【初コラボ記事】屋上ファンの369daysさんと、サイレント映画『キートン将軍』を観た!!【90年代話も】
先日、お友達のmikkoさんから
というご提案をいただきました。
そこで去る2020年3月7日土曜日、369daysのお二人と「サイレント映画を観て意見交換をする」コラボ企画を実施しました。今回はそのイベントの様子をどどーんとお届け!
369daysさんの記事は『【コラボ記事】言葉はもういらない!無声映画ファンのジェリーわたなべさんと巡る渋谷~SHIBUYA SKY・名曲喫茶ライオン~』として公開されています!
369days(ミルクデイズ)のお二人
mikkoさん(以下、mikko)はビルの屋上や遊園地が大好き、エネルギーあふれる女性。合法で入れる廃墟等も愛する。後述のmilfordさんと共に369daysとして精力的に活動中。ジェリーわたなべとの出会いは、変わった食べ物を紹介している謎フード公安委員会のオフ会。オススメの映画は『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)。
milfordさん(以下、milford)は、写真やデザインをこなす器用な男性。寡黙ながら、胸に情熱を秘めている。ワイルド・スピードシリーズ等のアクション映画が好き。mikkoさんと369daysとして活動しており、『屋上とそら』というフリーペーパーでコラムを連載している。
国内外の遊園地を臨場感たっぷりに紹介されている、369daysのブログ「dreamrise!‐津々浦々のおでかけスポットを紹介します。」をぜひのぞいてみてください!
サイレント映画初鑑賞の2人は、機関士の夢を見るか?
2020年3月7日のコラボ当日。みっこさんとミルフォードさんと、ジェリーは渋谷駅前のTSUTAYAで待ち合わせ。3月の寒風吹きすさぶ中集合した後、会場の「カラオケの鉄人渋谷センター街店」へと向かいました。
今回観た映画は、バスター・キートン監督主演の『キートン将軍』(1926年、The General)。南北戦争時代、実際に起きた事件を基にしたコメディ映画。
アメリカの著名な映画評論家ロジャー・エバート氏(Roger Ebert,1942-2013)も、『キートン将軍』を自身の生涯ベスト10作品の一つに選んでいます。
バスター・キートン作品の中でも、群を抜いて有名な『キートン将軍』。サイレント映画初体験のお二人が、どのような感想を持つのでしょうか。
事前情報として、南北戦争当時の軍服の資料だけを映画鑑賞前にお渡しました。
会場に着いたよ!
ジェリー(以下、じ):mikkoさん、milfordさん。本日はお忙しいところ、ありがとうございます!
mikko:いえいえ。こちらこそ、コラボしてくださりありがとうございます!サイレント映画を観るのは初めてなので、楽しみにしてました!!
milford:僕も初めての経験で、わくわくしています!ドリンクとスナックが来たので、早速観ましょう!
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<<<映画鑑賞中>>>
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じ:サイレント映画初体験、お疲れさまでした!
mikko:あっという間でした!楽しかった~
milford:アクションが多くて、意外とわかりやすかったですね!
【映画感想】サイレント映画は”サイレント”じゃない?!
mikko:サイレント映画って、セリフがないと思ってたんですけど、しっかり字幕があってびっくり!
じ:実はそうなんです。サイレント映画は、役者の声こそ入ってませんが、字幕を入れてセリフや状況説明をしてくれるんですよ!
字幕の背景に小粋な装飾を施す、字幕職人もいました。字幕の美しさを楽しむのも、サイレント映画鑑賞のポイントの1つなんです!
milford:時々長めの英文がありましたけど、大体の字幕は短めでしたね。日本語字幕が無くても、なんとも内容がわかるかも
じ:キートンは「字幕無しで作品の内容を伝えること」に腐心した人で、字幕は少ない傾向にあります
どこかのインタビューでは「チャップリンと、どちらがより字幕の少ない映画を作れるかで勝負した」とキートン自身が語っていました!
mikko:今観たDVDだと音楽も入ってましたけど、上映当時にはどうやって音楽をつけていたんですか?
