年に一度は「読書合宿」という贅沢な時間を
先日、読書合宿をしてきました。
「読書合宿」とは、読書をするためにホテルや旅館に一定期間こもること。つまり、本を読むための「おこもりステイ」です。
わたし達夫婦は、少なくとも年に1回は読書合宿をおこなっています。始めてから、もう4年くらいになるかな。
今は遠出がしにくい世の中になってしまったけれど、読書合宿は近隣のホテルや旅館でできるし、しかも1日中こもるので、時勢にもあっているように思います。
ということで、「最近じっくり本を読めてないなあ…」という人はもちろん、気分転換をしたいなあという人も、ぜひこの「読書合宿」を実践してもらえたらと思って、わたし達流のやり方やポイント、過去に行ったことのあるおすすめの宿をまとめます。
ちなみに「合宿」と言いつつ、ひとりで行くのもとっても良いと思います。語感が良いので「読書合宿」という言葉を使っているだけですので、あしからず。
読書合宿の1日の流れ
「読書合宿って、どんな過ごし方をするの?」というところを、まずはご紹介します。
これから書くのは、わたしのいつもの読書合宿の流れです。
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読書合宿が開催される1週間前ぐらいから、「どの本を持っていこうか」と悩む日々が始まる。
毎回テーマを決めて、数冊の本を用意する。今回は2泊3日だから、3冊持っていこう。よし、今回のテーマは「ずっと読み直したかった本」に決定。そう決めて、自分にとって大切な本達を2冊チョイス。もう1冊は初見の本だけど、どうにも日常では読む勇気が湧き出てこなかった分厚い1冊に決定。
当日は、チェックイン時間の15時ぴったりに宿に入る。なるべく長い時間を満喫したいから。
部屋に入るやいなや、わたしの目に飛び込んでくるのは、大きな窓の中で風に揺れる濃い緑色の森。下を見おろすと川が流れていて、水が通り過ぎてゆく音が部屋の中まで聞こえてくる。
絵画みたいな窓。そこに面したデスク。手前には、2人がねそべっても余りあるほどの大きなL字型ソファ。
「読書をするのに最適な空間!」と、心が躍る。
一通り部屋を探索し終えたら、部屋に用意されていたコーヒーマシンでコーヒーを淹れる。さっそく本をリュックから取り出し、持ってきた中から1冊選び携えて、大きなソファへと沈む。
そこからはもう、読書の世界に没入する時間のはじまり。
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本を読み始めて、どれくらいの時間が経っただろう。ずっと同じ姿勢だったせいか、体を起こしただけで肩がぱきぱきと音を響かせた。
「よし、温泉行こう」
わざわざ読書合宿で本を読む理由のひとつが、温泉だ。さながら交互浴のように、読書、温泉、読書、考え事、温泉…を繰り返すしあわせ。
他にも、読書合宿には利点がある。
家事をしなくていいこと、仕事を忘れられること(仕事はしないのがマイルール)、つまり日常を離れて、読書を全力で味わう環境が整えられることだ。
翌日も、朝から読書。
読書合宿の中日はたいてい、散歩がてらお昼を外で食べる。その帰りに、カフェやコーヒースタンドで飲み物をテイクアウトして、また部屋にこもる。
ずーっと同じ場所で読書をしていると、少し飽きがくるので、バルコニー、部屋のソファ、部屋のデスク、ホテルのラウンジ…といったように、いろんな場所に移動しながらひたすら読む。複数の「本を読める場所」があるかどうかも、宿選びのポイントだったりする。
今回の宿は、部屋の中に3つの場所があった。
ソファ、窓に面したデスク、部屋の奥に位置するデスク。一応ラウンジもあったけれど、ご時世もあって今回は部屋にこもっている方が安心して読めそうだったので、そうすることにした。
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夕食は、たいてい宿で食べる。
直前まで本を読み、準備してもらった美味しい夕食で体と心を満たして、また本の世界へ戻る。こんなに最高な流れがあるだろうか(いや、ない!)。
ご飯を食べている間は、読んだ本の内容や、そこから考えたことなどを、夫と報告しあう。相手が読んだ本の要点を教えてもらえるので、自分の思考に新しい風が吹いて、それも気持ち良かったりする。
部屋に戻って、今度は本ではなく、ノートを開いてみる。
今日考えたこと、これからやっていこうと決めたこと、スラスラとペンを走らせる。これから先、日々の忙しさに追われて、ここで考えた大事なことを忘れないように。未来のわたしが、思い出せるように。
思えば、大切な決断は、こういう時間に生まれることが多い。満たされた自分と、そこで考えたこと達が、わたしを今の場所まで連れてきてくれていると思う。
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最終日、チェックアウト時間ギリギリまで本を読む。
