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大学入試共通テストの「化学」を例に受験生にもとめられる解くスピードをあらためて確認してみた


はじめに

 年明け1月におこなわれる大学入試共通テスト。新教育課程の初年度。昨年までとはいろいろと科目名が変わり、「情報」があらたに6教科めとして登場する。

いずれの教科・科目でも言えることがひとつ。それはなさけ容赦ない早解きがもとめられるところ。じっくり読んで熟考はほぼできない。初見では問題文を読み終わる段階で時間がきてしまう可能性が高い。長文と豊富な資料から必要な要素を引き出す方法を身につけたい。どういうことか「化学」を例に。

何より解く速度

 なにごとも熟練すると手際よくなれるもの。こうした試験問題への対処も同様。なるべく早い段階で基礎を忘れない・維持する、つまり定着させる習慣をつける(高校入学時あたりから)。やはりある程度まで熟練度を上げるには時間を要する。

高3生などが急ぐ場合でも、各項目ごとに教科書レベルの基本事項について徹底した理解につなげる。ひととおり終えたら、過去問などを時間を計りながら解く練習をくりかえし慣れていく。こうして長文のなかから解くうえで必要な要素がおのずと見えはじめたら成功。効率的にこなしたい。

共通テスト「化学」を受験の1科目と決めたら上の学習方法を踏襲し、時間を計りつつ早解き練習。当面の目標は1問あたり2分以内。その理由はつぎにあげる。

解答時間は

 理科を1~2科目選択する受験者により解答時間に多少のちがいはあるが、1科目あたりほぼ60分。令和6年度の「化学」では全問で31か所をマーク。つまり2分以内でひとつマークすれば完答できる。

具体的には各問の問題文や図表から必要な要素をみつけて化学反応式でとらえる。各々を物質量(モル)の概念で計算をすすめ、べつの図にまとめて結論を得るなどを120秒以内でマークの塗りつぶしとともにこなす。

新教育過程では理解度をみるために、データのなかから必要な要素をあつめる作業や適切に使いこなす力を重視する傾向があるので、令和7年度も踏襲する可能性が高い。今回から方式がかわり理科2科目選択ならば、あいだの10分間とともに60分✕2=120分(合計130分)をつかえる。

1教科目の解答用紙は途中で回収されるだろうが、問題冊子は最初にまとめて配られる。得意なほうを早めにマークまで終わらせ、2科目めに着手して問題冊子内に解答を記しておくと、あいだの10分間をふくめて2科目めにずいぶん時間をかけられる。

センター試験とのちがいは

 上述したように令和6年度の「化学」では31個マークが必要。このうちのすくなくとも7~8か所で計算を要する。4年度は12/33か所、5年度は14/35か所ほどでたくさんの計算がもとめられた。一転して令和6年度は計算があきらかに減った。そのかわり1題あたりの問題文が長くなり図表が増えた。

センター試験では数題にすぎない計算は時間がかかりがちなのであとまわしにするなどの対策が可能だった。ところがここ数年の共通テストでは上述のように全問題のうち1/4~1/3をこえる問題で計算をもとめられ、そうはいかなかった。ようやく6年度の問題ではその半分ほどの計算問題数となった。

計算が減った理由を深読みすると、もっと作業に従事させたい、探求する能力をみたい作題者の意図が感じられる。長い問題文から必要な要素をひろいあげて付随する図表の把握、さらに計算。あきらかにセンター試験とくらべて求められるものがちがう。もちろん計算以外の個所で所要時間を極力減らし、計算問題へ時間を充てるくふうが求められる。

読解力と理解度

 長文になった問題文の内容把握には文中の化学用語の理解が前提となる。授業や学習で養った化学の概念を教科書のすみずみまでつかう。その結果、暗記だけで答えられるものはほぼないし、いくつかの項目の理解が弱いままでは正解にたどりつけない。

そこでふだんの学習において教科書によく登場する元素や化合物について、その性質や特徴を理解して正確に記憶するのはたいせつ。マーク式とはいえ、化学の教科書で用いられる太字の概念や用語について短文で説明できる程度の知識は必須。

惑わされない

 令和6年度では「サリシン」、「ペニシリンG」、「テストステロン」、そして「質量分析計」など聞き慣れぬ物質名や用語が登場したがあわてる必要はなかった。

問題文中にていねいなそれらの説明があり、それを理解して解く新教育課程ならではの問題のなかで使われる語にすぎない。ただちに基礎基本に帰着できるものばかり。なにも今後の記憶の対象にすべきものでない。むしろこうした形式に慣れていく学習がもとめられる。

むしろ化学計算において物質量(モル)の概念を用いるのは必須事項で、正確な理解と熟練度がかつて以上にもとめられる。化学物質における質量、体積、圧力、温度などの相互の関係は、たとえばボイル・シャルルの法則、密度、溶解度や浸透圧などの諸性質や状態について、理解をすすめるとともにじゅうぶんに熟練してどの形態からでも導けるようになりたい。

化学反応式上で

 たいていの化学に関する問題は、化学反応式、熱化学方程式、平衡状態をあらわす式などとして表せる。こうした式はいわば化学をあやつるための道具といえる。道具をつかいこなせてこそ問題を平易にして明確にできる。

ふだんの学習時にいつも化学反応式などであらわして解く習慣を身につけると結果的にはやく正確に解ける。これはそのまま2次試験の科目で「化学」が求められてもそのまま適用できる。

おわりに

 共通テストをこなす能力はとてもアクロバティック。困難な状況をたくみな手法でもってやりすごす。これで受験者たちが正規分布し50点台の平均点をたたき出すこと自体おどろき。

彼らがこの時期に一生のうちでもっともあたまが冴えているといわれるのもあながちまちがいでないかもと納得ができる。教えているわたしなどはこんな短時間で初見の問題をこなせる自信は毛頭ない。若い受験生たちだからこなせるのかもしれない。


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