個人でエッセイ集をつくる方法
「個人でエッセイ集をつくるのって、めちゃくちゃ楽しい」
文章を書くのが好きで、それを誰かに受け取ってもらえることが嬉しくて。
このnoteに毎週エッセイを更新しているのですが、やっぱり「紙の本」で一冊にまとめること、そしてそれを誰かの日々の中に迎えてもらって、お部屋の本棚に並べてもらえることは、Webに更新するのとはまた違った喜びを感じます。
「個人でエッセイ集をつくってみたい」と思っている方はきっといると思うし、この楽しさをもっと多くの人に味わってほしい。
そんな想いで、今回は個人でエッセイ集をつくる方法をまとめました。
全工程を細かく記したので、めちゃくちゃ長いです。必要なときに、必要な見出しを読んでいただけたらと思います。
前提|こんな方に向けて書いています
このnoteは、先日発売したエッセイ集(文庫本)制作をベースに綴っています。
今回まとめた方法は、「わたしはこうしてるよ」の一例だと思ってもらえたら幸いです(他にも制作方法がたくさんあるため)。
エッセイ集のつくり方
エッセイ集づくりの工程に沿って、何をどうやって決めていくのか、まとめます。
全体の作業工程がイメージできていると、たぶんかなり制作しやすくなる(初めてつくった時はイメージできなさすぎて大変だった……!)ので、ざっと把握してから取り掛かるのがおすすめです。
それぞれの詳細をご紹介していきます。
1|どんなエッセイ集をつくりたいのか決める
● 内容やテーマを決める
最初に軸となるテーマを決めると、進めやすいです。
たぶん「エッセイ集をつくりたい」と思っているとしたら、なんとなくテーマのイメージが頭の中にあるのではないかと思います。
今回わたしは「自分に無理なく はたらく暮らす」というテーマで一冊をつくろうと決めました。
● 規格や仕様を考える
内容以外に「どういう本をつくりたいのか」もイメージしておくのがおすすめです。決定しなくても大丈夫ですが、イメージがある方が進めやすいです。
ちなみに今回のわたしのエッセイ集は、こんな仕様です。
書籍の中の紙は「淡クリームキンマリ」という黄色っぽい紙が一般的。真っ白な紙よりも、文字が読みやすいです。
紙選びについては、次の項目の「お願いする印刷会社を決める」と並行して行うのがおすすめ。印刷会社さんから紙サンプルを取り寄せて検討しましょう。
● お願いする印刷会社を決める
仕様のイメージが固まったら、お願いする印刷会社も決めちゃった方が進めやすいです。
というのも、印刷会社さんによって「印刷可能サイズ」や「入稿データの形式」「使える紙」が変わってくるからです。
個人の少数部冊子印刷の場合は、ネット印刷が手軽で、値段的にもおすすめです。
ちなみにわたしは「グラフィック」さんに、お願いしています。
他にもネット印刷はたくさんあるので、オリコン実施の「ネット印刷通販満足度調査(2023)」の総合ランキング上位の会社を掲載しておきます。
● 発行部数をイメージする
仕様と発行部数が決まると、印刷会社さんでざっくりとした見積もりを取れます。
わたしはだいたい100部〜300部単位で頼むことが多いです。
初版発行部数は、以下の視点から考えています。
ここはその人の実績や、読者・お客様の数、知名度などによって大きく変わります。自分の見通しに合わせて考えましょう。
● 発売日を決める
先に発売日を決めた方が、スケジュールも組みやすいし、気合いも入るので、わたしはいつも先に発売日を決めちゃいます。
すでに書いたエッセイをまとめるのか、ゼロから書くのか、また確保できる作業時間の量や作業スピードにもよるので一概には言えませんが、最低でも数ヶ月〜一年ぐらいの時間をかけて進めるイメージです。
わたしの場合は「すでに書いたエッセイ」を選定して再編集するスタイルなので、だいたい発売日の半年前ぐらいから作業を始めます。
● 一人でつくるか、誰かとつくるか決める
個人のエッセイ集をつくりたい場合、つくろうと思えば一人で最初から最後までつくれます。
わたしも最初のエッセイ集は、90%一人でつくりました(最後の誤字脱字チェックだけ、そういうのが得意な夫にお願いしました)。
自分だけでつくるのは、自分のスケジュールだけで動けるというメリットがあります。
一方で、表紙を素敵なものにしたいとなるとデザイナーさんに頼んだ方が良いかもしれませんし、読みやすい構成や文章にしたい場合は編集者さんと一緒につくった方がいいかもしれない。
一人でつくるか、誰かとつくるか、最初に決めてからスタートしましょう!
