君は赤点が一つも無かったんです
1点、赤点につき数枚の紙を渡された。裏表には表があり、紙の左上には書くべき数式が並んである。それが地獄の始まりだった。数学が苦手だった僕は、赤点を取ってしまった。赤点だった生徒達が順次席に座り数式を書き始める。学校を辞める生徒もいた。キープアウトのテープが教室の外にはある。教師は「またお前か」という呈でプリントを渡し、軽く僕を教室に誘導した。しかし、最終期末テストの時、数学教師Nは「期末試験で点数が取れればその差分、今までの赤点をなしにする」と言った。僕は28枚を書ききれず、赤点を消化できていなかった。崖っぷちに立った僕は、真夜中まで数式を大量に書くという学習に追われた。あれだけ嫌だった紙を自らもらったのだ。期末テストが終わり、数学の結果を伝えに行った。もちろん、先生が成績をしったうえでのことである。「君は赤点が一つも無かったんです」。教師Nは、コピーした答案を僕に見せて言った。「しかも30ではなく60点という大差をつけて」、教師は静かに言った。この時僕は留年を免れたことを知った。「もちろん、今回はプリントをもらう必要はありません。今まで最初からそうすればいいものを」何が恨み節をぶつけられたかのような気持ちになったが成績は成績だ。僕は教師にお礼を言ってその場を去った。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートありがとうございます。理由あって、全て無料コンテンツにしています。noteで様々なことを配信しています。励みになります。-高橋政重