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どのくらいの範囲でわがクニの自給率を見積もればよいのだろう

(2024.10.07加筆)

ありがとうございます

はじめに

 食料自給率はさまざまな指標があり見かたもさまざまだが、世界のクニグニとくらべるとわがクニの値はどんな指標でもあきらかに低い。ここで蒸し返しの議論をする気は毛頭ない。むしろ素朴に疑問が湧き正確な情報をつかみたい。

先進諸国ではおしなべて自給率(輸出分を算入?)をあげる方向にあるなかで、わがクニでは食料輸入額の赤字は増え、いずれの指標でもわがクニの値はここ2,30年であきらかに下がっている。おなじみの供給熱量ベース・金額ベースの自給率でもしかり。

食料安全保障としてはたして…。とはいえ、わがクニのコストのかかる一部の農産物をそのまま諸外国の低コストのものと太刀打ちできるほどにするのは現実的でない。かたや輸出できるほどの産品すらある。農産物ごとにみていく必要があるし、国内でも各都道府県でもその数値には大きな開きがある。

はたしてどの程度にもっていくといいのか。各地域でもさまざまな取り組みが。

https://www.akitakeizai.or.jp/journal/data/20200301_topics.pdf

きょうはそんな話。

諸外国では

 食料自給率について学習サポートの生徒たちに説明していてふと気づいた。わがクニの特徴がよくあらわれている地理の資料。ここ2,30年で先進諸国ではのきなみ関連する数値を上げているか横ばいのなかで、わがクニが特異な状況なのは変わりない。農水省の資料でみると世界一の農産物純輸入国。

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/jki/j_rep/annual/2014/pdf/iii_1.pdf

いくつかの指標でみても減少傾向はたしか。

各国では自給率をあげる努力をつづけ、さらに模索の状況のようだとがわかる。そのあいだにわがクニは具体的にどんな成果をあげようとしたのだろう。残念ながら内閣府の資料ではあまり見えてこない。

https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/doc/nouchibukai05shiryou01-2-1_7.pdf

農政がなかなか思ったようにすすまない現状がある。

生産者をやって

 6年ほどやさいとくだものをつくり販売までやった経験から思うに、やはり高い値段をつけて売ろうとすると、店側から苦情が出るという状況。高くても買い手がつけばコストをかけただけの値段をつけたいのが生産者の本音だし、天候などにより手間がかかった分だけ値をつけたい。もちろん市場の原理があるのは承知のうえで。

ところがその「市場の原理」ですら生産者のほうにつよく圧がかかるというか、がまんを強いられる。暗黙のうちに(ある場合には面とむかって)安い値段で売ってよと店側からかかってくる。手間をかけてりっぱに育ったやさいをコストに合わない値段をつけて売れという。

本音では

 生産者がなんでも100円をつけたり、おたがいに安値競争をしたりでは自滅してしまう。むしろ高値でも売れるように仕向けたい。新規参入者のわたしはいつもいちばん朝早く来て高い値をつけてならべて売ってきた。するとまわりのやさいを置くみなさんもひきづられて高値の方向へ。

消費者からよりもわたしは販売所の運営者や店員からの圧を感じていた。直売所ですらそうなのだから、あいだに農協や仲買の入る従来の方法ではなおさら。論理は飛躍し過ぎかもしれないが、がまんを強いられるのはいつもつくり手のほうというのが、このクニの食料の生産をおかしくした元凶ではないか。

消費者の立場で

 こんどは買う立場で。いつも処分品のコーナーに足がむく。生産者の思いがつまるやさいが処分されるのはしのびない。わたしの買い方はむしろいちばん高くつくかもしれない。すぐに食べないと傷みが進行してしまうから。でも生産のおかげで日持ち方法を知っている。割引になってもそのリスクを理解のうえで買う。

これはどうだろう。生産者の側に極度の圧がかかりつづけ、作物をつくっても身を削るばかりで生活できない状況とは産業として成立していない。つまりは市場の原理からかんがえてもいびつなのはたしか。このクニで農業の多くが産業として成立しないのはやはりおかしい。生産コストに見合うだけの利益をあげてせめて農業で生活できるのを目標とすべきでは。

もちろん都会やそのごく近く(野菜工場はべつ)ではほぼ農業できないうえに、コストに見合うものにするのは無理難題。自給率においても地方との役割分担がここでは重要になる。クニとしてのいきすぎていびつな自給率はべつとして。

おわりに

 生産できる地域では「農業で食べていける」と明確に示され、ヒトが集まるほどでなければ。それには最初のうちは基幹となる作物の価格に転嫁できないうちは個人経営の農家へ、ある程度生産できた場合はそれに見合うだけの生活費を補助するようなしくみや国内でのフェアトレード的な再分配も必要かもしれない。

農産品は市場経済である以上、市場価格として定まる。国内の農産品が「健全な」経済のもとで自給の方向へと育つならば、価格はある程度高くなるかもしれないが。はたして輸入にたよらず多くの消費者がそれに納得できるか。


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