いとこの中で誰を助ける?

包括適応度から分かるいとこの優先順位

母親の姉妹の子どもが最も助けたいと思われ、父親の兄弟の子どもは最も助けたいと思われない

遺産を残すなら誰に?では、血縁者により多くの遺産を残す理由が包括適応度の観点から説明されました。

包括適応度では自分の適応度(より多くの遺伝子を残せるか)も大切ですが、血縁者の適応度(自分と同じ遺伝子をある程度持っている為)も考慮されます。

血縁者か非血縁者のどちらを助けるべきか(どちらの適応度を上昇させるべきか)という質問に対しては血縁者と答えれば良いのですが、では血縁者内ではどうなのでしょうか?

特に、遺伝子を同じ割合で共有しているいとこ(12.5%)が複数いるような場合は、人は誰をより助けたいと思うのでしょうか?

ある研究ではいとこを4種類に分類して、誰をより助けたいと思うかを調査しました。

1. 母親の姉妹の子ども
2. 母親の兄弟の子ども
3. 父親の姉妹の子ども
4. 父親の兄弟の子ども

ダメな父親が多い理由:父性の不確実性仮説でも紹介されたように父親(男性)は生まれてきた子どもが100%自分の子どもという確信が持てません。

対して、女性はお腹を痛めて生まれてきた子どもは100%自分の子どもという確信が持てます。

別の視点から考えてみると、周りの人も同様の推測が可能ということです。

つまり、「母親の姉妹の子ども」は「女性→女性→いとこ」という構図の為、「父親の兄弟の子ども」(男性→男性→いとこ)より確実に自分と同じ遺伝子が共有されていると推測できます。

つまり、同じいとこでも、男性(父親)を経ると不確実性が増すわけです。

先ほどの研究では以下のような結果になりました。

個人は「母親の姉妹の子ども」を最も助けたいと思い、「父親の兄弟の子ども」は最も助けたいと思われず、「母親の兄弟の子ども」と「父親の姉妹の子ども」はその間に位置していた(母親の兄弟の子どもの方が僅かにポイントは高い)。

同じ血縁度のいとこ同士でも、父親の不確実性が影響を及ぼしているという証拠です。

参考文献;

Jeon, J., & Buss, D. M. (2007). Altruism towards cousins.Proceedings. Biological sciences,274(1614), 1181–1187. https://doi.org/10.1098/rspb.2006.0366

Gaulin, S.J.C., McBurney, D.H. & Brakeman-Wartell, S.L. Matrilateral biases in the investment of aunts and uncles. Hum Nat 8, 139–151 (1997). https://doi.org/10.1007/s12110-997-1008-4