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9/13 ニュースなスペイン語 Víctimas de violencia sexual:性被害者
タイトルは違うけど、昨日の続き。
今年の6月に可決、8月に施行された「男女雇用均等法(la ley de paridad(以下、「均等法」とする))」に「技術的ミス(error técnico)」が見つかり、本来救済されなければならないカテゴリーに属す労働者らを簡単に解雇できてしまうという、本末転倒な事態が発生している――。
詳細は昨日の小欄に譲るが、「本来救済されなければならないカテゴリーに属す労働者」については、以下におさらいしておこう。
① 事故や重病、または入院をした親族の介護のために5日間の休暇申請を新たにした労働者(los trabajadores que pidan acogerse al nuevo permiso de cinco días por cuidado de un familiar tras un accidente, enfermedad grave u hospitalización)
② 仕事と家庭を両立すべく、勤務時間やシフトの変更、もしくはテレワークを申請した労働者(a quienes soliciten una adaptación de jornada con cambios de horarios, turnos o el teletrabajo para poder conciliar su vida laboral con la familiar)
どうしてこのような重大な条文がすっかり抜け落ちてしまったのか。
記事では、いくつかのミスの積み重ねの結果(El fallo es el resultado de varios errores acumulados)として、不記載の経緯を追っている。
発端は、小欄でも度々取り上げてきた「トランスジェンダー法(Ley Trans)」にさかのぼる。
2023年6月28日や29日などの小欄でも触れたが、同法は、その名が示す通り、性的少数者の権利保護などを理念に掲げていて、平等省(Ministerio de Igualdad)の肝いりの法案だった。
トランスジェンダー法には、しかし、性的被害者の解雇は無効とするに条項が含まれていなかった(no contempló que los despidos de las víctimas de violencia sexual fueran declarados nulos)という。
そこで、労働省(Ministrio de Trabajo)は事態を重く見て、すぐさま、この不記載を修正すべく、性的被害者の解雇無効に関する条項を組み入れた。
その際、労働省は上記の①と②の労働者にも解雇無効の権利を拡大したという。
ん〜、ここまでは、問題なさそう。
で、話し変わって均等法は、というと……
平等省(Ministerio de Igualdad)は、今年6月に可決された均等法を官報(BOE)に掲載する際、性的被害者の解雇無効の一節を加えたのだが、その時、参照していたのが、あろうことか、労働省が加筆修正を加える前の、つまり、①と②への言及がまだ施されていない版のトランスジェンダー法だった(tomó como base el texto de la 'ley trans' de 2023)という。
これはちょっとした確認をすれば防げたであろうミス。
この単純ミスには、野党である国民党(PP)から批判が噴出していて、「平等省からはまたもや雑な仕事が出てきた(una chapuza más del Ministerio de Igualdad)」と言われる始末。
これは当然の批判ではあるが、はて、「またもや」とは?
2022年11月17日や2023年1月30日の小欄でも触れたが、いわゆる「ハイはハイだけ法(ley 'solo sí es sí')」でも、平等省はしくじっていて、本来、従来法より厳しく性加害者らを罰するはずだったのに、曖昧な条項により、何と、加害者たちの減刑ラッシュが巻き起こり、中には、刑期の途中で釈放される混乱が続出した。
さらに、トランスジェンダー法でも、平等省はやらかしていて、心と身体の性自認が一致しない人たちを、従来法よりも、早急に救うべく、諸々の手続きを簡素化したことが抜け穴(agujero)になってしまい、これを悪用した罰則逃れが発生している(8月24日の小欄を参照のこと)。
均等法も、トランスジェンダー法も、そして、"ハイはハイだけ"法も、本来の理念・理想は高いものの、これとは裏腹の結果を招いてしまったが、その原因がいずれも法案を策定する段階のミス。
スペインは全く弛んどるぞっ!と思ったが、日本でも「日本、法案、ミス」と検索すると、出るわ出るわ、大小様々な法案ミスを報じる記事にぶち当たる。
所詮、人間のやることだからミスはつきものとは言え、はやり、不備のある法律で裁かれるのは御免被りたい。
写真は均等法のイメージ。
なお、小欄を書いていたら、1990年から2000年までの間、ペルー大統領を務めたアルベルト・フジモリ(Alberto Fujimori(写真))が12日、長きに渡る闘病の末、亡くなったという記事が入ってきた。享年86歳。フジモリは日本といろいろ関係があった人物。今後、稿を改めて、触れていこう。
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出典https://www.rtve.es/noticias/20240821/error-ley-paridad-despidos-adaptacion-jornada-laboral/16223296.shtml