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長くて暗い「美鈴問答」 愛国者学園物語

 なぜ、「愛国者学園物語」第3部の「美鈴問答」が長くて暗い内容なのか。それは愛国者学園の根本思想について考えるためだ。

愛国者学園は神道、皇室、愛国心を『過度』に賛美し、それ以外を見下すという日本人至上主義を子供に叩き込む学校。だから、学園についての物語を書くには、その根本思想である日本人至上主義を明らかにしなければならない。それについて、ある程度語れば、自ずと学園の物語は動き出すはずだ。

 この物語を書き始めたころは、学園とその周辺の人たちだけを書けば、物語がまとまるだろうと私は思っていた。だが、学園の根本思想を語らねば、学園の描写は薄っぺらいものになる。

 なんであの学校の子供たちは、世間一般の子供たちと違って、宗教や愛国心について熱心に語り、天皇陛下万歳を叫ぶのか? その思想を明かさなければ、理由もなく、そういうことをしゃべりだけの変な子供たちになってしまうだろう。

 私は、日本の宗教である神道、日本の王族である皇族、それらが存在する日本を守る愛国心を『過度』に賛美し、子供に教え込むような学校は世界の注目を引くだろうと思った。だから、私はホライズンのように外国のメディアや、ルイーズのように愛国者学園に関心を持つ外国人を登場させた。そして、遠回りのようであるが、日本人至上主義について考える、「美鈴問答」を用意したのだ。

 そして、この第3部は、第4部の前奏曲のような存在である。この第3部では美鈴たちが延々と話しているが、それは、愛国者学園の根本思想である日本人至上主義について、主な論点を明らかにして、読者に提示するため。またこれは、将来、美鈴が学園の関係者と議論するときの準備運動になる部分である。その「議論」は第4部の柱になる。

 また、この第3部は、美鈴たちの議論の仕方が、愛国者学園の子供たちのそれと比べて正反対になっている。子供たちと彼らの周囲にいる人間たちは日本人至上主義しか学ばない、知ろうとしないが、2人はその反対。世界の多くの事例を取り上げて議論の参考にする方法は、愛国者学園の教育とは真逆のものだ。それは学園の教育に対する私なりの批判でもある。

 現在公開している物語では、学園の教育について詳しい紹介というか、描写は少ない。第1部がそれを担うはずだったのだが、私の「設計ミス」で、不十分な仕上がりになっている。私は第4部を書き終えてから、第1部の前半を書き直すつもりでいる。従って、その際に、学園の教育についてある程度詳しい描写をすることにする。

 

 このようにまとめると、愛国者学園は愛国教育なんか出来るのか、と思う読者もいるだろう。日本の学校教育は文部科学省の学習指導要領に沿って行われるはずだから、そういう教育をするのは無理ではないか? 架空の学校とはいえ、愛国者学園は文科省の管理下にある設定。だから、指導要領は無視出来ない。しかし、学園はある方法で愛国教育をしている。その具体的な方法は、物語の中で明らかにする。第1部の前半を書き改めるとき、学習指導要領と愛国教育の関係を書き加えるつもりでいる。

どうか、気長く読んでいただけたら、私はうれしい。


写真はタイ・バンコクのチャオプラヤ川にて 2010年7月。もう11年前の写真だ。



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