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シケモク亭 灰皿。
2021年5月19日 03:05
あれはもう10年も前の夏のことだった。その年は昨年始めた中古品の売買サイトが波に乗った年だった。そしてその夏、野望を胸に100キロも先の街にオフィスを構えることが決まった俺は馴染みのパブに飲みに来ていた。 「まさか仕事でこの町から出ていくやつがいるなんてなぁ。」未成年の時からこっそり酒を飲ませてくれている髭の店主が言った。俺の童貞はこの人がいなかったら未だ健在だったかもしれない。お気に入
2021年5月12日 06:05
寝付けなかった。 その日は爽やかな陽気で、風が春を運んでくる。そんな日だった。空いた窓から風が届けてくれる世界に身を投じて午後を過ごした。 「少しお腹がすいたな。」外は照り付ける陽から、包み込む陽へと変わっていた。 「冷凍餃子でいいか。中華は常に美味しい。」 お腹を満たすとすぐ風呂に入った。ぼんやりと時間が過ぎていく。気が付けばテレビの中の豪華客船が沈没していた。 部屋の明か