3/21 ニュースなスペイン語 Pateras:小型船[3月22日 加筆版]
ここ1~2週間、「小型船(patera/cayuco)」という語をニュースで見聞きする機会が増えた。Cayucoは、辞書には「丸木船」という訳が載っているが、実際には写真のようなボートを指す時にも使われる。
スペインのニュースで「小型船」という語は、ほぼ、アフリカからの移民(migrante)関連の文脈で用いられる。移民たちはアフリカの西海岸から、最短距離(それでも100km)の海路を通って、小型船で、スペインのカナリアス諸島州(Islas Canarias)の島々を目指す。ここ1週間で報道されている移民の数を単純計算すると、概ね、380名くらい。ひとつの船に40~70名くらい、多い時は100名を超える人々が乗船する。困難を経て無事たどり着ければ良い方で、多くの人が船の転覆などで命を落とす。カナリアス諸島の海岸に身元不明の遺体(cadáver/cuerpo sin vida)が漂着することもある。
海難救助船タリア号(Guardama Talía)は連日のように、カナリアス諸島周辺で漂流している小型船を見つけ、救助に向かう。そして多くの場合、アルギネギン埠頭(muelle de Arguineguín)に連れてこられ、そこで、赤十字(Cruz Roja)のスタッフたちが、救助された移民たちのケアにあたる。
一昨日の金曜日に、アルギネギン埠頭で、重篤な低体温症(hipotermia severa)のため、心肺停止(parada respiratoria)となった二歳の女の子を蘇生する(reanimar)救急隊員たちの映像がニュースに流れ、反響を呼んだ。
昨年、カナリアス諸島に到着した移民は3万2000人ほどと言われていて、移民危機(crisis migratoria)なる言葉も聞かれた。しかし、カナリアス諸島に到着したからといって、彼ら移民がイベリア半島に入れる可能性は極めて低く、カナリアス諸島の施設などに収容されることがほとんどだ。カナリアス諸島の住民の間には、こうした待遇を受ける移民たちに対するヘイト・クライム(delitos(crímenes) de odio)の感情がくすぶっている。
カナリアス諸島州もスペイン政府に現状改善のための対策を求めているが、現在のところ、抜本的な解決策は提示されていない。スペインの抱える大きな問題のひとつだ。
写真はCanarias紙(2020.10.28)より。写真は小型船に乗った215名の移民が救出されたときの様子。
[3月22日 加筆]記事で触れた女の子、ナボディちゃん(Nabody)が21日、息を引き取ったとの報道があった。心よりご冥福をお祈りします。