見出し画像

ゲームの上手なおしまい×ゲーミフィケーション ~書籍「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち」

 ゲーミフィケーション賢者Lv98の”きっしー”です。

 親御さんに向けて、子どもとゲームの付き合い方について書かれた良書を読みましたので、皆さんにもご紹介します。ゲーミフィケーションから見た視点でも解説します。

「ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち~子どもが社会から孤立しないために 」(子どものこころの発達を知るシリーズ 10) (吉川徹著、2021、合同出版)
https://honto.jp/netstore/pd-book_30661785.html

つい最近出た本です。私も講座などで、同じような”子どもとゲームの付き合い方”のお話する機会があります。ゲームクリエイター、大学教員、ゲーミフィケーションデザイナーの経験からです。

その中でお話しするのは、”ゲーム好きならそれを活用し、ゲーム通して子どもに大事なことを学ばせる。でも、悪い大人が作っているゲームもあるので、ルールを決めることが大事。”です。

記事:
【保護者向け】「子育てにおけるゲームとの付き合い方」のアドバイス
https://note.com/jgamifa/n/n6c7503c08e64

なので、本書を読んで、内容に激しく同意しました。さらに知らない知識や役立つ実践を知れて、とても良い本でした。

ゲーム好きな児童精神科医が書いた本

 本書の著者は、児童精神科医という専門家として、子どもとゲーム・ネットの付き合い方について書いています。ゲーム依存を治療する立場でもあるわけです。

が、本書の最大の特徴は、著者自身が子どもの頃からのゲーム好きで、大人になってもゲーム好き。なので、ゲームが大好きな子どもたちの気持ちが分かる。「分かります、その気持ち、でもここには気を付けさせたほうがいいですよ。」という文章なのです。


紹介されている本書の内容です。

ゲームやネットとのつき合い方はどこまでが健康な使用で、どこからが問題となるのか。著者自身が子ども、若者だったころの記憶と、診察室の内外で現代の子どもたちと接してきた経験を通して、ポジティブな方向から考察する。
■大人から子どもの世界に近づいてみる
■発達障害のある子どものゲーム、ネットとのつき合い方を知る
■機器ではなく、内容から子どもが何をしたいか考える
■ICTから遠ざかる支援よりも、利用してリテラシーを身につける
■「やめさせる」「取り上げる」はさらに反感を強める対応
■ネットやゲームの約束は子どもには守れない
■ゲームとお金の関係を理解する


大人から子どもの世界に近づいてみる はとても大事です。ゲーミフィケーションでは「能動的な参加」を重視します。対象者に能動的に行動してもらうには、対象者の気持ちになって、どうやったら気持ちよく行動できるのかを考えます。

本書で私が気に入ったところを、3つ紹介します。

ゲームは子どもたちを動機づけさせる。ならば支援に使おう



p37-38より

ゲーミフィケーション ゲームの要素をゲーム以外の領域でも積極的に使っていこうという考え方。
バートルの4つのプレイスタイル分けはゲーミフィケーションという考え方の中で活用され、ビジネスの領域でも応用されたりしています。ゲームというコンテンツが優れている点の一つは子どもたちをやる気にさせることができる、つまり動機づけができるということです。
子どもがゲームの中で何を求めているかわかれば、現実の世界の中ででどのように動機づけていくことで力を発揮していける子どもなのかがわかりやすくなります。
子どもががんばりたくなるポイントを探していくのは、育児や子どもの支援の出発点です。また、子どもがゲームを通して求めているものが何かを知っておくことで、ゲームを制限したり、他の行動に置き換えたりする時にも、その子どもにあった方法を見つけやすくなります。そして、ゲームをより楽しめる方法を考えることにも繋がります。

 子どもがゲームが好きなら、逆にそれを利用すればいいのです。それを利用して、探求する力、継続する力、他の人と良好にかかわる力、仲間と協力して目標を達成する力などを身につければよいです。これは、学校の授業や、部活や、スポーツ教室や友達同士で出かけることで学ぶのと同じだと思います。


ICTを使いすぎないリテラシーを身に着ける

 すべての青少年の習得が望まれる能力として、ICTリテラシー(情報通信技術を使える能力)として、著者は、次の3つを上げています

p90より

・ICTを使えるリテラシー
・ICTを安全に使えるリテラシー
・ICTを使いすぎないリテラシー

分かりやすい3つのまとめかたです。本書で多く述べられているのは、「ICTを使いすぎないリテラシー」です。


ゲームの上手なおしまい×ゲーミフィケーション


 「ICTを使いすぎないリテラシー」の中でゲームの上手な「おしまい」を身につけることが大事だが難しいと書かれています。

その中で提案されているやり方が、まさに我々が広めているゲーミフィケーションと同じなのです。

p140より

タイムタイマーを使う
・残り時間が一目でわかる
・終わり時間の少し前から何度か予告する →《達成可能な目標設定》
・次はいつ遊べるか伝える
ゲームが終わったらおやつ →《称賛の演出》
・決められた時間に終れたら、チケット獲得。つぎはちょっと長く遊べる →《成長の可視化》

ペラルティはだめ おしまいが好きになること →《能動的な参加》

宿題をやってからゲームをするはうまくいかない →《能動的な参加》
・学校でいろいろがんばって、ガマンして帰ってきたら、先に宿題だと嫌になる

 矢印以降はゲーミフィケーション6要素で分析した部分です。
子どもの目線になって、どうやったら上手なおしまいを身につけさせるかの、上手なゲーミフィケーションになっています。


ゲーム以外のリアル世界の楽しいことを見つける

 著者は、子どもがゲームとうまく付き合いながら、その間にリアルな世界での他の楽しいことを見つけるのが大事。大人はその支援をすることが大事と述べています。

p170より

それぞれの子どもが一つでも、二つでも、ネットやゲーム以外に、夢中になれる活動、続けていける趣味があるのは、嗜癖(しへき、アディクション)の予防という観点からは、とても大事なことです。できれば中学生になる頃までに、こういう活動がいくつか見つかっているとよいと思います。そう考えると、小学校時代には勉強なんかしている暇はないのではないかと、半分ぐらい本気で思います。

私の、とても好きなセリフです。

まとめです。
・ゲームを無理やり辞めさせるのではなく、ゲームをうまく活用しよう
・ゲームは子どもたちを動機づけさせる。ならば支援に使おう
・ICTを使いすぎないリテラシーを身に着けさせる
・ゲームの上手なおしまいに、ゲーミフィケーションを使おう
・その間に、ゲーム以外にリアル世界での他の楽しみを見つけよう。親・大人はその支援をしよう

です。同様の問題に悩んでいる親・大人はこの本を読んで、活用してみてください。私は、ぜひ、この著者とはお話してみたいと思いました。

(おわり)


#jgamifa #gamification #ゲミー
#ゲーミフィケーション #ゲーム要素 #モチベーション
#日本ゲーミフィケーション協会 #ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち #吉川徹

執筆:岸本 好弘(日本ゲーミフィケーション協会 代表賢者Lv98)
https://jgamifa.jp/


いいなと思ったら応援しよう!