なるべく長く楽しみたいので、レイトチェックアウトが選べる宿ならば、遅い時間まで居られる方を選んだりもする。
こんな感じで、だいたい2泊、どうしても時間がとれない時は1泊。でもやっぱり、じっくり味わうなら2泊をおすすめしたい。
こうして読書合宿を終えて日々に戻ると、しばらくは幸福感で満たされた状態で、毎日を過ごせる。
でも、結局はまたせわしない日々に埋もれて、この多幸感も少しずつ薄れてしまう。
だからこそ、少なくとも年に一度は、わたしには読書合宿が必要なのだ。
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と、わたしの読書合宿の流れはこんな感じです。
ここまででご紹介した内容も含めて、ポイントだけ以下にまとめてみました。
【読書合宿の流れまとめ】
・本は難易度によるけど目安1日1冊ぐらい
・チェックインからアウトまで時間をフル活用
・日中はバルコニーなど外で読むのも気持ちいい
・近隣にコーヒーを買いに行くのもいい
・読書に疲れたら温泉へ
・朝食と夕食は宿で食べる
・考えたことをノートに記しておく
読書合宿でのゆるやかなルール
さて、わたしの読書合宿には、2つのルールを設けています。
もちろん厳格なルールってわけじゃなく、「なるべくしないようにしたいな」という感じの、ゆるやかなものだけれども。それが、こちら。
【ゆるやかなルール】
・仕事はしない
取引先や同僚には事前に休むことを伝えて、メッセージアプリ等はすべて通知をオフに。もちろんPCは持っていかない。
・スマホやテレビは見ない
デジタルデトックス的な感じも兼ねているので、スマホは極力手放しておく。テレビも観ない。
読書合宿は、自分の内側と深くつながる時間であり、自分で自分を満たす時間にしたいなと思っていて。だからこそ、なるべく本以外からの情報は遮断して、本の内容に集中できるようにしています。
というか、そもそも「スマホをずっと見ていたい」とか「テレビを観たい」という気持ちには、ならないんですよね。読書合宿中は。我慢をしなくとも、それらから離れる方が自然である、という感覚になります。
ちなみに、わたし達は夫婦で行っていますが、これらのことは事前に共有して、お互いに相手の読書時間を遮らないようにしています。相手が部屋でテレビを観ていたり、SNSやネットニュースで見た情報を伝えてきたりしたら、落ち着いて読書時間を味わえないので…!
わたしの読書合宿のポイント
ルールってほどではないけれど、わたしが毎回決めていること、つまりは「わたしの読書合宿のポイント」も、3つご紹介します。
【ポイント】
1)テーマを掲げる
2)タイムスケジュールを埋めない
3)ゆったりとした服を着ていく
1)テーマを掲げる
毎回「今回の読書合宿は、こういうテーマにしよう」と、何かひとつテーマを掲げるようにしています。
例えば先日行ってきた今年の読書合宿では、以下のようなテーマでした。
【今年の読書合宿テーマ】
▼わたし
じぶんジカンでこれからやりたいことを考えるために、「読み直したいな」と思っていた本/「読みたいな」と思いつつ読めてなかった本を読む
«選んだ本»
古賀史健『嫌われる勇気』
エーリッヒ・フロム『愛するということ』
ケイト・マーフィ『LISTEN』
▼夫
『背教者ユリアヌス』の世界にどっぷり浸かる(複数巻に渡るのだけど、おもしろすぎるから一気読みしたい)
«選んだ本»
辻 邦生『背教者ユリアヌス』の三巻と四巻
(一巻と二巻は読了済)
たいていわたしは仕事に関連するテーマで、夫は一気読みしたい小説にどっぷり浸かることがテーマです。ひとそれぞれ。
2)タイムスケジュールを埋めない
宿に泊まるというと「旅」的な側面もあるので「観光しなきゃ」という気持ちになるかもしれないのですが、わたし達はあまり観光しないことが多いです。
というのも、あくまでメインは「読書をすること」なので、観光までスケジュールに入れてしまうと、「あれ、意外に本を読む時間ないな…!」となりやすいから。
何をするとか、どこへ行くとか、そういった旅程表とかタイムスケジュールはほとんど考えず、観光はまたの機会にして、時間に追われずに本を読めるようにしています。
今はなかなか観光も気軽にできない時勢でもあるので、読書に集中するのがおすすめです。
3)ゆったりとした服を着ていく
ストレスフリーで本を読みたいので、なるべくゆったりとした服装で行くことにしています。
だいたい部屋にこもっていることがほとんどなので、部屋で過ごしやすい服装で。わたしはだいたい、ぺらりと一枚羽織ればOKなワンピースで臨みます。
読書合宿をする場所の選び方
ここまで「読書合宿の過ごし方」について書いてきましたが、大前提として場所選びがとても重要です。
なぜなら、ほとんど宿の部屋にこもるため、かなり部屋のスペックや、宿の雰囲気による影響が大きいから…!
