積み上げているものがあれば、どこでだってやっていける。大手電機メーカーからVTuber事業スタートアップへ
経理の挑戦メディア『デンタツ』!
第9回を迎えました。
バーチャルライバープロジェクト『にじさんじプロジェクト』を運営する次世代エンタメ系スタートアップ、ANYCOLOR株式会社でご活躍中の小松弘樹さん。
「ベンチャーに興味がある」という小松さんのSNS投稿を見つけた弊社メンバーが、SNSを通じてメッセージを送ったことから始まったステキなご縁。
キャリアチェンジの際に6時間かけてご両親を説得なさったというエピソードから、誠実な人柄が伝わってきます。
はじめての転職活動ってどんなふうに進めた?
大手もスタートアップも経験した今、思うこと。
人生初の転職から1年が経った現在の心境など、語っていただきました。
担当はJAPAN FASの俵家と大沢です。
キャリアの先輩をご紹介
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ANYCOLOR株式会社
経営管理部
小松弘樹 氏
早稲田大学人間科学部卒
2017年 大手電機メーカー 入社
2021年 ANYCOLOR株式会社 入社
※所属は取材当時のもの
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本質は、せっかち
――まずは、小松さんの生い立ちや学生時代の話からうかがいたいと思います。
小さいころは、けっこう落ちこぼれだったんですよ。なにをやってもある程度いい成果を出せるタイプの出来のいい兄と姉がいて、いつも比べられていたので。勉強もスポーツもあんまり得意ではなく、自分に取り柄はないなぁと思っていました。
サッカー、テニス……いろいろ試したなかで、唯一、剣道だけはできるなと気づき、高校生のときに入った剣道部がすごく楽しかったことはいい転機になりました。それからは、ほとんど部活中心の生活でした。
部員の同期は3人だけで、前年度のインターハイ県大会優勝校を倒したこともあります。「少人数の組織で自分のプレゼンスを出して、みんなで意見を出し合って、努力する」みたいなことが、当時からすごく好きでした。
大学生時代はヒマな時間がきらいで、基本的に寝ているとき以外は勉強したり部活をしたり。じっとしていられない性格で「あぁ、1日ムダにしたなぁ」と思うのがすごくイヤなんです。
本質はせっかちですが、仕事上せっかちだとミスが起きやすいので、2段階くらいペースを落とすように心がけています。
「君はバックオフィスに向いているよ」
――学生時代は、どんなキャリア観を持っていたのでしょうか?
大学入学時は、夢を持っている人を応援したり、だれかの成長に携わりたくて、教員を目指していました。
でも、OBやいろんな方の話を聞いたときに、
「もっと世の中を知りたい」「教員ではなく社会に出て働きたい」
と考えが変わり、より多くの人を支援できる銀行や商社に興味を持ち、就職活動をしていました。
しかし、あまりご縁がなくて……。
当時のゼミの先生に相談したところ、
「君は営業などのフロントオフィスよりも、バックオフィスに向いているよ」
という言葉をいただいたんです。
たしかにゼミ長をしているときも、資料をつくったり進捗管理したり、事務作業でまわりをサポートしていました。同期たちと話し合い、協力して、少人数で大きな成果を出していくというのが好きでした。
前に出てビジョンを示し、ついてこい! というタイプではなく、みんなを支えるようなリーダーシップやマネジメントが好きだったので、自分はバックオフィスに向いているのかな? と考えるようになりました。
最初は自信をなくしていました
――そして方向転換をして、大手電機メーカーに入社されたのですね。
縁あって入社した電機メーカーでは、管理会計を担当しました。
新卒の配属面談時に「経理をやってみたいです」と伝えたところ、たまたま管理会計の部署に配属になりました。
日商簿記3級の資格を持っていたことと、ゼミで経営学やビジネスプランとかを多少やっていたくらいで、会計を勉強したことはなかったのですが。
はじめから、ひとつの製品の責任者として担当を持ちました。まず事業部に話を聞きにいって製品説明をしてもらったのですが、理解するのが難しかったです。
会計用語も社内用語もわからなくて、最初は自信をなくしていました。
思い出深いエピソードとしては、入社してすぐのころに
「なにか仕訳を書いてみて」
と言われて、
売掛金/買掛金(!?)
という仕訳を書きました。
売上とか原価計算もよくわからなくて、とりあえず売上から粗利を引いて原価計算してみたのですが、「そうじゃない」と(笑)。
その後、ていねいに教えていただきました。
前述のとおり会計のことがまったくわからなかったので、池袋のジュンク堂書店に行き「経理」とタイトルに書いてある本を10冊ほど買いにいきました。でも家に帰って読んでみたら、税金とか月次とか小口現金など、自分の実務には何も関係ない内容ばかりで。買う前にちゃんと読めばよかったです(笑)。
それから、「じゃあ何を勉強したらいいのかな?」と考え、簿記1級の勉強をするようになり、やっと自分のしている業務がわかりました。
やれることの少なさが見えてしまった
――転職のきっかけは、なんだったのですか?
