チネが肩の手術をした ‐エスパニョール選手寮生活日記55
数日前、チネが言ってきた。
「KAZU、オレ明日手術があるぞ」
しばらく前に書いたが、フベニールAの正GKチネは肩を怪我している。
実は最近「チネの肩は結構大変らしい」ということを聞いて、心配していたのだが、いきなり言われたから素直にビックリした。
手術から4日後、チネが部屋に帰ってきた。
なんというか、いや、ホントになんていうんだろう。
ギブスじゃないんだけど、肩から右手にかけて包帯で固定してあって、その包帯はお腹のところを2周ぐらいしている青色のサポーターとくっついている。
右肩の腕の付け根あたりにはテープがはってあった。おそらく切開したんだろう。
2段ベッドの下側がエスコのベッドで、上側がチネのベッド。上側に登るのも、左手で「うんとこしょ」ってな感じでよじ登るイメージ。
「何ヶ月かかるの?」
「一ヶ月で包帯がとれて、プレーするまで4ヶ月かかるってさ」
「痛む?」
「ちょっとね」
私は考える。
こういうとき、ライターとして何を聞けばいいのかな?
質問したいことは、いろいろと考え付く。「怪我したときの心境は?」「試合に出られないのは悔しい?」「ミッキィが代わりに活躍してるけど、嫌な気分?」「彼女はなんていってる?」・・・いくらでも出てくる。
別にチネ自身は落胆してる様子じゃない。
聞いたら答える明るいやつだ。
でも何だか、何も聞く気がしなくなった。
私自身も高校の時、バスケで膝に軽い疲労骨折をしていたことがある。
「試合に出られないの悔しい?」と聞かれれば、「悔しいよ」と答えただろう。
そんなもん、国が違おうが考えることなんか対して変わらない。
むしろ、もし寮に入ったばかりの時なら、いろいろ興味を持って聞いていたかもしれない。
でも4ヶ月彼らと一緒に生活してきて、別にスペインでも日本でも、基本的なもんは何も変わらないってことに気がついた。
聞くだけ野暮ってもんもある。
そんなことより、チネがケガをしてから数日間、ベッドの上で「肩いてぇ~」と言っていた事や、多分気を紛らわしたかったんだろう「『肩いてぇー』って日本語で何ていうんだ?」って聞いてきたり。
ケガした直後に携帯電話がつぶれてイライラしていたこととかの方が、よっぽどチネという一人のサッカー選手に対して愛着がわいた。
チネが言ってた。
「KAZU、見ろ見ろ。Yo, Robot(ヨ,ロボット)」
(ウィル・スミス主演の映画「iRobot」。スペイン語にすると「Yo(I), Robot」)
私は今のチネの写真を撮って、「Yo, Robot」のポスターと合成して持ってきてやろうと思った。多分、笑ってくれるはず。
<2004年12月23日日記>
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<再編集過程で何かしら協力してくれた人たち>
『人生RPG攻略』 https://okekolog.com/