【政策⑩】賃上げと生産性向上。鶏がさきか卵がさきか。
前回、最低賃金引き上げの重要性に関して、最低賃金が近年の賃上げの原動力となっているという点を中心にお話しました。
みなさんの中には、最低賃金を引き上げると、企業が労働者を解雇し、失業者が増加してしまうのではないかと心配される方もいらっしゃると思います。
日本でも注目された、韓国の最低賃金引き上げ
実際韓国の文在寅前大統領が、大統領選挙のときの公約であった最低賃金の引き上げを行った際、日本でもその影響で失業者が急増していると大きなニュースとなりました。
ただ、デービッドアトキンソン氏の「最低賃金「韓国の大失敗」俗説を信じる人の短絡」でも、
と検証されています。そして下記の図のように、韓国は失業率が増すどころか、1990年代後半以降日本を上回る速度で経済成長を続けています。一人あたりのGDPは、2020年代前半には韓国に抜かされる可能性が大きいほどまでとなっています。
日本は今後、下記の図のように急速に生産年齢人口が減少する「大人手不足社会」です。そしてその影響もあり、有効求人倍率も1を上回る数値が続いています。売り手市場の労働市場で、賃金を上げられない企業が退場し、新たに給料が良い会社へ人が移動していく。このある意味当たり前の流れ、新陳代謝を作るために、最低賃金引き上げが必要不可欠だと考えます。
最低賃金は全国一律にする必要がある
そして、他に大事なこととして、地方と都市の賃金格差を埋める必要があります。現在最低賃金は、最高の東京都で1072円と、最低の7県792円との間で実に280円も異なっています。都会のほうが物価が高いと言われていますが、地方も車などが必要で、その維持費を賄う必要があるなど決して無視できない生活コストがかかります。
今のままの賃金格差だと、地方から東京圏への人口流出は止まらず、地方の衰退がさらに進んでしまいます。
少し古いデータですが、2018年の東京圏への人口流入は13万人近くに登りました。この図からも分かるようにかなり極端な人口の流出入の形になっていると思わざるを得ません。
このままこの流れが変わらなければ、地方は生活を維持するのも困難となる地域が今まで以上に増えてしまうでしょう。
どのような社会、地域でも多様性は力です。同じところに同じように人々が住んでいても、新たなイノベーションは生まれづらいでしょう。つまり、活力ある地方がなければ日本全体の勢いが弱くなってしまうのではないかと思います。
今からでは遅すぎるかもしれません。しかし、全国一律の最低賃金が、この流れを少しでも食い止める第一歩となればと考えます。
鶏がさきか卵がさきか
通常の経済学の世界では、労働生産性が上がった企業が、その余力で賃上げをすると言われていました。しかし、この流れを待ち続けて約30年、実質賃金は低下し続けました。いい加減、別のアプローチを考えるべきときが来ているのではないでしょうか。鶏がさき卵がさきかの話と同様に、賃上げがさきにありその後生産性が上昇する世の中を試してみようではありませんか?仮に上手くいかなくとも、このまま座して死を待つよりよほどマシなのではないかと思えてなりません。
それでは、賃金が上がる社会になったあと何が必要か。一新循環ではその後、心の底から安心できる社会保障制度を作るために、消費税の税率引き上げをメインとした政策を唱えています。国民の理解が容易には得られないであろう消費税増税。それがなぜ必要か?そしてなぜ、新興政党があえて不人気な政策を訴えているのか。次回以降ご説明していこうと思います。