じ:当時のスクリーンの前にはオーケストラピッドがあって、そこで楽団の人が演奏していたようですよ。もしくは、いろいろなギミックのついたオルガンを独りで演奏する人がいたりとか。日本だと三味線奏者が伴奏したこともあったみたいです
じ:さらに日本では楽団とともに、「活動写真弁士」(弁士)と呼ばれる人々が活躍していました。「映画よりも、弁士の語りを聴きに行く」と言われたくらい、個性的な弁士が百花繚乱だったみたいですよ
mikko:”活動写真弁士!”この前『カツベン!』って映画がありましたね!
milford:「活動写真弁士」さんって、どんなことを語ってたんですか
じ:英語字幕の日本語訳はもちろん、当時の日本人が理解しづらい習慣もわかりやすく語っていたそうです
例えば今回の映画を観ていて、わかりにくかったところはありませんか
mikko:そういえば、キートンと女の人の関係が少しわかりにくかったです…2人が夫婦なのかと勘違いしちゃいました。
あと南軍と北軍の軍服の違いも、ジェリーさんにもらった資料がなかったら分かりにくかったですね。
じ:僕も初めて観た時は、そう感じました!人間関係とか、文化的背景ってどうしても字幕だけでは理解しきれない点だと思います。そういったところを、弁士が語って説明してくれたわけです。
大きく言えば、活動写真弁士は「鑑賞者と映画作品の橋渡し役」と呼べるかもですね
milford:活動写真弁士をされてる人って、現在何人位いるんですか?
じ:昔は全国に数千人いたらしいですが、現在では非常に少なくなっています
現在活躍されている活動写真弁士さんの一例
(敬称略)
mikko:人数がとても少ないんですね…。活動写真弁士さんの語りって、どこで聴けるんですか。
じ:例えば「無声映画観賞会」というイベントが毎月日暮里で行われています。
また各地のホールや映画館でも、弁士さん付のサイレント映画が上映されたりしますよ!
milford:チェックしてみます!!
【映画感想】さっきのアクション、どーかしてるよっ!!
じ:映画の中身についてはどうでしたか?
milford:アクションがすごかった!
mikko:そう!チャップリンのような、街中で撮影された映画を予想していたんですけど、蓋を空けてみたら屋外でしかも蒸気機関車を使った大規模なセットでビックリ!!
特に最後の、列車が橋ごと落下するシーンは迫力満点!やっぱり実物なんでしょうか?
じ:あのシーンはすごいですよね!僕にとっても、何度もリピートしちゃうポイントなんです!!
もちろん本物の機関車を使っています。あのシーンだけで、現在の価値で6000万円弱の費用がかかったらしいですよ。サイレント映画史上、最もお金のかかったシーンの一つだとか
milford:あれだけ大掛かりだと、片付けるのも大変だったでしょうね
じ:さすが綺麗好きのミルフォードさん。面白いご指摘ですね!実はあの機関車は、ロケ地にしばらく放置されてたようです
mikko:えーっ!不法投棄ですか?!
じ:これには理由がありまして…。どうやら機関車の残骸を、観光スポットにしていたようなんです
泣く子も黙る当時の大大大スター、バスター・キートンが撮影した場所なわけですからね。映画ファンならずとも、こぞって足を運んだでしょうね
mikko:まさに聖地巡礼!
じ:しかし残念ながら第二次世界大戦の激化にともない、1940年代には機関車は片付けられてしまいました。鉄資源として徴発されたからです…。戦争許すまじ!
当時の写真とかが残されているかもしれないので、一度は現地に行ってみたいですねぇ
milford:ロケ地はどこだったんですか?
じ:オレゴン州の山奥になります
mikko:それは遠いですねぇ(遠い目)
milford:線路にはさまった障害物に枕木を当てるシーンも、すごかった!
じ:あのシーンもどうかしてますよね!!もし外してたら機関車が脱線して、下敷きになってた可能性もありますからね。CGを一切使わないことで、一層ハラハラするシーンだと思います!
mikko:他にもスリル満点のアクションシーンが多くて、私は何度も「ひゃっ!!」とか「すごい!!」とか声が出ちゃいました!
じ:素晴らしい!どんどん声を出して、どんどんリアクションしていきましょう!!
【映画感想】"The Great Stone Face" never dies!
milford:出演者の顔の表情も豊かでしたね
じ:そうですね。サイレント映画の場合、声が無い分顔の表情がことさら重視されたんでしょうね
ちなみにバスター・キートンは、”The Great Stone Face”(偉大なる無表情)という異名を持っています
milford:たしかに、劇中でキートンは全然笑っていませんでした!
じ:そうなんです!実は笑わないだけで、それ以外の表情はとても豊かなんですけどね
『The Great Buster: A Celebration』(2018)という、バスター・キートンのドキュメンタリー映画がありまして。
その中でジョン・ワッツ監督(JonWatts)が
「『スパイダーマン:ホームカミング(Spider-Man:Homecoming、2017)』を制作する際、スパイダーマンの表情研究のためにバスター・キートンを参考にした」と発言しています
mikko:最新映画の中にも、キートンのエッセンスが取り入れられているわけですね。まさに”The Great Stone Face never dies!(グレイト・ストーン・フェイスは死なず!)
