5/23 ニュースなスペイン語 ¿Explicaciones de qué?:説明?何の?
あぁ、やはり、このお方は何も分かっていないのだな、と思った。
現在、一時帰国中でガリシア州サンシェンショ市に滞在しているフアン・カルロス1世(Juan Carlos I)のことである。
記者団に、数々の「不規則なこと(irregularidad(もちろん、「スキャンダル」の婉曲表現))」について、説明するつもりはあるのか、と尋ねられて、フアン・カルロスが口にしたのが、タイトルの「説明?何の?」だ。
国王は憲法56条(Constitución Artículo 56)で「国家の長(Jefe del Estado)」と定められているが、その国家の構成員たる国民の求めていることが、全く、分かってない。
日本時間の月曜日、フアン・カルロスは息子であり、現国王であるフェリペ6世(Felipe VI)と首都マドリードで会談することになっている。
(国王である)息子に何とか言うか(Qué le iba a decir a su hijo)――。記者団からはこんな質問も飛び出したが、フアン・カルロスは、
私が息子に何と言うかってのはどういうことだ(¿Cómo que qué le voy a decir?)
とか、
あなたなら、息子さんに何と言う(¿tú qué le dirías a tu hijo?)
と逆質問。
まぁ、こんな質問をする記者も記者だが、記者たちの質問に木で鼻を括るような答弁を繰り返すフアン・カルロスは救いようがない。
それでいて、フェリペ6世には「非常に会いたい(muchísimas ganas)」、親族には「たくさんの抱擁(muchos abrazos)」とおっしゃる。
フェリペ6世は、フアン・カルロスが退位して、国外に隠遁している間、地に堕ちた王室の品位や信頼を回復させるべく奮闘してきた。フアン・カルロスのこうした一連の発言は、フェリペの努力を無にしかねない。
在位中のスキャンダルについての訴訟は全て取り下げられたのだから、確かに、元国王は司法上はまっさらな身だ。国民党(PP)はこのことを根拠に元国王の帰国を擁護(defiende)する。
しかし、スペイン社会労働党(PSOE)、とりわけ党首であり、政府の長(Jefe del Gobierno)であるペドロ・サンチェス(Pedro Sámchez)が要求する、なぜ2年もの間、国外にいたのか、などの説明(explicaciones)に、もし、フアン・カルロスが応じていれば、スペインの国民や政府との関係はもっと快方に向かうはず。
まぁ、こんなこと分からないはずがないわけで、やはり、釈明するということは、自らの過ちを認めることになるので、そこは、元国王のプライドとして、死守したいところなのか……。
写真は若かりし頃のソフィア元王妃(左)とフアン・カルロス1世。まさか、晩節をこのような形で汚すことになるとは、本人もまわりも思ってはいなかったかもしれない。