできない役割を果たせることで、社会的価値も見い出せます。たとえば、アウトドアブランドのキャンプコミュニティがあり、そこで自分の得意な料理をふるまうことで、「自分の個性を活かしてコミュニティに貢献できた。コミュニティを提供してくれたのはこのブランドだ」と、より価値を感じられるようになりますよね。

コミュニティを通して、単なる商品の購入以上の体験として、こうした“自己表現価値”や“社会的価値”を消費者に提供できれば、より高い単価でも受け入れられる可能性が高まります。

最後に「安心感やブランドイメージの向上」についてです。これは、企業やブランドがコミュニティを大切にし、「社会に貢献している」「人に優しい」というイメージを持たれること自体が、ブランドイメージの向上に繋がるというものです。

コミュニティの運営は、短期的には「購買意思決定の促進」や「付加価値の向上」に繋がりやすいですが、1〜3年という期間にわたって客観的に信頼でき、自己表現価値や社会的価値を感じられる良質なサービスを提供し続けることで、ブランドイメージは複利的に成長していきます。

絶対避けて!「強欲型のコミュニティ」とは

若林:コミュニティを作る際の注意点や避けてほしいことはありますか?

藤田:「購買意思決定の促進」や「付加価値の向上」といった短期的な成果を追い求めすぎると、最も重要な「ブランド価値の向上」というコミュニティ導入の醍醐味を味わえなくなる恐れがあります。いわゆる「強欲型のコミュニティ」といえるものです。

最近では、あるアウトドア用品メーカーの例が有名です。そのメーカーはまさに、「購買意思決定の促進」や「付加価値の向上」に注力していました。キャンプ用品やアパレルは高価でしたが、コアなファンがしっかり購入していました。

私も昔はそのファンの一人でした。客観的にも魅力的なブランドだったので、それを着ることで自己表現ができ、サステナブルな印象もあり、そのブランドを買うことで地域貢献しているという実感がありました。

しかし、数年前に商品の価格が一気に上がり、「購買意思決定の促進」と「付加価値の向上」がさらに押し進められました。その結果、商品が全く売れず、大量の在庫を抱えることになったそうです。自分だけが持っていると思っていた高付加価値の商品の在庫が大量に余っていると知ったファンは幻滅し、離れていってしまいました。

この事例では、ファンも結局「強欲型」だったということです。ブランドを着る自分が好きで、そのメーカーのブランド力を利用して自分の価値を上げていたということになります。

若林:コミュニティを長く続けるためには、ファンの質も重要ということでしょうか?

藤田:まさにその通りです。ファンの質は非常に重要です。ファンは、パーティシパント・ファン・ロイヤルカスタマー・エバンジェリスト*の4段階に分けられますが、ロイヤルカスタマーやエバンジェリストにどう引き上げるかが重要です。

売上のボリュームゾーンは、ファンまでの緩いステージにあるのですが、ファンに焦点を当てすぎると、ロイヤルカスタマーやエバンジェリストが離れていく現象がよく見られます。

ロイヤルカスタマーやエバンジェリストは、商品力だけではなく、そのメーカーの思想や価値観に共感して購入しているため、そこをしっかり守りながら運営するバランスが大事です。

コミュニティは商品原価!?

若林:コミュニティを運営するとなると、どうしてもコストがかかってしまいますよね。長期的な視点で考えることが大事だというお話もありましたが、かけたコストが本当にしっかり回収されるのかと不安に感じる方も多いのではないかと思います。実際のところ、いかがでしょうか?

藤田:回収できます、というのが答えになりますが、回収というよりも「損失を出さない」という表現の方が近いかもしれません。回収という言葉自体が、どこか「見返りを求める」「コミュニティに取り組んだら倍になって返ってきてほしい」というような強欲さを感じさせる言葉だと思います。

良いデザインの商品を作ることはもちろん大事ですが、その商品を受け取った人たちがより良い体験をするためにコミュニティが大切だということです。要するに、商品力を高めるためにはコミュニティが必要だということですね。

だからこそ、コミュニティ運営は商品原価の一部と捉えるのが良いですね。原価と考えると、それは商品を作るために必要な原材料費にあたるので、回収という概念はなくなるのではないでしょうか。

若林:コミュニティは原価と考えると、広告とはまったく違う概念だということに気づきました。それがないと、そもそも商品として成立しないということですよね。

藤田:その通りです! 商品の取扱説明書に近いですね。

たとえば、洗濯機を売る際に、コスト削減のために取扱説明書を付けずに売ってしまったら、そもそも買ってもらえないと思います。取扱説明書に「回収」なんて求めませんよね。コミュニティも同じで、商品とセットで考えてほしいです。

若林:初めは、「コミュニティ=販促」と捉えていたのですが、その考え方は少し違うということでしょうか?

藤田:そうですね、販促と捉えてしまうとあまり良くないですね。コミュニティは、購買意欲を過度に促進するための施策というよりは、むしろCS(カスタマーサポート)として捉えた方が良いです。CSはお客様から見たら、もはや商品の一部ですので、やはり「コミュニティ=商品の一部、商品原価」として捉えて、ぜひ取り組んでいただきたいです!


*パーティシパント=ゆるい参加者。「自分に関係のあるキャンペーンに参加する」、「軽い気持ちでフォロー、いいね、リツイートする」、「試供品をもらう、試す」といった行動をし、発信者とゆるくつながっている。
ファン=応援者。「商品を購入する」「会員登録する」「ソーシャルメディアにレビューを書き込む」といった行動をする。
ロイヤルカスタマー=支援者。長期的に購入を繰り返し、企業の売上を支えている消費者。彼らは、支援している会社が取り扱っている商品の「機能」というより、その会社や商品の「ブランド」に対して魅力を感じている。
エヴァンジェリスト=伝道者。支援する企業の商品を、積極的に他人に推奨する。
参考:SIPSとは?SNS時代の消費行動モデルを、事例付きで徹底解説


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