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アメリカナマズの特徴

形態

アメリカナマズは正式にはチャネルキャットフィッシュといいます。チャネルは英語で水路を意味するので、水路によくみられるナマズなのでしょうか(水路といっても日本のものではなくアメリカサイズとは思いますが)。

チャネルキャットフィッシュ(Ictalurus punctatus) は、条鰭綱ナマズ目アメリカナマズ科Ictalurus属に分類され、学名のpunctatusは「斑点のある」という意味だそうです。Ictalurus属には10種が属し、後述するブルーキャットフィッシュ(Ictalurus furcatus)もその一つです。そのため、同属のチャネルキャットフィッシュとブルーキャットフィッシュは交配することができます。

チャネルキャットフィッシュは在来種のギギやギバチと似た姿をしていますが、幼魚の体表には黒い斑点があり、成魚になると全長1 m超まで大型化できるのが特徴です。体表は黄色~黒色を呈していますが、黄色はエサ由来の色素によるものです。貧栄養な水域では体表が黒い個体が、富栄養化した水域では黄色の個体が多いそうです。

形態のまとめ
体表        成魚の体表は黄色~黒色、幼魚には斑点あり
鱗         鱗はなく、全身を粘液で覆われる歯         おろし金のような細かい歯で顎の力が強い
ヒゲ        8本ありアミノ酸(特にアラニンとアルギニン)に敏感背鰭、胸鰭     鋭い棘あり
脂鰭        あり
尻鰭        条数30未満(ブルーキャットフィッシュ条数30以上)
浮袋        音を増幅するため(ウエーバー器官)聴覚に優れる
フェロモン     警戒、性別、サイズ、生殖、縄張り等の情報交換

霞ケ浦のブルーキャットフィッシュ
現在までに、霞ヶ浦におけるブルーキャットフィッシュの正式な捕獲例はありません。生息していないと言い切りませんが、ブルーキャットフィッシュの釣果報告はチャネルキャットフィッシュの成熟したオスを誤認した例がほとんどです。
ブルーキャットフィッシュかなと思ったら、まず尻鰭条数を数えてください。もし、尻鰭条数が30以上だったら専門家に鑑定してもらってください。https://www.jst.go.jp/cpse/jissen/pdf/houkoku/SG150168-A-16005.pdf

行動

アメリカナマズの行動には水温が大きな影響を与えていると考えられています。水温毎のおおまかな行動は以下の通りです。

10℃以下      水深4 m以上のところに群がる
10℃以上      浅場に移動を始める
21℃以上      水深1 m程度でも頻繁にみられる
24℃(産卵期)   成熟した個体は浅場の岩礁に集まる

冬はどのサイズの個体も水深4 m以上の深場に群がりますが、夏に深場にいるのは全長30 cmまでの小型の個体ということです。深場から浅場への移動は、深場の酸素濃度の低下が要因である可能性もありますが、アメリカナマズはある程度低酸素の環境に耐えられるためそれは考えにくいようです。

夏には、稚魚は主に砂地に、小型の個体は岩場や離岸堤付近によく見られます。また、稚魚から中型までは群れで生活している様子もよく見られます。この集団で生活する習性は、高密度に飼育しても共食いしない性質につながり養殖にとって大きなメリットだったと考えられます。

超音波発信機を使ったアメリカナマズの追跡調査では、行動範囲が狭い居着きの個体と湖全域を回遊する個体がいるそうです。なぜ個体によって行動に違いがあるのかはわかっていません。

霞ケ浦におけるアメリカナマズの産卵期は5~7月です。産卵期には、オスは岩礁に巣を作りメスが訪れるのを待つのが本種の特徴的な習性です。オスは巣の中で孵化するまで卵を見守り、次のメスが訪れるのを待ちます。そのため、産卵期のオスはほぼ絶食状態で過ごします。

霞ヶ浦において、アメリカナマズが性成熟するのは全長39 cm(平均値)ということで、北米大陸における平均より大型化してから性成熟するようです。これは霞ケ浦においてアメリカナマズの成長が早いことと関連しているのかもしれません。メスは1 kgあたり1万個の卵を持ち、晩秋にはすでに卵塊を発達させている個体がいます。

食性

アメリカナマズは個体のサイズ毎に好みのエサがあり、2~4 cmではミジンコ類を、4~14 cmではユスリカ類やイサザアミ、テナガエビを良く捕食し、14 cm以上になると魚食性が強くなります。稚魚はユスリカ類が好物とされますが、オオユスリカ、アカムシユスリカをよく捕食し、ワモンユスリカは捕食しないなど選り好みもあるようです。また、下顎のヒゲでエサを探索するため底生生物ほどよく捕食されやすく、魚類ではハゼやヌマチチブがそのターゲットになるようです。

アメリカナマズの筋肉の黄色は、藻類由来の色素の沈着によるものですが、これは藻類を直接食べたためではなく、藻類をエサとしているミジンコやエビ類を捕食することで取り込んだと考えられます。同様にエビが好物な天然のウナギの体表も黄色ですが、人工飼料で飼育すると退色していくということです。

このように捕食するエサは個体のサイズ毎に好みがあるものの環境に豊富にあるエサを柔軟に利用するのも本種の特徴です。霞ヶ浦でときどき起こる魚の大量死においてはその屍肉を食い、漂流する昆虫や野菜くずも食うようです。

成長曲線

2014~2015年に北浦で約800匹のアメリカナマズを捕獲し、耳石から年齢を見積もる調査が行われました。判明した年齢と体長の関係から導かれた成長式は以下の通りです。

オス    Body Length = 63.5[1- Exp {-0.120 (year+0.416)}]
メス    Body Length = 53.6[1- Exp {-0.134 (year+0.437)}]
オス+メス Body Length = 58.1[1- Exp {-0.134 (year+0.417)}]

体長を指標としたこの調査ではオスの方が大型化するという結果になりましたが、体重を指標にするとメスの方が大型化するというこの調査と逆の結果になったかもしれません。一般には体長よりも全長の方が馴染み深いので、以下の関係式から体長を全長に変換します。

全長    Full  Length = 1.201xBody Length +0.683

これらの式にアメリカナマズの寿命と考えられる20歳を代入するとオスで全長70 cm、メスで全長61 cmとなりました。そのため、霞ケ浦の超大型個体の目安である全長80 cmは規格外のサイズということになります。北米大陸では20歳を超える個体も見られていますが、霞ヶ浦では逸出した2000年頃から長い時間が経過していないため、1~14歳の個体しか調査期間中に捕獲されませんでした。

アメリカナマズの個体のサイズは環境によって大きく異なり、富栄養化した水域ではエサが豊富なため大型化しやすい一方、同種や同じ食性の生物が多い水域ではエサの競合のため成長が遅くなるそうです。なお、霞ケ浦では北米大陸の平均に比べて成長がややはやいようです。

コイの飼料を与えたアメリカナマズの養殖実験では、1.5年の飼育で平均900 g (600~1200 g) まで育ち、これは養殖コイと比較しても同程度の成長速度だったそうです。水温が20~25℃でエサを良く食べる一方で、28℃以上になると食いが悪く、特に18℃以下になるとコイ以上にエサを食べなくなったそうです。



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