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自立援助ホームにおける私的契約制度:撤廃すべき理由

前回の記事では、自立援助ホームにおける私的契約制度と暫定定員の仕組みについて解説しました。今回は、私的契約制度の問題点に焦点を当て、なぜこの制度を撤廃すべきと考えるのか、その理由を詳しく説明します。

1.経済的負担の不平等

私的契約制度の最大の問題点は、利用者間で経済的負担に不平等が生じることです。措置入所の場合、費用は公費で賄われますが、私的契約の場合は利用者(または保護者)が費用を負担します。この仕組みにより、経済的に困窮している若者が必要な支援を受けられない可能性が高まります。結果として、最も支援を必要としている若者が自立援助ホームを利用できないという矛盾が生じます。

2.支援の質の保証が困難

私的契約制度では、公的な基準や監査が十分に適用されないため、支援の質にばらつきが生じる可能性があります。措置入所の場合、行政による定期的な監査や指導が行われますが、私的契約ではそのような仕組みが不十分です。施設側の裁量が大きくなるため、利用者の権利が十分に保障されない恐れがあり、支援の質が施設ごとに異なることで、適切な支援が受けられない可能性が高まります。

3.行政との連携の困難さ

私的契約制度では、児童相談所などの行政機関を介さずに入所するため、関係機関との連携が取りにくくなります。行政との情報共有が不十分になり、総合的な支援計画の立案が難しくなることから、他の福祉サービスとの連携が円滑に行われず、支援の継続性が損なわれる恐れがあります。特に退所後のアフターケアが不十分になるリスクがあります。

4.施設運営の不安定化

私的契約入所者は事務費の算定対象外となるため、施設の財政基盤を不安定にする要因となります。定員に対して私的契約入所者の割合が高くなると、施設の運営費が不足する可能性があり、財政的な不安定さは支援の質の低下や施設の存続自体を脅かす危険性があります。結果として、自立援助ホーム全体のセーフティネットとしての機能が弱まる恐れがあります。

5.制度の悪用リスク

私的契約制度は、本来公的な責任で対応すべきケースを私的な契約に転嫁する手段として悪用される可能性があります。行政が措置入所すべきケースを私的契約に誘導し、公的責任を回避する可能性や、施設側が「扱いやすい」利用者を選別して受け入れる可能性があります。このような悪用が広がると、最も支援を必要とする若者が排除される事態につながりかねません。

結論:公的支援の拡充が必要

以上の理由から、私的契約制度は撤廃し、すべての入所を公的な措置によって行うべきだと考えます。その上で、以下のような対策が必要です。

  • 措置入所の基準の見直し:現在の基準では対応が難しいケースにも柔軟に対応できるよう、基準の拡大が求められます。

  • 緊急入所の仕組みの整備:児童相談所を介さずとも緊急的な受け入れが可能な公的な仕組みを構築し、即時対応力を高めることが必要です。

  • 自立援助ホームの増設と機能強化:需要に応じて施設数を増やし、多様なニーズに対応できるよう機能を強化します。

  • 財政基盤の安定化:暫定定員制度を見直し、安定した運営が可能な財政支援の仕組みを整備します。

  • アフターケア体制の充実:退所後の支援を充実させ、継続的な自立支援を可能にします。

私的契約制度の撤廃は、一時的には利用者の選択肢を狭めるように見えるかもしれません。しかし、長期的には公平で質の高い支援をすべての若者に提供することにつながります。自立援助ホームが真に「最後の砦」としての役割を果たすためには、公的責任のもとでの運営が不可欠であると確信しています。

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