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学術論文をつづる作業:ずいぶん棚ざらしのままだったテーマでも日の目をみることがある


はじめに

 このところ研究パートで論文を書いている。じつはこのテーマ、ずいぶんまえにある部分で躊躇して文字どおりほうっていたもの。おそらくほかのいくつかといっしょにそのまま埋もれてしまうだろうなあと気に留めることなくすごしていた。

先日ふとつづきを書いてみようと手にとる。あくまでもわたしにありがちな気まぐれ。こんな状態で10テーマぐらいそのままに。たまたまひとつを手にとったにすぎない。するとびっくりすることが…。

きょうはそんな話。

ほんとうにたまたま

 スタッフの先生と共著でいくつか論文を出すのがしごとのひとつ。上に記したように未着手のものからなるべくかたづけたい。これならば基本的に予算をさらにつかわないですむ。掲載にこぎつければ業績としてみとめられる。のちの研究費の申請などにもプラス要素になりそう。

そこで文字どおり棚ざらしのまま未完成の論文原稿のいくつかから、なにも考えずにひとつを手にとった。筆をとめて思考の中断したところから思いかえす。手のとまった時点からさきでほかの研究と重複などないかチェックをかねて、序章(イントロダクション)に必要な情報の収集にあたった。

論文に着手する際には

 序章には、なぜこの論文を世におくりださねばならないかの大義名分が必要となる。つまりはいきさつをふくめ未着手で新規性があり、しかもあきらかな進展がみられる内容だよと記す。なるべくならインパクトのあるほうがさらにいい。

その要素はどのあたりにあるか、アピールすべき点を明確にするべく手がかりとなる関連論文をさぐる。そのうちのいくつかをとりあげて引用文献とする。だいたい平均すると30報ほど。そのためには100報あまりに目をとおす。

この作業、ひとむかしまえは図書館の書庫に入りびたりで日がな1日かけておこなった。何冊かずつ綴じられ、金文字で背表紙に雑誌名・年号・巻号などがしるされている。ずっしりと重たい。人員が多いほど、そしてさがすテーマになるべく造詣のあるヒトの加勢があればあるだけはかどるのでひとりでもほしい。

それがどうだろう。今はデスクにいながらにして複数の検索ワードでサーチすれば世界じゅうのおもな論文にアクセスできる。オープンアクセスの論文ならばだれでもネット経由でたちどころに見たい雑誌の知りたいページをネットをつうじてモニタの画面上に表示できる。

探ったさきにはなんと…

 今回20報ほどの論文に目をとおしたところでぴたりと手がとまった。はっとした。関連するテーマですこしだけまえ。見落としていたようだ。しかも見たことも聞いたこともない考えの論文。

こういうときは経験から慎重になるべき。いきなり信じてはもとも子もない。うっかりうのみにしないのが肝心。それなりの説ならばたいていほんのすこしさきに追試を検討した論文があるはず…。作業をきりかえさがしはじめる。

予想どおり。すぐにお目あての追試の論文がみつかった。しかも掲載されている学術雑誌のグレードがあがった。

なんとまあ、わたし以外の専門家も興味をもって追試をしてそのとおりだったらしい。しかしそれでも安心はできない。1か所だけの追試結果ではこころもとない。まだあるはず。それだけインパクトがあり、定説をくつがえすほどの価値ありならばさらなる追試やべつの方法からの検討がなされるべきだが…。とキーワードをきりかえつつさらなる検索をはじめた。

おわりに

 するとみつかった。3か所目の追試。研究雑誌はより定評のある専門学会誌。かなりの確率で定説をくつがえすほどのことになりそう。そこからさきは山のようにみつかった。もしかしたらこの分野の教科書の一部をあらためるほどになるかもしれない。

手もとの棚ざらしにしておいたテーマと関連する内容なのでさっそく論文を書かないと。急に陽のあたるところにほうり出されたかんじ。当時はこんな地味なこと、だれも見向きもしないだろうとたかをくくり、いままでほうりだしたままにしておいた。今回みつけたことをヒントに新たな技術のアイデアを2つ、3つとその日のうちに思いついた。

こんなことがあるから研究はやめられない。

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