僕とやまださんの1767日 ─僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由
みなさん、こんにちは。
さっそくですが、ご報告です。
藤澤の会社──株式会社ストーリーノートが3年半にわたって運営を続けてきた「ロゲットカード」事業は、2024年の2月1日をもって、株式会社ニシムラ精密地形模型に事業譲渡されることになりました。
藤澤はロゲットカードの事業オーナーでしたが、プロデューサーのやまださんが前面に立っていたこともあって、自分の口から何かを語ることはしないようにしてきました。
ですが、今回ばかりは節目です。
事業譲渡に至った経緯やそこにあった想いなど、自分の口から話しておきたいと思い、この記事を書き始めました。
なるべく手短にいこうと思います。
さくっと読めるようにしますので、お時間のある方は是非ご一読ください。
ロゲットカードの始まりについては、2020年の7月1日に記事を書いた。
振り返って考えれば、新型コロナウィルスの恐怖がまさにピークだった頃で、今読んでもどこか悲壮感が漂っている。
「全国の観光地を訪れた証としてもらえるコレクションカード」
楽し気な謳い文句と裏腹に、配布開始日に緊急事態宣言が重なるという笑えないジョークのようなスタートだった。
コロナ禍は終息する気配を見せず、それから何年もの間、僕たちは苦境極まる観光業と伴走する格好で、ロゲットカードのサービスを続けた。
それも楽しかったなんて笑顔で言えるほど、僕は役者になり切れない。
何をやってもうまくいかなくて、精神的にクタクタになるまでやまださんと意見をぶつけ合った。そんな日が何度あったか知れない。
「もうやめたほうがいいんじゃないか」
そう囁く声が何度も聴こえた。
だけどそのたびに、僕たちは踏みとどまった。
それは、そんな悲惨な社会状況の中でも、ロゲットカードに込めた想いに共感してくれる人が確かに増え続けていたから。
逆風に立つ僕たちにとって、それがどんなに勇気をくれる存在だったか。あれから時間が経った今でも、僕は上手く言葉で表現できないままだ。
──3年半が過ぎた。
苦境にあえいでいた観光業もすっかり息を吹き返し、あの暗かった時間が幻だったかのように、各地に賑やかな声が戻ってきた。
そして、これは自分たちでも気づけなかったことだが、ロゲットカードもいつからか同じ波に乗っていたようだ。
イベントを実施すれば、顔なじみの方もそうでない方も含めて大勢の人が駆けつけてくれる。変な言い方だが、ロゲットカードは「いつの間にか」、そんな愛されサービスへと成長を遂げていた。
そのことに気づいたとき、僕とやまださんは心の底から深い安堵の息をついた。
「あそこでやめなくてよかった」
そう言って、お互い何度も肩を叩き合った。
毎月のロゲットカードの配布枚数はわかりやすく増加傾向になり、僕たちはいよいよ次の手に打って出ようと考え始めた。
ああでもないこうでもないと様々な話し合いをする中で、僕はやまださんから、『株式会社ニシムラ精密地形模型』という会社と、その代表の『大道寺さん』のことを教えてもらった。
やまださん曰く、大道寺さんはロゲットカードの活動に共感してくださっていて、何か一緒にやりたいと申し出てくれているとのことだった。
大道寺さんは経営者としての経験が僕より遥かに豊富で、ロゲットカードのような地域を巻き込む活動について、信じられないほど多くの打ち手とアイデアを持っていた。
大道寺さんの語る構想は単なる地域活性化の手伝いにとどまらず、カードのデジタル化やグローバル化など具体的かつ実現可能性が高い内容ばかりで、僕はただ唖然としながらその話を聞いていた。
ちょうどその頃、ストーリーノートは起業から6年目に至り、本業の物語制作業務が多忙を極めていた。
僕はこれでも、10年以上もドラゴンクエストシリーズのディレクターを務めてきた人間だ。悪いけど忙しさには耐性がある。周りにはそう嘯いていたが、それでもこなし切れなくなるくらいに、忙しさは日増しに高まっていく一方だった。
必然、僕がロゲットカードのために割ける時間は減っていた。
僕がそんな状態だったから、せっかく追い風が吹いているのに、やまださんを動きづらい状況にしたまま放置してしまっていた。
僕はそのことに気づいていたし、悪いなとは思っていた。けれど、それでも、僕はなかなか動き出せなかった。理由は明らかだ。
僕はこの頃には、とっくに気づいていたのだ。
今自分が下すべき正しい判断は、ロゲットカードを自分の元から手放すことだ、と。
2023年9月23日、ロゲットカード第5弾が配布開始された。
SNSでのその盛り上がりの様子を見て、僕はようやく観念して、やまださんにこう相談した。
「大道寺さんの所なら、ロゲットカードをもっと拡げてくれるのかな」と。
やまださんは驚いていたけど、さすがに長い付き合いだ。僕がこういうことを言い出した時は本気だと、よく理解してくれている。
だから、やまださんはすぐに、「きっと真剣に話を聞いてくれると思います」と答えてくれた。
そこからは、まさしくトントン拍子。
あれよあれよという間に、ロゲットカードの事業譲渡の話がまとまっていった。
もちろん寂しい想いはあったが、それは仕方がないことだと自分に言い聞かせた。(今も言い聞かせている)
ロゲットカードは自由度高くやってきたサービスだが、たった一つだけ、絶対に変えられないことがある。
それは、『ロゲットカードのプロデューサーはやまださん』ということだ。
だから、これも色んな可能性について話し合った上で、やまださんもストーリーノートから大道寺さんの会社──株式会社ニシムラ精密地形模型に移籍すると決まった。
やまださんがストーリーノートで働き始めたのは、2019年4月1日。
それから今日、2024年の2月1日まで、1767日間。
僕とやまださんの共同戦線は、ここで一区切りということになる。
彼が今のこの状況をどう思っているのかは、僕の口から語ることじゃない。
きっと彼のSNSかどこかで語られる日があるだろう。
だけど、僕に言わせてもらえるのならば、これはやまださんにとっては紛れもない『栄転』だ。だから、こう言わせてくれ。
おめでとう、やまださん。
ここまで一緒に戦ってくれてありがとう。
やまださんは、ずっと僕の戦友で、親友だ。
さて、「これだけは書いておいて」とやまださんから念押しをされたので、最後に。
ストーリーノートは、今後もロゲットカードを応援していきます。
だから、ファンの皆さんにはおなじみのこりんやうららも、ストーリーノートに在籍しつつ、これからも動画やイベントで姿をお見せすることになるだろうと思います。
それにとどまらず、株式会社ストーリーノートと株式会社ニシムラ精密地形模型は、この縁を機に関係強化して共同で何かできたら、なんて話もしています。
まだまだ具体的に話せることはありませんが、いずれ何かご報告できる日がくるやもしれません。
さて、少し長くなってしまいましたが、『僕がロゲットカードの事業譲渡を決めた理由』については、こんな感じになります。
もしもここまで読んでくれたあなたがロゲットカードのファンの方だとしたら、一つだけお願いが。どうか今後も変わらずに、安心してロゲットカードを集め続けてください。
ロゲットカードはこれから、ますます加速度をつけて拡大を続けていく。そういうサービスになるはずです。
なんせ絶対そうするって言ってましたから。僕の相棒が。
2024/2/1
藤澤 仁
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