"JR西日本のゲーミフィケーション成功例:「サイコロきっぷ」の裏側"
ゲーミフィケーション協会監事の田中(以下、JGA田中)でございます。
今回、私自身が非常に素晴らしい体験をした「サイコロきっぷ」を提供している西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)の営業本部・営業企画グループに、協会代表の岸本(以下、JGA岸本)と一緒にインタビューに行ってきました。
JGA田中:
それでは、松本大さん、五十嵐美紗さん、本日はよろしくお願い申し上げます。
まずは、『勝手にゲミ―賞2022』に入賞した、「サイコロきっぷ」をご紹介していただいてもよろしいでしょうか。
松本さん:
「サイコロきっぷ」は、旅の行き先をサイコロで決めるというコンセプトのきっぷです。偶然から始まる列車の旅を楽しむことができます。例えば、最近(2023年夏に)発売された第5弾となる「サイコロきっぷ」は、大阪を出発地として、金沢・城崎温泉・呉(広島)・博多の4箇所から行き先が選ばれます。第5弾のご利用期間は2023/8/23(水)~10/31(火)の連続する2日間で(事前抽選申込は終了しています)、価格は5,000円(月~木出発)または8,000円(金・土・日・祝日出発)なので、どの行き先も普通に往復するよりもお安くなっております。サイコロを振って出た目によって、きっぷの行き先が決まるというゲーム要素があります。
JGA田中:
最初の「サイコロきっぷ」第1弾は、2022年の夏でした。ここ1年で第5弾まで続いている人気商品である「サイコロきっぷ」を開発するきっかけは何だったのでしょうか?
JGA岸本:
テレビのサイコロ旅か何かが元ネタですよね?
五十嵐さん:
博多が行き先にあることも相まって、水曜どうでしょうの企画(サイコロの旅)が元ネタなのではと聞かれることがありますが、実際のところ、航空会社など他社の取り組みを参考に企画しました。
コロナ禍で観光利用が落ち込んでいた2021年に販売した「JR西日本 どこでもきっぷ」や「JR西日本 関西どこでもきっぷ」のデータを分析すると、10代〜20代の若い世代に多く利用されたことがわかりました。このような状況においても若い世代の方は動きやすいのではと考え継続してアプローチすることになりました。調査した結果、サイコロというゲーム性があったらより若い世代の方に受け入れられるのではないかと考えました。
実際に、2023年1月に販売した第3弾でも、30代以下の若い世代の方のご利用が6割を占めていました。
JGA岸本:
今回、呉という、このラインナップからはマイナーな行き先が含まれていますが、「サイコロきっぷ」の行き先はどうやって決めているのですか?
松本さん:
行き先の選定は主要な場所と、出発エリアの人にとっても馴染みがなくなかなかいったことがない場所で、かつ観光資源があり「サイコロきっぷ」のような機会があれば楽しんでもらえる場所を混ぜています。また、当選確率の低い博多などの遠距離にある行き先を入れてゲーム性をあげています。
今年は第5弾なのですが、いままでに設定していない場所をいれることで、前回までに参加した方でも楽しめるようにしています。
JGA田中:
自分は第1弾の「サイコロきっぷ」に参加していました。その時は、36分の5の確率で尾道を引き当てました!自分は関東に住んでいるので、どの行き先でも満足できたと思うのですが、尾道か博多が狙いだったので、腕がちぎれそうになるくらいガッツポーズをしたのを覚えています。尾道は坂道が多くて荷物を持っての移動には大変でしたが、景色も気候もよく大変楽しい旅になりました。こちらはその時の写真です。
五十嵐さん:
ありがとうございます。実は私も個人的に参加したところ、芦原温泉駅でした。第1弾では、餘部や東舞鶴を入れたのですが、お客様にインタビューをしたところ、「初めて行ったけど、楽しかった。景色も素晴らしかった。」というポジティブな感想を聞けました。王道の観光地ではないのですが、自分なりの楽しみを見つけてくる参加者が多かったように見受けられます。
JGA岸本:
第1弾の時はコロナ禍真最中だと思うので、ゲーム性を加えることがJR西日本さんの売り上げに大いに貢献する、まさにゲーミフィケーションの良い事例ですね!
