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【交換日記】東京からの手紙

10月9日

祖母がまた入院したらしい。
88歳になる祖母は、長いこと胃腸を患っている。9月に札幌へ行ったときも入院していて、病院食に元気に文句を言っていたので安心していたのだが、短期間で再入院となると心配だ。
ちょうど仕事が空いたので早めに会社を出て、家と反対方向の電車に乗った。

上野駅に到着、小雨が降っている。
すっかり様変わりした公園口から出て、上野公園内へ。
向かったのは、不忍池近くにある五條天神社。先ほど会社のパソコンで調べたところによると、医薬神社と言われていて、病気平癒に効果があるらしい。神頼みをしにきたのだ。
境内には赤い鳥居が連なっており、外国人旅行客がたくさんいて写真を撮っていた。わたしもつられて撮る。
鳥居のところには人がたくさんいたのに、本殿の前には誰もいない。賽銭箱に100円を投げ込んで、祖母の健康を祈った。
社務所でお守りを買う。「病気平癒」と「健康」にした。後者はついでに買ったわたし用だ。

用事が済んだので、どこかでお茶を飲んで帰ろうと思い、神社の横にある「喫茶去」をのぞいてみた。人気の喫茶店で、やっぱり満席で入れなかったのであきらめて少し歩く。美術館のカフェにしようかな。

国立西洋美術館の前に行くと、平日の午後なのに行列ができていた。ミュージアムショップもカフェも入れそうにない。なぜだろうと思ったら、「モネ展」がはじまっていたからだった。みんなモネ好きだよね。
ここのカフェは好きなので残念だったが、東京都美術館まで行くことにする。そちらでは「田中一村展」をやっていた。せっかくなので見ていく。日本画の類はあまり得意じゃなくて、よくわからなかったけど、鮮やかな色彩と、色紙や掛け軸におさまらないような様子がきれいだ。
色紙に描いた絵なんか、真四角に近くてインスタ映えしそう、と思ってちらっとインスタをひらいたら、なんとサムネイルが全部縦長になっていた。いつから? スクエアにプライドはなかったのか? ちょっとショック。

ミュージアムショップで田中一村の絵のハンカチと、レターセットを買う。
3階のカフェがまたまた満席だったので、となりのレストランに入り、ティーフロートを頼んだ。
ここのレストラン、景色もいいし精養軒が運営しているのに、接客がつめたいんだよな。とても残念。
ティーフロートのアイスを食べてから、先ほど買ったレターセットで祖母への手紙を書きはじめた。だけど、文章がうまくつながらなくてやり直し。まずは手持ちのメモ帳に下書きをしてから、清書した。手紙って難しいな。

こどものお迎えに寄って家に帰った。
「妙子さん、また入院してるんだって」と伝えると、ぼくもお手紙かく、と言ってくれる。ポストカードを渡したら、「はやくげんきになってね」と書いて、ニコちゃんマークのシールをたくさん貼っていた。
明日、朝一番にポストに出しに行こう。

妙子さんへ
10月になって、やっと秋らしい気候になってきましたね。
東京は、昨日30℃で今日は17℃で雨、などで、毎日天気に振り回されています。
9月は会えてうれしかったです! 面会時間があっという間で、あまり最近の様子など話せなかったけど、笑顔が見られてよかったです。
また入院になったと聞いて、少しでもはげましになれば、と手紙を書いてみました。
思えば、妙子さんからはいつもあたたかい手紙をもらっていたのに、全然返事を書いていませんでしたね。だらしない孫でごめんなさい!
あまり話したことがないと思いますが、私は妙子さんにずっと憧れています。おしゃれでかっこよくて、はっきりしていて、きちんと自分を持っている女性として、尊敬しています。
高校の時、転校した先で華道部に入ったことや、化粧品はランコムなら間違いないと思っていること、妙子さんへのプレゼントを選ぶのがいちばん緊張することなどが、その証拠です。
私も80代になってもビールを飲めるように、とりあえずダイエットを頑張ろうと思っています。
最近は、夫と大げんかしたりして、ちょっとだけ「札幌に帰ろうかな…」と思う時がありました。だけど、家族のためと、自分のためにいろいろ考えて、もうちょっと東京で頑張ってみようと思っています。
なかなか会いにいけないのはさみしいですが、次に会った時には妙子さんの育児や家族の思い出も聞かせてください! ビールを飲みながら、だといいな。
上野の五條天神社でお守りを買ってきたので同封します。
入院、大変ですが頑張ってね!
孫より

手紙本文。わたしは祖母のことを妙子さんと呼んでいる。

ぱくえみさんからのお題「最近読んだ本」

文学フリマやZINE FESで買った本たちがたくさんあるのだけれど、
最近(脳内が)忙しくてあまり読めていない!
ネットの記事で「積読は年6冊」みたいなのがあったが、わたしの積読は既に本棚1つを占領している…こわい…

そんな中でも、パリッコさんの『缶チューハイとベビーカー』はあっという間に読んでしまって、とてもよかった。タイトルを見たときにもう「わたしのための本だ!」と思ったし、パリッコさんのお酒の話はハズレがない。

ぱくえみさんとり、さんは、車に乗るから、缶チューハイとベビーカー、はやったことないかもしれないけれど… わたしは、よく水筒に缶チューハイを移し替えてベビーカーのドリンクホルダーに差して出かけていた。
井の頭公園をぐるぐる散歩して、こどもが寝たらベンチで飲む。
「そこのスタバでテイクアウトしました」みたいな顔をして、チューハイ。飲みに行く機会が激減してたから、楽しかったなあ、あれ。

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