まわりが見えない不安：心の現在地を知る（心の地図）

昔々、遠くの村に、不安ばかり感じている青年が住んでいました。彼の名前はカイト。心配事ばかりを考え、必死に自分の力で問題を解決しようと、日々悩んでいました。

ある日、村の賢者が「心の地図」と呼ばれるものをカイトに見せました。これは、自分の内面を知る手がかりを提供してくれる不思議な地図でした。

賢者はカイトにその地図を手渡し、「未来への一歩を踏み出すには、まず今、自分がどこにいるのかを知ることが大切だよ」と語りました。

カイトは心の地図を広げ、自分の現在地を確認して、とても驚きました。彼の現在地は、まわりに心配の山々が描かれていたのです。この自分の「心の地図」を見て、彼はなぜ未来に不安を感じていたのかが分かりました。

心配の山々がまわりを囲っているので、山々の向こう側に何があるのか分からず、不安でならなかったのです。しかも、自分の知っている事だけで、先を見通そうとしているので、想像のしようがありません。考えても考えても、分からないのですから、心配の山々はどんどん高くなって、不安が一層増すことになっていたのです。

カイトは賢者に聞きました。「賢者よ、僕は自分の現在地が分かりました。でも、どうしたら良いのでしょうか？」

賢者は、優しく答えました。「カイト、この「心の地図」を見て、自分の今ある状況が分かっただけでも、不安が減ったことを、まずは感じてみなさい。」

「はい、少し心のモヤが晴れた気がします。でも、この先、どうしたら良いのか分かりません。」

「うん、そうだな。次に気づきたいのは、自分の力で頑張ることも大切な事だが、まわりの人に頼り、力をかしてもらう事も、とても大切な事だという事だ。」

「自分で努力しなくて良いのですか？」

「他の人の意見に耳を傾けてごらん。人の話を聞くこと、これもお主の努力だぞ。心配の山々の向こうに何があるか、少しでも手掛かりを手に出来たら、不安はずいぶん減るものだ。仲間と同じ風景を見て、同じ歩みを共有することが、未来への心強い一歩になるだろう」

「そうか～、人に力をかしてもらう事も、僕の努力なんですね。」

賢者の言葉に深く納得して、カイトは自分の殻を破り、他の人たちと同じ風景を見ることを決めました。

彼が周りの人々の話に耳を傾け、同じ歩みを共有してみると、心配の山々は次第に小さくなり、心配の山々の向こう側が見えるようになってきました。

共有された経験と理解が、彼の心に新しい地図を描いていったのです。

カイトは「心の地図」を見ながら、未知の土地への一歩を踏み出す勇気を手に入れました。

そして、他の人と情報を共有することで得た新しい見方が、彼に期待を膨らませ、未来への道を照らしていくのでした。

彼の不安でいっぱいだった心の中には、少し光が差し込み、未来に対する新たな希望が芽生え始めたのです。

★この物語は、「心の地図」を手にすることで、自分の現在地が分かり、未来に向かって進む手助けとなることを教えています。