【映画感想】映画がつなぐ過去と未来
mikko:今回、サイレント映画を観られてとても楽しかったです!
やっぱり昔に思いを馳せるのは楽しいですね!これからは新しい映画だけじゃなく、少し昔の映画もどんどん鑑賞してみたいと思います!
じ:映画は星の数ほどありますからね。面白い映画をみつけたら、ぜひ教えて下さい!
mikko:実は今、東急百貨店渋谷駅・東急東横店で「東横デパートの思ひで展」というのが開催されています(このイベントは2020年3月31日に終了しています)
そこの展示の中に「過去の渋谷の風景が写っている映画」が紹介されているんですよ!
じ:へーっ!映画に写った渋谷!興味深い。どんな映画が紹介されていましたか
milford:クレイジー・キャッツシリーズとか『東京のえくぼ』(1952)とかです
mikko:この『東京のえくぼ』には、すごくすごく貴重な映像が収められているんです!
なんと!!1951年から2年あまり運行されていた、幻の空中ケーブルカー「ひばり号」の勇姿が拝めるんです!
東急百貨店東横店東館の屋上にあった子供用の乗り物なんですけど、私も乗ってみたかったなぁーっ!
参考ページ:一体何のために?昭和時代、渋谷駅では空中ケーブルカー「ひばり号」が運行されていた (※動くひばり号の映像も観られます)
じ:映像を観ると、「もしも〇〇だったら、●●したい」という妄想を掻き立てられますよね
mikko:「映像に収められた昔」といったら、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018)って映画がありますよ!ご存知ですか?
じ:教えてください!
mikko:この映画は、2011年公開の韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』の日本版リメイクなんです
病床の親友のために、高校時代の友人を探すストーリーなんですけど、回想シーンで怒涛の勢いでコギャルを拝めたり、当時のJPOPが流れるんですよ!
それが最高で最高で…うぅっ(´;ω;`)
じ:感極まって泣いてしまいましたね…
milford:みっこさんは90年代のコギャル文化が大好きで、ギャル系雑誌『egg』のバックナンバーを買って読んだりしてるんですよ
じ:意外!!
mikko:ジェリーさんは、90年代の雑誌は好きですか?
じ:大好きです!ファッション雑誌は読んでないですが『Tech Saturn』『ログイン』『ディスク・ステーション』なんかを購読してましたよ
mikko:すごい!私も父の影響で、『ディスク・ステーション』のゲームをプレイしまくってました!北出マンとかわかりますか?
じ:『戦え!!北出マン』は何度も何度もプレイしました!今考えると、お手軽な値段にも関わらず高クオリティなゲームばかりでしたよね!(※『ディスク・ステーション』の価格は980~2,980円
じ:90年代のテレビ番組だと『進め!電波少年』、『スレイヤーズ』シリーズ、『投稿!特ホウ王国』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』、『くまのプー太郎』『とんねるずのみなさんのおかげです』等をみてました。霊能者宜保タカ子シリーズには、メチャクチャ笑いましたよ
mikko:あれから20年経って、不景気だとか新型コロナとか、暗い話題に事欠かないですよね
milford:本当ですね…
じ:そんなご時世でも、映画を観て明るい気分になりましょう!
ドイツにUFA(ウーファ、Universum Film AG)っていう映画会社があります。この会社って第一次大戦の敗戦により疲弊したドイツで、真っ先に銀行からお金を集めてつくられた会社なんですよ
当時の世界的な有名監督やスター俳優が次々と輩出されたこの会社も、元は敗戦で暗くなったドイツの人々を明るくするために設立されたわけです
mikko:そういえば渋谷駅前の東急百貨店も、第二次大戦直後は建物の一部を映画館や劇場に改装して娯楽を提供したらしいですよ!
milford:現実に絶望した時は、映画の虚構に一旦逃げるのもありですね。今日は大変面白い映画を観せてくださり、ありがとうございました!
じ:こちらこそ、本日はありがとうございました(*^^*)
後日談:mikkoさんにインタビューさせていただいた記事を公開いたしました。ご一読いただけますと幸いです!
【インタビュー前半】「そうだ!両さんになろう!!」【mikkoさん】
【インタビュー後半】「旅人を両さんにしちゃう水先案内人」【mikkoさん】
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