5/2 ニュースなスペイン語 Máquina del fango:泥塗りのシステム
ペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)が4月30日に続投宣言をして以来、方々でサンチェスの発言の分析や批評がされているが、今回は、サンチェスが国営放送テレビ(TVE)に出演した際のいくつかの発言を紹介しておこう。
1.Ella fue la primera que me dijo que no dimitiera(妻は私に辞任しないでくれと言った最初の女性だった)
妻とは、もちろん、ベゴーニャ・ゴメス(Begoña Gómez)のことで、コルド案件(caso Koldo)にまつわるグレーの噂が出ていて、サンチェスに自らの進退について、5日間の熟考(reflexionar)をさせた張本人でもある。
まぁ、自らが潔白と信じているからこその発言なんだろう。
サンチェスは、妻ベゴーニャに対する右翼団体による告発が、我慢の限界点だった(la gota que colmó el vaso)としている。
2.Maquinaria del fango(泥塗りのメカニズム)
サンチェスは自らと妻に対する批判やネガティブキャンペーン(campaña de difamación)を泥(fango)とも呼んでいて、この表現の伏線にもなっている。
「泥塗りのメカニズム」とはイタリア人小説家ウンベルト・エーコ(Umberto Eco)の用語で、「あらゆる手段を使って敵対勢力の評判を傷つける報道」を指す。
サンチェスに言わせれば、それはウソ(mentira)やけなし合い(crispación)、陰湿な罠(insidia)、それに相手を貶める言動(difamación)のこと。
そして、エセメディア(pseudo medios)や証拠もないのに人の名誉を毀損するために訴訟を続ける団体や政党が台頭してきた(el auge de los asociaciones que difaman y tratan de judicializar casos sin pruebas y de los partidos)とした。
そして、5日間にも渡り、公の場から姿を消したのは、10年前から続く(desde hace 10 años)こうしたネガティブキャンペーンに耐える価値があるかどうか(si merecía la pena soportar el acoso)を判断するためだったという。
3.No hay teatro(劇場的な意図はない)
従って、この熟考期間は、何ら、政治ショウではなかったとし、政治的な戦略(algún tipo de estrategia política)もなかったとした。
4.Autocrítica(自己批判)
その一方で、自らに対する批判も忘れていない。
それは、メディアなどを通じたハラスメント(acoso)やガセネタに対して、もっと早く対処すべきだった(debía haber actuado antes contra los bulos)という点。
そして、スペイン社会(sociedad)、マスコミ(medios)、そして、各政党(resto de partidos)に対して、民主主義のために、泥塗りのメカニズムと闘おう(combatir)と呼びかけた。
4.Han sido cinco días que no olvidaré en lo político ni en lo personal(この5日間は私の政治人生でも、プライベートでも決して忘れることのないものだった)
首相の座に留まろうと決心した(le hizo decantarse por seguir en el cargo)のは、スペイン社会労働党の委員会後の、土曜日の早朝(la madrugada del sábado después del Comité Federal del PSOE)だったらしい。
なぜなら、その時、党をあげてサンチェス支持の集会を呼びかけたからで、サンチェスの言葉を借りるなら
民主主義を守るための、絶え間なく起こる社会運動、書き込み、様々な活動(todas las sucesivas movilizaciones, escritos, actos de distinta índole en favor de proteger la democracia)
が辞任を思い留まらせたということらしい。
5.Iremos y explicaremos lo que tengamos que explicar(私たちはそこにおもむき、説明すべき点はしなければならないと思っている)
「私たち」とはサンチェスと妻ベゴーニャのこと。
そして、「そこに」とは、現在、上院(Senado)で行われている、コルド案件の証人喚問(comparecer)のこと。
ベゴーニャは今のところ証人の呼び出しリストに名は上がっていないが、招集がかかれば逃げも隠れもしない、ということなのだろう。
今後、この混乱を収束させるために全ての政党と協議する用意がある(va a hablar con todos los partidos para poner fin a esta situación)というが、また始まるであろう容赦ないネガティブキャンペーンに心が折れないように。
写真はインタビューに臨むサンチェス(左)。
出典
https://www.rtve.es/noticias/20240429/sanchez-gobierno-entrevista-tve/16082369.shtml