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上級ハムの試験問題を理解する試み(6)
私が2アマの試験を受けた頃(もう40年近く前)は記述式でした。その後、現在のような選択式に変わりますが、おそらく一番の変化は電磁気学の基礎を問う問題が出題されるようになったことでしょう。2アマの無線工学の難易度が高校物理程度に合わせてあることが、より明確になったと感じます。
では、令和元(2019)年4月期の問題を解いてみましょう
この問題は、平行板コンデンサの公式を知っていればただの計算問題なのですが、コンデンサというものを理解するために必要な要素がすべて詰まっています。まず、平行板コンデンサは、2枚の平行な金属板(面積S)が、その距離dをつねに保つような構造をしています。そしてこの問題では金属板の間に誘電体(比誘電率εr)が挟まれています。コンデンサには電気をためることができ、上の金属板に+Q、下の金属板に-Qの電気が溜まっていると仮定します。このときの電極間の電位差をVとすると、QとVは比例します。すなわち、Q=CVであり、この比例定数を静電容量と言います。この状態では、2枚の金属板の間にだけ、一様な電場E=Q/(ε₀εr S)が発生し、その外側には電場は生じません。この電場Eによる電位差はV=Edであるので、Q=(ε₀εr S/d)Vが得られます。Q=CVという関係式から、C=ε₀εr S/dとなります。これが教科書に載っている公式です。
この公式に与えられた数値を代入すると、9x10¯¹² [F/m] x 5 x 20 x 10¯⁴ [m²] / 10¯³ [m] = 9x 10¯¹¹ [F] = 90 pF
したがって、正解は2です。