コロナが徐々に終息してきたことに関連があるかもしれませんが、今回の第5弾では、事前抽選性を取っています。この制限するにいたった経緯を教えてください。
五十嵐さん:
第1弾のご利用の想定は2万人でしたが、実際には24万人もの人々に参加いただきました。第3弾(大阪発の2回目)では、想定を大きく上回るご利用があり、エントリーの受付を継続した場合、お客様のご希望に必ずしも沿えない状況となる可能性があったため、途中でエントリーの受付を中止することになりました。第3弾のご利用状況を踏まえ、第5弾では発売数を4万組限定とし、公平にご利用いただくために、事前の抽選方式で発売させていただくことになりました。集まらなかったらどうしようという気持ちでしたが、当選組数を大きく上回るお申込をいただいていて、需要の高さを実感しました。
松本さん:
こちらも、第1弾から第4弾までと同様に、やはり若年層に多くお申込いただいていると考えています。ある程度年齢を重ねた方々よりも、ゲーム性を楽しむ若者に好評なのかもしれません。
JGA田中:
確かに若い人たちは、どこに連れて行かれるかのハラハラ感やドキドキ感のような、ゲーム性を求めているのかもしれませんね。他にもゲーム性を入れてみて変化したことはありますか?
五十嵐さん:
2022年5月に定期券利用者向けに格安の5000円で「プラス城崎きっぷ」を期間限定で販売したものの、あまり人気が出ませんでした。しかし、その後の2022年7月に販売された「サイコロきっぷ」は大変な人気を博しました。興味深いことに、城崎温泉は「サイコロきっぷ」の目的地にも含まれており、価格も同じなのですが、ゲーム性を取り入れることで話題性が大きく変わったと感じました。
JGA岸本:
面白い話ですね!ゲーム性を加えることの効果が出ていますね!
JR西日本さんは、関西の会社だけあって、割と面白いことできる会社なのですか?同じ関西の会社であるサントリーホールディングス株式会社のグループ会社で「社長のおごり自販機」(従業員2人が揃い、一緒にカードをタッチすると、社長のおごりモードが起動して、それぞれ1本ずつ飲み物が自販機からもらえる職場内でのコミュニケーションのきっかけ作りのためのサービス)というサービスがあるのですが、サントリーは、「おもろいことをやれ」が社風なので、面白いことを実践できる雰囲気がある会社でした。
五十嵐さん:
前提として、弊社はインフラ企業であり、安全性ということを第一に置いています。若手がこういうことをこう思ってやりたいと、しっかりと自分から言えば、「サイコロきっぷ」のような企画が実現できる会社ではあります。営業本部の各グループの若手メンバーが集まって「こういうサービスを作らないか?」「そのためには、システムはどうしたらよいか?」等を考えた結果できたものなので、若手社員の案で出来上がっているきっぷになります。
JGA岸本:
確かに、若い人のニーズは、若い人にしか、わからないかもしれませんね。
いまは、大学や高校で教えているのですが、そこで感じることは、若い人は面白いことに飛びつきますね。昔のように、行ったことがない場所に行ってみたいという願望が少なくなったのではと感じています。そんな中で、楽しめる仕掛けがキーワードになるのかなと思います。
JGA田中:
確かに自分も「サイコロきっぷ」を使って尾道に行ったという話をしましたが、行き先は漠然と博多か尾道がいいなぁくらいの感覚で、楽しくさいころを振りました。ただ、自分の場合は、行ったことがない場所に行ってみたいという願望もあり、かつ安く行けるといことで、関東に住む自分にとっては、たとえどの行き先でも当たり状態ではありました。
ところで「サイコロきっぷ」を企画している営業企画の部署は、普段はどのようなことをされているのですか?
松本さん:
普段はご利用状況の分析や鉄道のご利用に関連するサービスの企画をしています。
JGA岸本:
今後のゲーミフィケーションを活用したサービスは企画されていますか?
松本さん:
まだ未定ではありますが、第5弾の反応やデータを見ながら検討していきます。
五十嵐さん:
「サイコロきっぷ」に続くようなゲーム性のある企画が何かできないかなと考えています。
JGA田中:
なんと、それは楽しみです!旅行資金、積立しておきます!
今日のまとめですが、「サイコロきっぷ」は、旅の行き先をサイコロで決めるというコンセプトのきっぷであり、2022年の夏に第1弾が発売され、2023年夏には第5弾が発売されています。このきっぷの開発のきっかけは、若い世代が多く利用すると分析されたため、ゲーム性を加えた新しいきっぷが受け入れられると考えたためです。行き先の選定には、主要な場所となかなか行ったことがない場所を混ぜ、ゲーム性を高めています。この若い利用者がワクワクするサービスの仕掛け人は若い社員であり、JR西日本は若手社員が新しい企画を出せる風土があるということがわかりました。
本日はありがとうございました。
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