目指したいところがなんとなく見えたことと、自分の今の業務の延長線にある限界を知ったことが、大きかったです。
会計とは何なのか・経理として自分が何をしないといけないのか、だんだん見えてきて、同時に、自分がやれることの少なさも見えてしまったんです。
仕事に慣れてきたなと思い始めた……入社4年目ですかね。メイン製品も含めて製品をひととおり任せてもらったあたりで、製品とシステムの関係性や関わる部署、自分が出せる情報、やるべき業務がだいたいどれも同じかなと感じるようになりました。
そのころ、ゼミのOBで経理をやっている方に何冊か本を紹介してもらったんです。その本の中でCFO(最高財務責任者)とか企業参謀というポジションを知りました。
経理財務は、役員から求められる資料を出したり、事業部では分からない会計的な事務処理をする役目が多いです。
一方、CFOは数字をもとに経営に対して提言し、経営者が見えていない課題を数字をもとに議論する役目というか、それを事業部にも説明することで経営の意思決定したものを説明する、パイプ役になれる存在だということを知ったんです。
決算をまわす・組織の一部の役割を担うだけでなく、勉強して専門性をつけて、学んだことで人の役に立ちたいという想いがあったことに立ち返り、「自分の目指すものは企業参謀とかCFOなのではないか」と思うようになり、「目指してみたい」と思いました。
ただ、当時の会社でCFOになれるかを考えたときに、多分なれないだろうし、なれたとしても、50代後半とか? そのころなったとしても、楽しくないだろうし……あくまで経理のトップという役目でしかないのかなと思って。
であれば、転職をしようかなと思いました。
決算書類をつくるとか会計的な専門性を極めるのではなくて、つくった資料を使って経理に携わりたいとか役に立ちたいという想いがあります。経理に関することをすべて言語化・数値化し、組織づくりに貢献してみたいです。
――なぜ、転職先としてベンチャー・スタートアップを選んだのでしょう?
ゆくゆくは経理やバックオフィス業務を通じて組織づくりをしたいと考えました。管理部全体を見れるのは小さくて勢いのある会社と考えたからです。
ベンチャーに行きたい! と最初から考えていたわけではありません。
エージェントさんに相談して「ベンチャーが向いてるんじゃない?」とすすめられたことがきっかけです。
面談やキャリア相談をしていたのですが、1社のエージェントの方だと情報が偏ってくるのかな?と思い、JAPANFASさん(弊社)も含めて3社に登録しました。
応募企業はエージェントさんにほぼお任せでした。正直、もらう情報だけで手一杯だったので、自己応募はせず、ベンチャー企業だけを受けていました。
面接のなかで起業家の方々とお話できるのはとても学びになります。
考えを話して、甘い部分を指摘してもらうこともあったし、共感してもらえることもありました。
迷いは一切なかった
――当時の心境、教えていただけますか。
会計に関しては前職でやりきった感があったので、大丈夫だと思っていました。簿記1級をひととおり学んだことで、簿記に関してはこれ以上は必要ないし、わからないことがあれば調べればわかるようになるだろうと。
ただ、ベンチャーに対する「わからなさ」はありましたね。どちらかというと好奇心に近い感覚で、情報を拾えば拾うほどキツイとか大変しか出てこなかったんですが、逆にワクワクしていました。あのときは調子に乗っていたのかもしれません(笑)。
当時、同業他社の様子を見ていて、大手だから今後も会社が安定しているとも限らないし、会社が安定しているからといってすがっているほうがリスクがあると思っていました。
「自分に何ができるか」がないと、自分自身のバリューをつくっていけないと思います。
反対に、積み上げているものがあれば、ステップアップできるだろうし、どんな手段でも生きていけるかなと感じていました。
「小松さんに、来てほしい」
――現職のANYCOLORを選んだ決め手はなんでしたか?
会計士資格保持者が多く、学びになると考えたこと。
経理の信頼度が高く、独立性があり自走できる環境であったこと。
ゆくゆくは管理部全般に携わる機会があると言ってもらえたこと。
そして、条件ではなく人柄を見てくれたから。
「大手出身の経理部員で、条件が合うから来てください」という会社さんもあったのですが、
ANYCOLORは「小松さんに、来てほしいんです」と言ってくれたんです。
日々の学び、人とのつながり
――働いていておもしろいと感じるのはどんなときですか?
それまでなんとなく理解していた会計知識がつながったときと、事業部から感謝されたときですね。
会計士の方から会計知識を明確に教えてもらえて、業務が体系的に理解できてつながっていくことにおもしろさを感じます。
事業部からも信頼され始めて、「私だから相談してくれるんだろうな」と思うような相談があったりして、直接お礼を言ってもらえたりすることがうれしいですね。
前職では、淡々と資料をつくり、淡々と事業部に流すだけだったので、人とのつながりを感じることが少なかったです。業務知識のアップデートもあまりなくて……。
いまは、日々新しい学びがあります。人とのつながりも感じます。
実際やることは大手でもベンチャーでもそんなに変わらないと思うのですが、やることの貢献度というか、目に見えて距離が近いというのが良いですね。
ただ、正直なところ大変ですし、一人ひとりの責任と裁量が大きいですよ。誰かがやってくれるということは無いです(笑)。
そう簡単にはいかない現実
――入社後に感じたギャップはありますか?
