Fair Enough (20首)
短歌20首連作です。
────────────────
Fair Enough 丸田洋渡
刺したあと貫くためのひと押しで爪楊枝の先端は曲がった
声が磁石になって四月の教室に仲良しグループのできあがり
先生の言うとおりに列に並んだ モルモットに二回出てくるモ
これもまた何かの暗示 新しい歩道橋が積乱雲の下
振った手のその手のひらが見えたなら占い師は占ってしまうよ
夏の雲は秋の雲へと散らばった 折紙の手裏剣のきらめき
夕ぐれどきのスーパーみたい生きていることが黄色と赤に感じて
上がったり下がったりするものはみな私を指していると思った
ひとりなのにきれいに泣こうと心がけた 思いの外それは上手くいった
木蓮のふとっていく芽ぐつぐつと心仕込みの呪いをかける
躓いてあなたが手を置いた柱は、建造物を強くしている。
取引は片方に良くなるように動くのが常 月の笑い声
雪がふる/サイケデリック・ハイ・スピード/裏ルートで自爆で好タイム
戦後ってあと何十回来るだろうパセリまみれのサフランライス
春のわかめ 青緑色のビー玉 カラスアゲハの死体 火の雨
恋っぽい見出しで釣ることしかしない新聞のライターの死に様
〈それは墓に関係しますか?〉 はい 〈それは無党派層に関係しますか?〉
墓地といえど海外じゃなく日本の、田舎ではなく都会の中の
光の行列 まんなかのこどもは一人まっかな提灯を持たされて
Q.今現在、日本の海のなかに、黒猫は何匹いるでしょう?
○
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?