カーボン釣り竿直接給電アンテナに関する考察 (3)
これまで、カーボン釣り竿直接給電アンテナに関して、主にアンテナシミュレーターを用いて考察してきた。その結果、電気抵抗率がかなり大きくなるにもかかわらず、アンテナとして動作させた場合の損失は単純に電気抵抗率の比では決まらないことがわかった。このシミュレーションがどの程度正しいか、実際のアンテナで確かめてみる。
今回、テストに用いるアンテナは50MHzのグランドプレーンとした。まず、アンテナシミュレーターで無損失の場合を計算すると、共振点インピーダンスが36.1Ωと、教科書通りの値が得られた。次に、直径20mm、電気抵抗率を2.5×10⁻⁴Ωmのエレメントの場合を計算すると、40.4Ωとなった。放射抵抗は変わらないと仮定すると効率は36.1/40.4=0.894、つまり10.6%の損失となる。
次に、カーボン釣り竿直接給電アンテナを用意する。
![](https://assets.st-note.com/img/1653037093549-X3xJwRcWS5.jpg?width=1200)
最下部に、アルミテープを18cmの高さまで巻き、その間に銅線を巻き込んで給電部とした。竿の表面塗装を削っていないので容量給電となる。竿は下から3段使用して全体の長さは139cmである。これを測定用の治具にとりつけるとアンテナになる。
![](https://assets.st-note.com/img/1653037312098-QNppNwjrkv.jpg?width=1200)
写真でわかるように、三脚と機械的に固定する部分およびNanoVNAと電気的に接続する部分からなっている。これにより、給電部の影響をできるだけ受けずにアンテナの特性を測定する。GND側には長さ135cmの銅線が4本接続してあり、これを展開してカウンターポイズとして働かせる。
さて、測定結果である。最初に同じ長さのアルミパイプで測定したら、共振点インピーダンスが26.2Ωとなった。理論値の36Ωよりやや小さくなっているのは理由が不明だが、これは宿題としておく。次に、カーボン釣り竿に交換して測定したところ、28.7Ωとなった。この数値から損失を求めると9.7%が得られた。理論値とかなり近い値である。
50MHzGPではこのアンテナのメリットを生かすことができないので、あくまでもシミュレーションとの比較用に過ぎない。ただ、少なくともこれまでの考え方に大きな間違いはないと言えるのではないだろうか。