関西エアビー 体験 取材その2 「ガイドブックには載っていない神戸 塩屋」
体験名:Kobe, Shioya, a quaint fishing town (ガイドブックには載っていない神戸 塩屋)
体験ホスト:Sumileさん(女性 元添乗員)
所属:face to face
体験開始時期:2018年1月
これまで参加したゲスト数:約170人
体験内容:古き良きコミュニティの残る港町の塩屋にて、地元ガイドが生活者の視点から町を案内。港、海苔の工場、商店街のお店(魚屋、八百屋、揚げ物屋など)、神社、洋館を巡る唯一無二の生活文化体験ツアー。まさに地元の人にしかできない、地域密着型ツアーの究極版。
ツアーのハイライトは、商店街の豆腐屋の前を通った時に訪れた。
豆腐屋さんが「○○くん(Sumileさんの子供)、帽子落としとったから、学校届けといたで!」
Sumileさん「え、ほんまー。ありがとう。体育の時間午後やから間に合ったと思う。ほんまありがとー」
子供も顔見知り。通学路、学校の場所や時間も把握。その上でのこの豆腐屋さんの対応とSumileさんの返し。塩屋コミュニュティの良さとその中にSumileさんが溶け込んでいる様子が、強烈に印象付けられて、アメリカ人参加ゲストのワレッドと声を上げて大笑いをした。なんなんだこのツアーはと笑。団体バスツアーではまず起こりえない光景だろう。
トップの写真は、Sumileさんが仲立ちをし、豆腐屋さんとワレッドが別れ際に握手をするシーン。たまたま撮れた1枚だが、「日本と海外の架け橋になりたいという高校時代からの夢が具現化されたショットで感慨深く泣きそうになった」と喜んでもらい、face to face(Sumileさんの屋号)のHPにも使っていただいている。今回は初っ端から、度肝を抜かれて始まったが、私にとっても最後まで思い出深い体験ツアーとなった。
時系列で紹介しよう。駅でSumileさんの出迎えを受け、地図を使った塩屋の案内の後は、港へ向かった。漁船が並び、海苔の水揚げがされている。ワレッドは、父親の故郷が漁村だそうで、懐かしい気持ちになり、もう塩屋を気に入ったようだ。海苔屋さんを訪れ、人懐っこい犬と遊ぶ(ワレッドは犬好きで大興奮)。商店街では、地元の高校生に人気のコロッケと、魚屋さんの新鮮なお寿司を、Sumileさんがご馳走してくれた。果物屋、パン屋、豆腐屋と次から次へと地元名産を買ってもらい、ワレッドと私は段々とうっとりとした気持ちになっていった。ところどころ入る、Sumileさんの地元プチ情報が面白い。神社では神道の解説があり、丘の上の洋館では塩屋の歴史の解説があり、最後は商店街のコミュニティセンターで商店街中から集めたSumileさんおすすめの食べ物を楽しみながら雑談してお別れ。とても温かく、美味しくて、思いやりがあって、なんだか塩屋のことが羨ましくなるツアーであった。そして、これこそが地元密着型ツアーの究極版だなと、同業者としてSumileさんの取り組みに敬意を感じずにはいられなかった。
【Sumileさんへのインタビュー】
Sumileさんの体験を始めたきっかけは、実にユニークだ。Sumileさん自身も、大の海外旅行好きで、個人旅行・添乗業務を通じて40カ国以上の渡航歴があり、有名観光地も多数訪れている。その経験から、本当にその国らしさを知るためには、「大都市・有名観光地」ではなく、「路地裏・市場」にこそ素顔が隠れていて、旅をしていて面白いという信念が培われた。また、彼女のもう一つの趣味として、海外でヘアサロンに行くというのがあった。ヘアサロンには、言葉、音楽、ファッションなど全てローカルの凝縮があり、行くとその国のことをもっとよく知ることができるというのだ。
「体験をはじめたきっかけ」
「路地裏・市場・散髪屋」の三拍子揃った塩屋
自分の普段の生活に目を向けて見ると、海外の人を連れて来たいコミュニティの中心ともいえる散髪屋があり、市場も活気がある。自分の町塩屋には、自分が旅をしていて魅力に感じる、「路地裏・市場・散髪屋」の三拍子が揃っていた。自分と同じように、ガイドブックには載っていない小さな街を楽しんでもらえるような人が世界にはいるのではないかと思った。それがツアーを始めたきっかけ。
高校時代から憧れていた通訳ガイド
高校時代から通訳ガイドに憧れていた。だけど、世界中の多様な文化を持つ人をガイドするには経験が足りないと思っていた。サービス業は想像力がとても大切。想像力を持つためには、自分自身が様々な文化を知り、そして学んで、何より自分の足で行くことが大事。若い頃はアウトバウンドで海外にたくさん行ける。だが、結婚して子供ができたタイミングで、インバウンドに切り替えようと思っていた。思えば、この訪問経験は今となっては宝。
