疲労感漂う三歩(与党事前審査制)
仕事終わりにサクッと更新していける文章力と知識が欲しいと思う家路です。
さて、今回は我が国の政策・立法過程(法案を成立させる過程)の一部である与党事前審査制について紹介です。
読んで字の如しですね。
与党が事前に審査する制度です。
何を?
政策や法案、予算案を。
なんでそんなことをするのか?意味はあるのか?
当然のことながら、意味はあります。なければやってません。
順を追って説明していきます。
与党事前審査制とは、政府が政策案を作成したり法律案を作る場合に与党が国会審議が始まる前に事前にその中身を審査して手を加える一連の流れ(≒制度)のことです。
なので、政府が行う法案や政策案は基本的に国会に提出されたり、執行されたりした時点で与党のお墨付きが得られているということです。(政策案に限って言えば、政府が与党に諮らず実施してしまうこともあります。その場合は後で与党の政策会議(いわゆる部会。これも別記事で解説します)でむっちゃ詰められることもあります。)
事前審査制の細かい流れを追っていきましょう。
まず、ある事由に対処するため政府が政策立案や法律案を作成します。(この時点で与党の一部議員(族議員や重鎮議員)のご意向が入っていることもあります。)
場合によっては案がある程度固まった段階で与党のインナー会議(一部の議員のみが参加できるクローズドな会議。役員会や打合会などとも形容)にかけられます。ここで案がまず政治的に揉まれます。
インナー会議での結果を受け、必要に応じて役所側は修正を施します。
この先の話がすんなり入ってくるために、話が逸れて恐縮ですが少しだけお付き合いください。
基本的に役所(=内閣)から提出される法律案(閣法)と一部の政策案は閣議決定(日本国政府の正式な最高意思決定行為)を経てから国会へ提出されたり執行されたりします。(これも別記事で解説しますが、行政府たる内閣の構造上このような手続きを採ります。)
この閣議を行う具体的な日時について、役所側は長期的・戦略的な視野を以って予め候補日を決めています。(これは役所内の都合です。基本的に与党は関与しません。)
与党側も基本的には政府と同じ側ですので、その候補日についてはそれを尊重します。
ここから本題に戻りますが、基本的に与党事前審査制のスケジューリングはその閣議日から逆算して組まれています。
なので、インナー会議などを経た案をかける次のステージである通称”平場”(出席者を限定しない党内全議員向けの政策会議。)というものがあるのですが、それも既に何となく日程が組まれている状態で事が進んでいきます。
ここで重要なポイントを1つ。
審査対象が法案の場合、役所の人たちは平場までにその案に対して内閣法制局長官の了承を得なければなりません。
これも詳細は別記事で解説しますが、どういうことかというと、審査対象の法案がそもそも法律として最低限の基準を満たしているかどうかが確認されていなければならないということなんです。
内閣法制局長官というのは政府における立法のチェック機構のような存在であり、他の全ての法律や憲法と照合して、政府が作成した法案に問題点(法案の内容についてはあくまで憲法上の問題がないかという点でのみ確認)がないかなどをチェックしています。
ここをクリアせずに与党の平場に提出し、流れに乗っていった後に発覚するととんでもないことになります。マジで与党がブチギレます。大臣以下、役人が上から雁首揃えてみんなの前で謝罪することになります。
本題に戻ります。
なので政府は与党の平場に出す時点で法制局の了承を得ておきつつ、さらにその平場で出た意見を法案に反映させていきます。(ここが重要だったりする。ここがまさに与党事前審査制の中核)
基本は1、2回ですが、必要に応じて平場は複数回開かれます。(Twitterを賑わせているAV新法や経済安保法なんかは複数回やってました。)
平場で了承された法律案は次に政策部門の最上位会議体へと送付されます。(自民党で言えば”政調審議会”(通称、政審)という場。この会議メンバーのトップが、自民党の立法・政策部門を司る政務調査会長です。)
平場できちっと議論をしていて、かつ、政審メンバーへの事前の”根回し”(事前レクや資料送付)を行っていればここは大荒れすることなく普通に通過します。(近頃で言えば、LGBT関係の法案では大荒れしてましたね。)
政策部門での了承が得られた後、与党事前審査制の最後に待ち構えるのが政党としての最高意思決定機関である会議体(自民党で言えば総務会。)です。
政審と一緒で、ここも根回しをしていれば普通に通過します。
ここを通過すると晴れて与党のお墨付きを得たことになり、国会へと舞台が変わっていくこととなります。
付け加えで自民党の話をしますと、総務会を通過した案件については党議拘束がかけられます。(=自民党の議員はその法案について必ず賛成するということ)
国会において党の意思決定に反した行動(採決において反対票を投じるなど)をした議員は(党則における)罰を受けます。自民党から追い出されることも割とあり得ます。
普通の人はまず党議拘束から逸脱することはしないので、国会に提出された時点でその法案はほぼそのまま成立します。(国会の過半数を握っている与党が全員賛成するので、多数決で勝ち確です。)
これが事前審査制の流れになります。
政府(役所)としても、国会に出る前の非公式な場(=与党の政策会議)で(国会審議と比較して)柔軟に立法ができ、かつ、与党の全面支援が受けられる。与党としても、平場において1年生議員から重鎮に至るまで影響力を行使でき、まさに政権党としての特権を享受できる。お互いにWin-Winな”慣習”(ここも重要。法律にも党則にも明記されておらず、先人たちが確立していった我が国の立法過程の”慣習”的な仕組みなんです。)であるのが与党事前審査制なのであります。(明確な証拠が残っておらず、諸説ありますが、始まりは自民党の結党直後から1960年代です。)
次回は与党事前審査制のさらに奥。与党の政策部門について記事を書きたいと思います。(頑張って書きます。)
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