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「お母さん、わたし、眩暈で倒れた」 なんとか文字を打ち、LINEを送る。送信されたメッセージは、涙で滲んでぼやける。 気だるく横たわったまま、視線を画面から離して部屋を眺めた。 広々とした無機質な部屋。ここは、マレーシアのペナン島近くにある5つ星ホテルの高層階。この広すぎるツインルームが、出張中のわたしの拠点だった。 ベッドから見える大きな窓には、太陽の光を反射するマラッカ海峡が煌めいていた。 もう、わたし、ダメかも。 そんなことを思いながら、その景色を眺めた。