● どこで販売するのか決める
つくったエッセイを販売する場所についても、並行して考えておきましょう。くわしくはのちほど書きますが、最初からイメージしておくのがおすすめです。
2|原稿を書く
なにより大事な、エッセイ原稿の執筆をしていきます。
原稿を書くのは、慣れているツールで良いと思います。
わたしの場合は過去のブログやnoteに公開した文章を、いったんGoogleドキュメントにコピペして、読みやすくなるよう再編集したり追記修正したり。
Googleドキュメントにコピペし直している理由は、原稿の管理のしやすさと、あとは今回は編集者さんに編集をお願いしたので、二人でやりとりしやすい点です。
自分の書きやすいツール、管理しやすい形式で、原稿執筆を薦めましょう。
3|デザインを決める
原稿を書き進めるのと並行して、エッセイ集のデザインも決めましょう。
● データ作成のツールを決める
印刷会社指定のデータ形式を参考に、何のツールでデザインデータを制作するか決めます。
依頼する印刷会社の「データ入稿方法」の説明ページを事前に読んでおきましょう(専門用語がたくさん出てくる場合が多いですが、ここはひとつずつ調べながら進めるしかないです。わたしもそうしました…!)
PDFで入稿すればOKな場合は、なじみのあるWordなどのソフトでも制作できます。
ただ個人的に「ちゃんと本をつくりたい!」と思う方には、有料ではありますがAdobe(アドビ)のInDesignをおすすめします。月額2700円ぐらい。冊子づくりに特化したソフトで、覚えてしまえばめっちゃ制作が楽になります。ページ数を自動でつけてくれたり。
Illustratorを使えないわたし(過去に40万円払って学校に通うも挫折……)でも、InDesignはネットで調べながら使えるようになりました。難しいことをしようとしなければ、シンプルな操作だけ覚えればOKなので、気に入っています。
ただ「そういうの全然無理〜!」という方は、デザイナーさんか、もしくは得意な知り合いに相談するほうが、エッセイ執筆にエネルギーを注げて良いかもしれません。
● エッセイページのデザイン
文章ページのデザインを決めましょう。
わたしは自分が持っているエッセイ集のデザインを参考に、一般的なレイアウトにしました。
文字の大きさ(フォントサイズ)、あまり小さくても大きくても読みづらいので、自分のエッセイに雰囲気にあわせつつ、読みやすさメインで検討するのがおすすめです。
わたしは本文8.5pt(11.994Q)、見出し11.34pt(16Q)にしています。
● 表紙のデザイン
表紙をどんなイメージにしたいかも、検討しつつ、制作スケジュールを立てておきましょう。
特に表紙制作で気をつけなければいけないのは「背幅」の存在。
つまり本の背表紙の部分も考慮して、データをつくる必要があります。
わたしの依頼している「グラフィック印刷」さんの説明ページを貼っておきます。
背幅はページ数と使用する紙によって決定するため、表紙データはページ数が確定してから制作に移りましょう。
ちなみにわたしは、表紙もInDesignでつくっています。
ここも自分のスキルにあわせて、文字と写真をあしらっただけのシンプルなデザインにしました。
● 全体のページ割をつくる
だいぶイメージが固まってきたら「ページ割(台割)」を作成しましょう。
ページ割とは、何ページに何がくるのか、内容や構成をビジュアル化したものです。見開きの感じもイメージできるようになるので、つくってみると全体を把握しやすくなると思います。
ちなみにネットで「台割」と検索すると、テンプレートもいくつか見つかります。
文章のみのシンプルなエッセイ集の場合、つくらなくても制作できるっちゃあできるのですが、全体把握のために一度やってみると良いかもです。
● 奥付のデザイン
ここはエッセイ集づくりの最後でもOKなのですが、奥付のデザインも必要です(わたしは「忘れてた!」と思って、入稿直前にデザインをつくりました)。
奥付で重要なのは「何かあったときの問い合わせ先」を明確にすること。問い合わせ先や連絡方法を書いておきましょう。
4|デザインに原稿を流し込む
原稿とデザインのベースが出来上がったら、あとはデザインデータに原稿を流し込んでいきます。
わたしの場合はGoogleドキュメントに書いた原稿を、InDesignにコピペして貼っていく作業です。
流し込んでみると「改行の感じがなんか気持ち悪いな」とか「ここでページをまたぎたいな」などの追加修正が発生するので、調整しながらデータを完成させていきます。
5|校正作業と最終調整
データができたら、いよいよ最終段階。
誤字脱字チェックをして、仕上げていきます。
わたしはいつもこんな感じで表記統一ルールをつくって、表記揺れ(ひらがな / カタカナ / 漢字の表記が揺れること)を防ぐよう勤めてます。
全ページ印刷してチェックする作業を2〜3回繰り返して、ようやく完成です!
