霞ケ浦の概要
地理
諸元表
湖面積 220 km2(西浦172 km2/北浦36 km2/常陸利根川6 km2)
湖岸線 252 km (西浦122 km/北浦75 km/常陸利根川55 km)
水深 平均水深 4 m 最大水深 7 m
霞ケ浦は茨城県の面積の35%を占める日本第二の湖です。平均水深4 mという遠浅な湖ですが川砂の採取やヘドロの除去を目的に浚渫工事が施されるため、所々に深場が存在しています。また、湖面が広いため風の吹送距離が長く高波も発生します。沿岸は、この風による波浪の被害を受けやすいのでコンクリート護岸が多く場所によっては離岸堤が設置されています。
流域の高低差が小さいため水の入れ替わりが緩慢で、富栄養化が進みやすくアオコをはじめとした藻類の発生にしばしば悩まされます。現在は、霞ヶ浦導水事業によって利根川や那珂川とトンネルで結ばれ霞ケ浦の澱みの解消に寄与しています。
「湖沼」ですが漁業法上は内水面ではなく海区扱いであり、海と同じ漁業制度がとられています(端的にいうと釣り人が遊漁券を購入する必要がありません)。
歴史
もともと内海であった霞ヶ浦ですが、江戸時代における利根川の東遷工事などの影響で土砂が大量に流入し汽水湖となりました。さらに、1963年に常陸利根川に逆水門が完成、1974年に水門が完全に閉じられると淡水湖としての性質を強めていきました。
現在、淡水化した霞ケ浦から農業用水、水道用水および工業用水を茨城県南地域に安定的に供給しています。人的利用によって環境が激変した湖のため、希少種や固有種問題などでは取り上げられることはあまりないないかと思います。
Tips
導水事業による水流の変化からなのか、これまで利根川でしか確認されなかったハクレンの産卵が2019年からは桜川でも確認されるようになりました。
霞ヶ浦のみならず、桜川、小貝川、鬼怒川の流域でもアメリカナマズの生息が確認されるのは導水&用水事業によって稚魚が拡散した可能性も考えられます。
https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/naisuishi/documents/200806_silvercarp.pdf
水質
かつては湖水浴場が整備されていた霞ケ浦ですが、淡水化に伴って水質汚濁が進行し、1974年に湖水浴場が閉鎖されました。霞ヶ浦は水の入れ替わりが緩慢なうえ、流域は農業や畜産が盛んなため窒素やリンを豊富に含んだ水が湖に流れ込みます。さらに、養殖のエサの残渣や流域の人口増加もあり湖の富栄養化が進行しました。
そのため、霞ヶ浦の浄化にむけて各法整備が進められました。霞ケ浦浄化の具体的な対策として、流域の下水道の整備や養殖いけすの削減等が行われてきました。
霞ケ浦の浄化に関する法の整備
1982年「霞ヶ浦富栄養化防止基本計画」(茨城県)が公布
1984年「湖沼水質保全特別措置法」で霞ヶ浦が指定
霞ケ浦の浄化対策の成果の一例として水質の推移をみると、1979年の化学的酸素要求量(COD) 11 mg/Lだったのが現在は7 mg/L まで改善しています。しかしながら、現在も環境基準である3 mg/L以下を満たしておらず、湖沼間の比較でも国内ワーストに近い水質です。
霞ケ浦におけるアオコの発生は近年減少したものの、その他の微生物の発生までは抑えられていません。夏場は、微生物の大量発生によって酸素量の低下した水塊(貧酸素水塊)が湖の底部に発生します。この水塊が強風によって浮上すると大量の魚が酸欠死することがあります。
また、湖面が白く濁る「白濁現象」もしばしば起こります。「白濁現象」が起こるメカニズムは不明ですが、粒径 1 um以下の方解石(CaCO3)が主成分だそうです。「白濁現象」をはじめとした湖の透明度の変化は、藻類の発生量を左右し、霞ヶ浦の生態系にも影響を及ぼします。
魚種
霞ケ浦ではコイの養殖が盛んで、1981年は8641トンの生産量がありましたが、その後は需要が減少し約5000トンで推移していました。2002年にはコイヘルペスの発生によって養殖コイはほぼ全滅、現在は約800トンの生産量となっています。
2013年の漁業の漁獲量はワカサギ、シラウオやエビ類を中心に646トンでした。例えば、ワカサギの漁獲量の推移に着目すると、1965年の2595 トンが2019年には119トンまで減少しています。外来魚の食性から食害が注目されますが、データが示すところ外来種が台頭する前からワカサギは減っていたことは留意する必要があるでしょう。
また、時代によって優占種が目まぐるしく入れ替わるのも霞ケ浦の特徴です。現在の霞ケ浦の優占種はアメリカナマズですが、1999年はペヘレイでした。1990年代には多数確認されていたラージマウスバスやブルーギルも2000年頃から減少しています。
これまでに、霞ヶ浦ではホワイトバス、タイリクスズキ、ピラニアなどが捕獲されたこともあり、いつ新たな魚が霞ヶ浦での優占種になるかわかりません。事実、ダントウボウが近年増加しているという報告もあります。