若いメンバーが多いので管理業務は大変だろうなと覚悟していましたが、かなり優秀な方が多く、前職よりもしっかりしたスキームが組まれていました。大手でやってきたことが何も役立たないと想定していましたが、一部は活かせています。
いまはANYCOLORに入社して1年ほど経ちますが、「強い組織をつくれる管理部長・CFOを目指す」というゴールは変わらないです。
でも、本で読んだ内容と実際に仕事してみた内容は全然違いました。
経理ができることの少なさもそうですし、管理部全体を見ることの大変さも、事業を伸ばしていくことの大変さも。
本の内容のとおりを目指してみても、そう都合よくは進まないよなぁということですね。
大手もベンチャーも経験した今、思うこと
――前職の経験でいまに活かせていることを、教えていただけますか?
会計知識と実務、エクセルスキル、それから仕事を進めるうえでの思考法やビジネスマナーは、大企業での下積みがあってよかったなと感じます。
メールの書き方、人に伝わる文章、目上の方や外部の方とのやり取りの経験などが、今も活きています。
経理のやることや求められていることはそんなに変わらず、ひとつひとつ地味なことの積み上げで、大手企業にもスタートアップ企業にもよい面があるため、フェーズや得たいキャリアで考えるべきだと思います。
――ベンチャー・スタートアップには、どんなタイプの人が向いていると思いますか?
活躍されている方は、大手・ベンチャー共通して「誠実な人」。
そのうえで、ベンチャーに向いている人をあえて挙げるならば、
「ベンチャーに行きたいと考える人」です。
新卒時は「ベンチャーは怖い、不安定かも」と思っていましたが、今は資金調達で多額のお金が動く時代ですし、そこまでリスクはないのかなという考えに至りました。
転職を決めた私に「理解できない」「なんでわざわざそんな小さい会社に?」と言う人もいました。
価値観の話ですよね。
たとえば大手企業では、先週やっていた会議の内容が翌週ニュースで流れるような規模のダイナミックさがあります。関わる人の数も多く、皆さん優秀なので刺激を受けます。
自分が影響を与える人の数も多いし。福利厚生もぜったいに良いし。
その点を魅力に感じるのも、ひとつの価値観です。
よりトップに近い層でマネジメントを経験したり、経理として組織に貢献したいという意識が強かったので、先に挙げたような大企業のメリットがあまり魅力的ではなく、わたしはベンチャーを志望しました。
その人の考えで、行きたいほうに行けばよいのだと思います。
迷ったっていいのだから
――「このままでいいのかな?」とキャリアについて迷っている方へメッセージをお願いします!
転職活動をしてみた結果、実際に転職をするもしないも自由なので、まずはエージェントや企業の人から話を聞くのがよいと思います。
最も手間なのが履歴書とか職務経歴書の用意だと思います。もしもそこで億劫になるくらいなら、エージェントさんとすり合わせをしてつくるのがいいと思いますね。親身になってくれるエージェントの方はつくり方も相談に乗ってくれます。
とにかく1回話を聞いたら、自分の中で「いいなor興味ないな」のジャッジができるでしょうから、それをしないで二の足を踏んでいるよりは、エージェントさんや企業さんに話を聞きにいったほうがいいと思います。
メリットデメリットを考えるよりも、行動して、内定が出てからまた迷ってもいいのではないでしょうか?
――最後に、転職の報告をした際の、小松さんのご両親の反応が知りたいです……!
おどろいた様子で、長時間の説得を要しましたが、最後には応援してくれました。
「話があります」と切り出したのは、帰省をしたときです。正座しながら。
父からは
「ベンチャーって、何?」
と聞かれました。
今の世の中、選択肢は大企業だけではないということに理解がある父ですので、ベンチャーだからダメだという意味ではなく、そもそもどんな企業なのかがわからなかったようでした。
「VTuberって、何?」
とも聞かれましたね。
「目標を明確にしなさい」「自身を助けてくれるスキルや資格やキャリアをつくっていかないといけないよ」
ということを言われましたね。6時間ほど(笑)。
そんなこともありましたが、最近ではにじさんじのCDを私より先に母が知っていたり、YouTubeでライブ動画を見つけて情報をくれたりします。
今や私以上のにじさんじファンのようです。
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小松さん、ありがとうございました!
ANYCOLOR株式会社 https://www.anycolor.co.jp/
「魔法のような、新体験を。」
VTuber / バーチャルライバープロジェクト『にじさんじプロジェクト』をはじめとし、海外VTuber事業や新規事業を行っているエンタメ系スタートアップ。最新の技術を駆使し、新時代の切り込み役として社会に対する思いを形にし、世界の人々の日常に魔法のような体験を提供。
2022年、東京証券取引所グロース市場へ上場。
※写真はすべてANYCOLOR六本木オフィスにて撮影
※写真撮影時のみマスクを外していただきました
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