6|入稿
いよいよ入稿作業。
主要なネット印刷サービスの場合は、アップロードするだけで簡単に入稿できるので助かります。
Webに掲載している文章と違って、紙の本は入稿完了後は修正できないので、いつも刷り上がるまでドキドキします。
わたしがお願いしているグラフィック印刷さんは、1週間以内に刷り上がります。
● 販売価格の検討
入稿完了すると、原価が確定するので、販売価格も最終決定できます。
100部以下の少数部で印刷する場合、たいてい原価がだいぶ高いです。
仕様にもよりますが、目安として文庫本1冊つくるのに500〜1000円ぐらいはかかります。
わたしのエッセイ集も、表紙を丈夫にするために「PP貼り」という加工をしており、ページ数も多いので、原価は安くないです。
一般的に文庫本は、書店で500〜1000円ぐらいで売られていることが多いですが、個人で少数部制作する場合は、もっと価格が高くなる傾向があります。2000〜3000円ぐらいするものもありますよね。
価格設定は、何を目的に販売するかにもよる(趣味でたくさんの人に読んで欲しいなら赤字にならなければ良いかもしれないし、事業として成り立たせたい&たくさんの人が欲しいと言ってくれているなら高くても良いかもしれない)ので、そこも踏まえて設定してみましょう。
ちなみにわたしのこちらのエッセイ集は、1250円にしました。
7|販売
エッセイ集の販売方法について、ざっくりと。
● Webショップで販売する
誰でも気軽にできるので、Webショップで販売するのがおすすめです。
わたしが使っているのはBASE。noteとも連携しているため、noteのプロフィールページに商品を表示できます。
● イベント出店で販売する
イベントに出店して、手売りすることもできます。
本・ZINE・同人誌を販売するにあたって有名なのは「文学フリマ(通称:文フリ)」。全国で開催されています。
実はわたしも、11月の東京開催に初出店予定!楽しみ。またお知らせします。
エッセイ集づくりの工程のご紹介は、ここまで。
ここからは、もうちょっと突っ込んだ内容についてお届けします。
エッセイ集づくり、そもそもの話
事前にみなさんからいただいたご質問をもとに、エッセイ集づくりの工程より前の、そもそもの話をここにまとめます。
Q. エッセイ集のテーマはどうやって決めるの?
個人でつくるものですから、素直に書きたいテーマで良いと思います。
ちなみにわたしの場合は、過去にブログやnoteに掲載した文章を再編集してまとめているので、「こういうテーマで一冊まとめよう」と決めて、過去文章をピックアップしています。
