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フランスの匿名出産の現場から
以前こちらの記事で、日本と韓国の内密出産について紹介をした。ここでは、予期せぬ妊娠で生まれた子供のケアに焦点を当てる日本と、予期せぬ妊娠をした女性たちを一貫して支援する韓国の実情について書いた。
以前から内密出産には関心があり、関連記事などは積極的に読むようにしている。そして先日偶然朝日新聞でこちらの連載が始まったことを知り、新聞記事を全て読んだ。
私がフランスに留学をしていたとき、ホームステイ先にはマダムの孫や近所の小学生がしょっちゅう遊びにきていて、私はその子たちと庭で遊びながらフランス語を習得していった。その時、なんだか地域全体で子どもを育てている感じがしたのだ。
フランスの学校はとにかく休みが多く、「え?また休みなの?」と驚くことばかり。でも子供だもん、思いっきり遊ぶ姿はなんだか微笑ましかった。親もそれに合わせてしっかりバカンスをとる。一緒に働いていたエステティシャンのマリアは、しっかり育児もしながら、フランス国内で最上級のエステティシャンの資格を持ち、お客さんが絶えなかった。こうして出産や育児によってキャリアを諦める人が少ないというエピソードはたくさん聞いてきた。
そしてフランスって子供が多いなと感じていたのだが、事実2000年ごろから出生率が上昇したらしい。2021年のデータではあるが、フランスの出生率は1.83だ。(日本は同年で1.30)
だが、フランスでも予期せぬ妊娠に苦悩する女性たちがいる。
朝日新聞によると、
フランスでも匿名出産は、自分で子供を育てられない女性が、出生証明書に母親として名前を載せないことを前提に医療機関で安全に出産できる仕組みだ。
この歴史は長く、1793年から公的に認められ、1999年に民法に明記されたという。
そもそもフランスでは、母親も父親と同じく、産んだ子を認知するかを選べるし、どちらも認知しなければ、その子は『国の子』となる。
フランス全土にこのような女性達を受け入れる仕組みがあり、医師、助産師、看護師、心理士、ソーシャルワーカーなどの専門職が連携して妊産婦をケアするのだという。
フランスの匿名出産で最も大切にされていることは、
・女性にプレッシャーをかけないこと
・チームはあたたかいニュートラルを持って、女性自身が決断をする環境をつくること
だと記事には書かれてあった。
また、「女性に決断を強要することは、虐待であり、暴力です。」という専門病院のスタッフの言葉は、今の日本の状況を鑑みると、非常に重い言葉である。
匿名出産を選んだ女性であっても、産後2ヶ月までは撤回ができる。だが、思わぬ妊娠、出産だけでなく初めての育児に戸惑う女性も多く、母子ともに入院をしながらスタッフがサポートするのだという。
もちろん生まれてきた子供の『出自を知る権利』も守られ、専門の諮問機関により情報は守られている。だが、ここで特出すべきは知りたい子供と秘密を守りたい母親、どちらの権利も尊重される点だ。
日本では、熊本県の慈恵病院で内密出産を行なっているが、
妊娠を誰にも知られたくない女性が、相談窓口で身元を明かして出産するように諭されたり、説得されたりしていたケースもあった。〜中略〜
考えを押し付ければ、女性との間に距離ができ、結果、女性と赤ちゃんを見捨てることになる、と指摘
しているという。
匿名出産をした多くの女性が、我が子の幸せを願いつつも、出産後も罪悪感に苦しんでいる。女性自身も大きな傷を抱えながら生きていくこと、そして何十年と匿名出産を選んだ女性達を継続的にサポートしている団体についても紹介されている。
私が結構衝撃的だったのは、最終回のこの文章だ。
国が女性の身体を管理し、たくさん生ませようとすればするほど女性たちは子どもを産むことに関心を持たなくなる。〜中略〜女性が望まないタイミングで妊娠、出産をすることは子どもの虐待リスクにつながる。
これって今の私たちの国じゃない?
最後にはこう締め括られている。
女性が社会のなかに居場所があり、選択できることが重要。女性は幸せにならなければ子どもを産みたくならない。
私はフランスのソシオエステティックを学んだ身として、こういう取組みの速さがフランスのすごいところだなと思っている。
日本の内密出産については、現状熊本の慈恵病院が最も有名だろう。
だが、出産直後に子どもを殺めてしまうケースは後をたたず、そして少子高齢化がますます加速していく中で、今になって子育て支援政策を初めても、もはや手遅れなのではないかという嫌な雰囲気が漂っているように感じる。
今の若者は違うかもしれないが、私たちの世代は性教育すら「寝た子を起こすな」の考えであまり積極的に教えてもらえなかった。自分の望んだ時に、安心、安全に出産ができるためには何が子供達に必要なのか?性教育はその一つだろう。
また、もし望まない妊娠をしたとしても女性だけが責められるのではなく、社会全体で子供を育てる仕組みを一刻も早く政府には推進して欲しいものである。
子供を産まなかった私が言うのも烏滸がましいが、私は一人の大人としていつも子供達を静かに見守っている。
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