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【Ching-Oの日常】この(葬祭業)世界の片隅に。

 ちょっと前に、主にTwitterで「amazonで棺桶が買える。これからはこうして自前でやる直葬の時代になる」という話が流布した。出所は小さな「棺桶工房」の代表の方のツイート。その方は直葬をもっと身近なものにして、それをサポートする事業を考えているようだ。お金のない人でも満足のいくお別れができるようにしたいという。喪家が負担する葬儀から火葬にかかる金額を設定しているのは常に葬儀屋である。この話題は、葬儀から火葬に発生する料金を自分でコントロールできない実態から生じた不満に応える形で拡散したのだろう。「Amazon棺桶」より「葬祭扶助」について知るべきという意見も目にしたが、それは生活保護受給者の場合に限られるので論外だ。
しかし、きちんとフォローしていないが、この代表の方の考えるサポートはどこまでなのだろう?あくまでもサポートでアドバイスをする立場にとどまるなら、ただの相談員であってネットで得られる情報以上のものを提供できなければ意味がない。近親者に死なれて途方に暮れる親族にとって一番助かるのは、整理のつかない心境の自分に代わって動いてくれる人だろう。しかし、それでは従来の葬儀屋と変わらない。その線引きはいったいどこなのか?
 ネット予約の安い直葬を売りにしている葬儀屋も増えてきていて、ついにはイオンまで乗り出してきている。それでも自身で行う直葬を行うべきか?ブログやSNSで、自分でテキパキ動いてamazonで棺桶を買い、書類をそろえ、火葬場へ電話を入れたりと万事済ませた体験談を語れる人は「金がない人」ではなく「DIY精神あふれる人」なだけだと思うのだが・・・。極端な話をすれば、火葬場の予約が7日後となったとき、棺に納めた遺体の世話をしながら7日間暮らせるか。もっと言うと組み立てた棺桶に納棺した遺体を自宅から搬出できるか?道路側に大きな窓がある部屋でなければいけないし、そもそも大きいストレッチャーを用意できるか、また集合住宅ならエレベーターの広さは充分か。まずそこから考えて手段を選ばないと。安易に「直葬」という考えだけを広めるのは安易であり、危険だと思う。
 まだ2年足らずだが、業界に極めて近い場所に身を置いて感じるのは「生前予約」の重要性。生前に自身の納得のいく内容で契約してしまえば、ドライアイス代くらいはかかるかもしれないが、大きな変動が金額に生じることはないだろう。しかも前払いならなおさら思い残すこともないかもしれない。そして、実際に「生前予約」を売りにしている業者も数少ないが存在する。
 それにしても、なんだか経済的な余裕のなさは普段、心の余裕すら奪っていっているように思えて仕方がない。

どっちみち嫌な話ですよ。

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