Q. エッセイ集をつくったとしても誰も買ってくれない気がする…
エッセイ集づくりは誰でも挑戦できますが、誰かに手に取ってもらうには、もちろん工夫が必要です。
例えば日頃からnoteなどにエッセイを投稿して「自分のエッセイはこんな感じですよ」と知ってもらう機会をつくり、読むのを楽しみにしてくれる人を増やしていくとか。
何事も、まずは知ってもらうこと。知ってもらう努力をせずに本が売れる人なんて、たぶんいないです。
Q. たくさんの人に読んでもらえるエッセイは、どうしたら書ける?
……これは、わたしが知りたい。笑
ただこの質問には「どうしたらマツオカさんのように自分の感性を大切にしつつ、たくさんの方に読まれるエッセイが書けますか?」と書いてくれていたので(ありがとうございます)、あくまで「わたしの場合」を書いてみます。
正直なところ、「書いて公開している文章の数」によるものなんじゃないかと思ってます。
わたしは2016年から2019年の3年間に毎日ブログを更新し、2020年以降も週1回以上エッセイをnoteに更新してきました。単純計算で1000本以上は、文章を書いて公開して、みなさんから反応をもらう…ということをやってきています。
そうするうちに「自分が楽しく書けて、かつみんなが楽しく読んでくれる」という部分が、ちょっとずつわかってくるんです。
それをわかった上で、たまには独りよがりな文章も書きますし、逆に需要に応えた文章を書くこともあります。でも「このラインが、良い塩梅だな」をわかっていると、書き手と読み手の最大公約数を出せるみたいな、そんな感じでしょうか。
……とはいえ、正直わたしのエッセイは、そんなにたくさんの方に読まれているわけではありません。noteのフォロワーさんは2000人弱です。有名人というわけでも、バズった経験があるわけでも、有名媒体で執筆しているわけでもないです。
つまり、たぶんみなさんも、とにかく試行錯誤しながら数を書いていれば、わたしのことを軽々と超えていけると思います。それぐらい、そんなに突飛な読者数ではないかなと思うし、わたしもこれからもコツコツ頑張るっきゃないなと思っています。
Q. 文章は書けるけど、デザインのスキルがない!
金銭的に余裕があるのなら、デザインはすべてプロにお願いして、自分は執筆に集中するのが一番良いと思います。
ただ、個人で制作したい方はたぶん「そこまでお金かけられないよ…」な場合が多い気もする。
自分だったらどうするかな〜と考えた結果、Wordで文章を書いてシンプルなレイアウトデータをつくる&Canvaで表紙画像をつくってPDF入稿する、をやるかなと思いました。
普段からわたしもめちゃくちゃ使っているのですが、素人がデザインをつくるにあたってCanvaは超おすすめです。テンプレートがたくさんあるし、無料で使えるイラストも多いです。
あとは、デザイナーではなくても「ちょっとデザインが得意な友達」や「センスがいい友達」に、つくった表紙やレイアウトを見てもらって、アドバイスもらうとかね。
エッセイ集づくり、もうちょっと突っ込んだ質問
エッセイ集づくりに絶対必要ってわけじゃないけれど、ちょっと突っ込んだ質問もいただいたので、まとめてみました。
Q. 本づくりの知識がないけど、できるかな?松岡さんはライター経験や製本の知識があるからできるんじゃない…?
いやいや、わたしも知識ゼロからやっています。
「ライター経験があるから…」と思われがちだけど、Webライターだったので製本も出版も知識なしのところから、自分で調べて勉強して、今に至ります。
じぶんジカンのノートも、そもそも「製本」って言葉を知らないところから始まってます。「ノートつくりたい!でもノートってどうやってつくるんだ!?」ってところからの、スタートです(笑)。
知識は調べれば身に付きます。制作する本のクオリティも、何度も作っていくなかで上がっていくはずです。これは文章の上達も同じですね。
なんでも、やってみると景色が開けます。そして、誰もが最初はゼロからのスタートです。「やってみたい」という気持ちがあるなら、大丈夫!
Q. 編集者さんやデザイナーさんと出会うには、どうしたらいい?
うんうん、これはなかなか難しいですよね。わかる。
わたしはSNSで「すてきだな!」と思うライターさん、編集者さん、デザイナーさんを見かけたら、フォローするようにしています。そしてその方の活動を見つつ、一緒に何かできたらいいなと思ったタイミングで、お声がけしてみます。日頃からアンテナを立てておく感じでしょうか。
あとはわたしは使ってないですが、頼みやすい方法だとクラウドソーシングとかですかね。ココナラとか。金額と実績が見えるので、探しやすいかも。
それと、創作系のコミュニティとかをのぞいてみると、結構同じように「書くこと」を大切にする人と繋がれる気がします。noteにもコミュニティいっぱいありますし。
いっしょにエッセイ集づくりをするなら、自分と感性が合う人にお願いできると良いですよね!
