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素朴に見せながら、きめ細やかな選択がなされている茶室のディテール

茶室は虚飾を嫌い質素ながらも、洗練された意匠が用いられ、使われる材料も素朴に見せながらきめ細やかな選択がなされています。茶室の間取りや使われる素材、ディテールなどを紹介します。

平面・間取り

平面計画・間取りで大切なことは、亭主が座る点前畳(※)に対して客畳をどう配置するか。懐石(食事)・喫茶・点茶のための準備や後始末のための水屋の位置を最初に決め、茶事の動線を検討して亭主の出入りする茶道口(勝手口・給仕口)を決めます。

※点前畳:亭主が茶をたてる畳。道具畳、亭主畳ともいう。

次に点前畳にどう進むか。基本的には踏込畳に一歩進んでから左または右に曲がって、点前畳に座ることが基本です。また、踏込畳からまっすぐ2~3歩入って点前畳に入る方法もあります。点前畳の右に客畳(つまり、客が亭主の右に座る)がくる場合を本勝手、左側にくる場合を逆勝手と呼びます。

炉切り

茶室における炉の切り方(位置)は宗派・流派によって多少異なります。一般的には点前座(点前畳・道具畳)に炉を切る入炉と、点前畳以外の畳や板に炉を切る出炉があります。入炉には点前畳の客と面する側に炉を切る向切と、亭主の後に炉を切る隅切があり、出炉には台目切(台目畳に沿って切る)があります。つまり、入炉2種類・出炉2種類、さらにそれぞれに本勝手・逆勝手があるので、計8種類の炉切りがあります。これを「八炉の法」と呼びます。

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八炉の法の参考図

点前畳と客畳の間や点前畳の正面に幅の狭い板を挟み込むことがありますが、これをそれぞれ中板・向板と呼び、ここに炉を切る場合もあります。四畳半以上の広間では本勝手の四畳半切が使いやすいといわれています。

炉は寒い季節には、土炉・石炉や金属製の炉をヒノキ材で囲って使い、温かい季節には金属製や土製の風炉が用いられます。夏(5月~11月初旬頃)の風炉、冬の炉と使い分けるのが一般的です。また、切腹畳にならない位置に炉を切ります。畳の敷き方と炉の位置を考慮して、亭主・客の動線も考え合わせることが必要です。

畳の敷き方

茶室の一般的な畳には、京間(191×95.5cm)、関東間(176×88cm)などのサイズが使われます。台目畳は、普通の畳のおよそ4分の3の大きさです。「〇畳台目」とは、普通の畳〇畳+台目畳1枚の敷き方を示しています。

茶室は床の間より炉が基準となりますので、亭主の勝手付側(客座とは反対側の辺)に平行にして、他の畳を敷くことをよしとしています。直角に対すると亭主の切腹を意味して嫌われます。

一般的には床の間と畳は平行になり、点前畳は縦敷き、出炉の炉畳は点前畳と直角とし、炉は縦に切ります。この敷き方は下座床の場合、不吉とされる床差しになってしまいますが、茶儀上は問題ありません。

天井・内壁

天井は室内の雰囲気を大きく左右します。真=平天井、行=掛込天井、草=落ち天井の三段階に分け、座の違いを表現します。例えば、点前座を蒲の一段低い落ち天井として、客座は格子天井や棹繰檜皮張天井などの平天井に、躙口(にじりぐち)は掛込天井とします。客に対する礼儀ともてなしの心遣いです。

茶室の壁は黄土色で、通常ジュラク土またはジュラク色土物砂土で仕上げます。小舞に荒壁を塗り、柱・天井まわりに暖簾打ち、髭子打ちを行い、中塗りで塵まわりを仕上げ、上塗りするのが本来の土壁です。

茶室の内壁の腰部分は、壁や衣服の傷みや汚れを防ぐため、腰張りをします。客座は湊紙、点前座側は奉書などに用いられる反古紙や鳥の子紙を使うこともあります。

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平三畳向切の茶室。正面に躙口と連子窓。
(設計・施工/重川材木店)

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床内に掛障子の墨蹟窓、点前座にも窓を設けています。
(設計/畠山博茂建築設計事務所)

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