人生を変える一本を
昔から香水が大好きだった。香水を洋服を着るように纏うフランス女性に心底憧れていた。
だから家には10本以上持っていて、気分に合わせて使っていたのだが、職業柄香水はご法度なので、今まで使い切ったことなど一回もない。
先日10年ぶりに引っ越しをするにあたり、その香水たちを新居に持っていくかどうか悩みに悩んだ。
でももうどれも古いし、結局全部捨てることにした。
すでに経験されている方も多いと思うが、香水を捨てるのは厄介だ。
まず蓋が外れない笑
運よく外れたとしても瓶が割れて怪我をする可能性がある。そして香りが手についたら、3日はその匂いが取れない(おかげで食欲がなくなった)
最終的には原っぱでゴミ袋にボロ布を敷き詰め、ゴーグルとマスクと手袋をつけて、1時間近くシュッシュッシュッシュと両手持ちで全ての香水を出し切った。
ど田舎の草の匂いしかしない場所に、数日サンローランの香りが漂っていたのは言うまでもない笑。
そんなに苦労したのに、また香水が欲しい衝動にかられる。
以前から次に香水を買うならココ!と決めていたパフュームリーがあった。
それがこちら。
まだ日本には2店舗しかないFUEGUIA(フエギア)。以前スタイリストの大草直子さんが、FUEGUIAの調香師さんのセンスを大絶賛していたので、香水好きとしては試さずにはいられなかったのだ。まず驚くのが、香水の香りを移したフラスコの数!どの香水がいいのか全然わからない!そしてあまりの高級感に若干腰が抜ける。
話は変わるがフランス留学時、エステティシャンの資格を取るために香水販売の授業もあった。お客様が誰に(自分に?プレゼントに?)、どんな人で、どんなイメージで、どんな年齢で、どんなシチュエーションで贈るのかを、店員は聞き出して、トップからの全てのノートを把握し、説明しなくてはならなかった。
というわけで、今回はその時お客様になった時の気持ちを思い出して、スタッフさんに色々と伝えてみた。
咄嗟に出た言葉が、
「人生を変える一本を見つけたい」
もちろん苦手な香りもあるのでそんなこともお伝えし(ムスクとかイランイランやフランキンセンスは苦手な方)とにかく「私!」という個性的な香りに出会いたい、とだけ伝えてみた。
「わかりました。ここでちょっとお待ちいただけますか?」とスタッフさんが6種類のフラスコをチョイスして持ってきてくれた。
これは好き、これは嫌い。
元々直感で物事を決めることが多いので、好き嫌いはあっさり決まる。まずスモーキーなものはイメージに合わない。
そして果実(イチジク)のような香りのするものにとても心引かれて、それを残してもらった。
再度同じ作業を繰り返し、順位付けをする。するとスタッフさんが「大体わかってきましたよ」と。
最終的に3つに絞り、最後に残ったのが一番好きだったイチジクの香りのするものだった。
その時スタッフさんに言われたのが、「個性的なものをと仰っていたけれど、選ばれたのはみんなに好かれる香りでした。そして最後に選ばれたのが・・・・」
Huemul、別名キラーパフュームと呼ばれるほど、人(特に異性)を惹きつける香水なのだとか。いわゆるセデュクション系?潜在意識の中で、この香りを選ぶなんて・・・・しかも嫌いなムスクなのに、全て自然のものから抽出しているからか、不快ではない。
この香水を選んだことに驚きつつ、最近ある方に「運気として人を惹きつける引力みたいなものを元から持っていらっしゃるんですよ〜」と言われた。
当たり前だが自分ではその自覚はない。あえていうなら、悪い虫しか寄ってこなかった。
そんな話をしていたら、じゃあもう一本!とスタッフさんが紹介してくれた香水があった。
それが「Muskara Phero J.」
フェロモンの構造を自然の植物から作り出したというもの。調香師が「女性のために作った香水」と言うほどなのだとか。香水といっても、全然香りがしない。むしろ人それぞれの肌の状態(温度や皮脂など様々な条件)で、その人だけのオリジナルの香りを放つ。私はシトラスのような柑橘系の香りがしたが、スタッフさんはチョコレートの香りを感じるそうだ。女性ホルモンのバランスを整え、ハッピーにしてくれ、周りの女性も「いい香り〜」と感じてくれるそう。
よし、この子を人生を変える一本にしようじゃないか!
素晴らしいスタッフさんとの出会いもあり、なかなかディープな会話を二人で繰り広げていた笑。そして最高の一本を見つけることができた。
早速お風呂上がりと朝につけてみる。基本ムスクだが、私にはイチジクとかパウダリーな感じがして、幸せな香りに今も包まれている。
香水を付けないのは裸でいるのと同じ・・・という名言を残したのは誰だったか?
いわゆる「香害」が問題になることもあるが、私の場合インスピレーションを刺激し、女性性を高めてくれるアイテムの一つだと思っている。そして調香師の感性と香りのもつユニークさが、その人の個性となって現れるのだと、改めて感じている。