Q. 以前ハードカバー版もつくってましたよね、そっちはどうでしたか?
「ハードカバーの本をつくってみたい!」と思って、2022年に初めてつくったエッセイ集はハードカバー製本にしました。
ハードカバー、良いですよね。今も気に入っていて、本棚の見えるところに置いてます。
前回のハードカバー製本は、京都の老舗印刷会社・信天堂さんにお願いしました。100部でも快く引き受けてくださり、連絡もスムーズで気持ちよくやりとりできました(印刷会社さんって、連絡がアレなことが結構多い……)。
ただ、ハードカバーは原価がだいぶ高くなります。製本大変ですから、当然です。それと、製本や紙の知識がないと、入稿までのやりとりのハードルが高いかもしれないと思い、今回このnoteではメインでご紹介しませんでした。挑戦してみたい人は、ぜひ別途調べてみてね。
エッセイ集づくりにまつわるお金の話
気になるけど、なかなか聞けないお金の話をこちらにまとめます。
● 制作費について
「どれくらいかかるんだろう」と不安に思うかもしれませんが、ネット印刷サービスであれば、事前に簡単に見積もりを見られるところがほとんどです。
わたしがいつも依頼しているグラフィックさんも、条件を指定するだけで簡単に印刷費用が確認できます。
はじめての本づくりは、万が一売れなくても「勉強代だ」と思える製作費と「ゆっくり届けていけばいいや」と思える在庫数で、つくるのがおすすめです。
●編集者やデザイナーさんのギャランティについて
これはピンキリなので、一概に言えないのですが、「この人にお願いしたいな」というのがあるのなら「こういう仕事をお願いしたい場合、いくらで受けてもらえますか?」と聞くしかないと思います。
料金表を出してくれているデザイナーさんもいるので、「この人にお願いしたいな」と思ったら、プロフィールやポートフォリオのページをチェックしてみましょう。
ちなみに、金額設定を相場から考えたくなるところですが、特に編集なんかは作業内容や量によって大きく仕事が変わるので、相場なんてないようなものでして……。
例えば編集をお願いする金銭的余裕はないけれど、文章のクオリティを上げたい!という場合は、校正だけお願いしても良いかも。校正は割と作業ベースなところがあるので、これは前述のクラウドソーシングで人を見つけても良いかもしれません。
ちなみにわたしは過去に「誤字脱字を見つけるのが得意な知人」に依頼したこともあります。プロの校正者でなくとも、得意な人にお願いして見てもらうのも良いですよね。その時は時給1200円でお願いしました(知人だったので気軽に相談できた)。
● エッセイ集販売って、儲かるの?
儲かるか儲からないかで言えば、儲からないです。残念ながら(笑)。
出版物全体にも言えることですが、本を出して大きな金額を得られるのって、何十万部、何百万部のベストセラーを出している作家だけだと思います。
執筆にかけた時間や、本をつくる工程の多さを考えると、まったくコスパは良くないです。儲けたいとしたら、エッセイ集づくり以外の方法を考えることをおすすめします……!
ただ、利益がまったく出ないか?というと、そうではありません。
わたしは文章を書くことを生業としているので、趣味でエッセイ集をつくっているわけではなく、ひとつの事業として「本づくり」をやっています。
ですから、大きく収入が得られるわけではないけれど、つくり続けられるぐらいの最低限の収入が得られるように、金額を設定しています。
まあとはいえ、エッセイ集の販売だけで生きていくのは、今のわたしのレベルでは全然無理です。それをやろうとしたら、全国のいろんなお店に置いてもらって、かつ月に500部とか1000部とか手に取ってもらえないと、難しいです。
ですから、エッセイ集は「本をつくりたい、文章を書くのが好きな人」が、自分の生業のひとつとして、販売するのが良いんじゃないかなと思います。
制作は大変でも、エッセイ集をつくりたい理由
ここまで読んで(あるいは流し読みして)、「エッセイ集づくりって、大変だなあ」と思った人も多いかもしれません。
そうです、大変は大変です(笑)。
ただ、今の世の中では、誰でも挑戦できることでもあります。
本を出すことは、知識や経験や財力がある人だけの特権ではなくなったんです。
エッセイ集づくり、大変だけどわたしは本当に楽しくて、そして完成したものが愛しくて、それを自分と近い感性を持った人たちに手に取ってもらえるのが嬉しくて。きっとこれからも続けると思います。
Webで無料で文章が読める時代ですが、やはり紙で、いつでもそこにある言葉達にページを開いて会いにいく感覚は、まったく違う読書体験です。それに、自分でお金を払って得た一冊は、無料で流れてきた文字の羅列とは比べらものにならないぐらい、受け取るものがあると思っています。
だからやっぱり、「本」が好き。
また、今回こうして「エッセイ集をつくること」の工程を綴ってきたのは、想いと熱量を込めた本をつくる人が増えたら良いなと思ったからです。
(本屋さんに行って、悲しくなることが結構あります。これはきっと消費されるのだろうなというビジネス本や、想いが薄いのがわかる "売るための本" が、たくさん並んでいたりして……)
心を込めて本をつくる。
そんな人が、もっと増えますように。その参考になったら嬉しいです。
おわり
ご紹介した工程でつくったエッセイ集、よかったらのぞいてみてください。