読書合宿に適した場所を選ぶ際に、わたしが重視していることは、こちら。
【選ぶポイント】
・1日中こもっていたいと思える部屋(広い・窓が大きい・景色が良い)
・くつろげるソファがあること
・ラウンジなど部屋以外で読める場所があれば最高
とにかく「1日中こもっていたいと思える場所かどうか」が重要です。
わたしの場合は「広い」「窓が大きい」「景色が良い」が譲れない条件。たいてい洋室か、和洋室を選ぶことが多いです。2人で行くのだけど、広さがほしいので3〜4人用の部屋に泊まることも多いかな。あと、部屋にソファは必須で、バルコニーにもソファがあったら最高。居心地の良いラウンジのあるホテルも嬉しい。
これはひとそれぞれ違うと思うので、自分にとって「こもっていたいと思える場所」を探してみてください。
過去に読書合宿をしたことがあるおすすめの宿
これまでにわたし達が読書合宿をしたことのある宿で、おすすめできるところもご紹介しておきます(関東近郊ばかりですが)。
星のリゾート箱根界
今年の読書合宿場所でした。
実はだいぶ前に一度行ったことがあって、「神奈川県内でどこに行こうかな?」と考えたときに、もうここ以外思いつかなかった…!
個人的にはちょっと(というかだいぶ)お高いですけど、遠くへの旅行ができない今、その分を費やしていると考えれば…!あと、ご飯もおいしいし、コスパとしては良いと思ってます。
部屋から見える景色も、部屋のソファも、窓に面したデスクも、読書にぴったり。読書合宿におすすめできる宿です。
SORANO HOTEL
東京・立川の、昭和記念公園の前にあるホテルです。去年の読書合宿場所でした(去年は立川の方に住んでました)。
ここはバルコニーにソファがあって、外を眺めながら本を読むのが気持ち良かった!
部屋の中にもソファとデスクがあるのと、ホテル1階のラウンジではフリードリンクを飲みながら本が読めるのも良かった。
ホテルのご飯はあまりテンションが上がらなかったのですが(笑)、ホテル自体が「グリーンスプリングス」という商業施設内にあって、レストランやカフェもたくさんあるので、ホテル以外のご飯の選択肢も多いです。
あと、温泉はないですが、お部屋のお風呂は広かった!
伊豆今井浜東急ホテル
2019年に行った、静岡のホテルです。オーシャンビューのリゾートのような感じ。窓から見える景色はこちら。
まだこんな世界になる前だったので、「伊豆クレイル」という観光列車に乗って行きました。伊豆クレイル、今はもうなくなっちゃったみたい。また観光列車に乗れる日が来るといいな。
このホテルは、ホテル内に「ブックカフェ」があって、そこが居心地良かったです。本や写真集も並んでいました。
当時ブックカフェが21:30までだったので、その時間ギリギリまでそこで本を読んだり。
星のや軽井沢
こちらも以前行ったことのある宿。お部屋が一棟ずつになっているので、他の宿泊客の存在をあまり感じることなく、のんびりできました。
特にバルコニーのソファが大きくて、気持ちよく本が読めます。宿泊施設内も広く、座りながら景色を眺められる場所も多いので、気分を変えて本を読むにはとても良いかも。
とはいえ、わたし達にはちょっとお値段的にハイグレード。コスパ的にも最初に紹介した「箱根 界」の方が、わたし達は気に入ってます!
東京ベイ有明ワシントンホテル
都内で、1人で気軽に読書合宿をするなら、ここも良いかも。わたしは一度行ったことがあって、その時は「読書合宿」ではなく「思考合宿」として、1人でひたすら「これから何やろうかな!」をノートに書き出すために訪れました。
デスクの前の窓から見える有明の景色が、気持ちの良いお部屋。とはいえまあビジネスホテルなので、部屋は普通のこじんまりした感じです。
でも、実はわたしが運営している『じぶんジカン』の最初のノートは、ここで考えたことをきっかけに生まれています(!)。そういう意味でも、思い出深い宿です。
心の余裕を生み、これからに目を向ける「読書合宿」という時間
「本を読む時間をとりたいな」と思いつつ、日々の忙しなさに流されてなかなか時間を確保できなかったり、自分の頭の中で思考を広げるための「余白」が埋まってしまったり……。
そんな人には、1日とか2日とか、できればもっと時間をとって、「本」と「思考」だけに贅沢に時間を使う「読書合宿」がおすすめです。
立ちどまって「今」を味わう時間があるからこそ、明るいこれからをイメージできるようになる。そんな風に、わたしは感じています。
このnoteが、誰かの読書合宿のきっかけになったら嬉しいです。
おわり
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