だけど当時は、正直インバウンドの風がこんなにくるとは思っていなかった。
今は風が止みかけてるけど笑(2020年3月4日現在)
原体験となるママ友グループの案内
塩屋には100人くらい外国人居住者がいる。オーストラリア人のママ友を通じて、7人くらいの外国人に塩屋をボランティアで案内したら、ものすごく喜んでくれた。彼らも塩屋に住んでいるけど、ウェスタンな暮らしで、車でコストコに買い物しにいくような感じで、言葉もわからないから商店街での買い物は基本的にしていなかった。だから、地域の人とコミュニケーションを取れたことがとても嬉しかったみたい。それで塩屋ツアーの手応えを感じたので、ツアーのきっかけをくれたオーストラリア人の友人にはとても感謝している。
「体験ホストをやってよかったこと」
体験ホストは学びの宝庫
「学べる」ということに尽きる。新しいことを知ることができる。知っていることも深掘りできる。世界が広がる=Open My Eyes。
子供にそれが言えるのも嬉しい。子供はあんまり聞いてない感じのことも多いけど、なにかが残るだろうなと信じている。
日本はしがらみが強かったりで、生きにくいところがあったけど、世界は広くて自由なんだと楽しさを実感する。自分が旅をしていて感じた同じ喜びを、体験ホストをしていて感じることができる。
「体験をする上で心がけていること」
徹底した塩屋人ファースト
始めたときから心に決めていた。住んでいる人の日常生活、住んでいる人の気持ちが一番大事。住んでいる人に疎ましがられたらこのツアーは終わると思っている。始めたときは、インバウンドの弊害がメディアで騒がれていた時分。「都民ファースト」になぞらえて、「塩屋人ファースト」を徹底して行いますと、商店街で挨拶周りをした。ゴミが出ないように等、ものすごく気を使った。ただ、実際にゲストが来てみたらとてもいい人ばかりで、恐れていた問題は起きなかった。少人数なのもよいのかもしれない。人数が10人近くになる場合は、街に迷惑をかけないようアシスタントスタッフをつけている。自分自身も、塩屋に貢献したいという気持ちから、前職の経験を活かして、無償で町内ツアーの添乗員役を自ら買ってでてツアーに行ったりしている。
ガイドの矜持
ツアー内容は始めた頃から少し変わっている。また、お客さんによっても変えている。シニアの方なら座る時間とか増やしたり、カップルだったら2人だけの時間を作ってあげたり。コースは基本変えていないけど時間配分を変えている。また、自分のマンネリ感をださないようにするのが課題。自分自身もフレッシュになるため、毎回のツアーで何か新しいことを入れてみるようにしている。
「ここが自分の体験、自分の強みと感じているところ」
究極のローカル体験
Extremely Local。One And Onlyの街、塩屋を案内。One And Onlyの地元のおばちゃんが案内。
体験は、自分の分身で子供のようなもの。産みの苦しみもあるし、育っていくもの。
「塩屋ツアーで目指していること」
1塩屋のよさを世界中に広めて、楽しんでもらう
2世界中の人が塩屋に来ることで、塩屋の人たち・子供たちに塩屋を誇りにもってもらいたい
3世界の交流を通じて、相互理解を深めて、世界平和へ通じたい
「世界平和」こそが観光産業の使命。根っこにはいつもこれがあって、次の子供達の世代へ残していきたいという思いがある。体験ホストは、民間親善大使。いい加減なこと言えないから、いつも電子辞書をポケットに忍ばせている。
【外国人ゲストのレビュー】
「なんて美しい経験でしょう!大都市から離れて小さな町を探索するのはとても素晴らしいことです。スミレはとても素晴らしく、親切で、知識があり、とても話しやすかったです。彼女には塩屋に対する強い情熱があり、塩屋は本当に知る人ぞ知る穴場でした。この体験ツアーに参加し、とても幸せです!」(ワレッド)
(原文)
「What a beautiful experience! It is so nice to step away from the big cities and explore the small towns. Sumile is so nice, so kind, so knowledgeable, and so easy to talk to. You can see the passion she has for Shioya and it’s because it’s really a hidden gem. So happy I went on this experience!」
関西エアビー体験 取材その1 「パスポートが不要な西成共和国」