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毒と苺(20首)

短歌20首連作

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 毒と苺  丸田洋渡


さくら色の車が追い越していった(あんず色の直線踏みながら)

はじまる恋/すすむ映画館の解体/恋の解体ののちの跡地

食欲が健康を凌駕する夜みんなの想定を超えていく

銀を傷つけてつくった落書きの気持ちが分かるまで触りたい

説明がつきそうだから止めておく恋愛の毒性・苺性

イヤホンをつけてねむって音楽はねむれるわたくしを筒抜けた

 ○

ひそやかな光の投網ひとりだけ目覚めて朝の廊下へ出て行く

苺ジュースが苺ではないように私はもう私っぽくもない

婚姻の名字にこいち もくもくと雲に見紛うほどの排煙

考えごとがこの人を滅ぼしている よく滅ぶのがこの人らしさ

命の洗濯みたいな言葉を集めて本当になるまで煮詰めたい

エビマヨをやめてエビチリへと変える栃木県の畝る坂のように

身体をはみだしそうになる夜の心弛緩したギターの弦

誰もいない道で誰にも聞こえない声で叫ぶと ポリスが 来る

なんとなくたましいは透明っぽい眼球より眼鏡の傷っぽい

さよならを意味するモールス信号をきみは知らないからきみへ打つ

私を、信じます 広い光を吸収する海の砂の床

思い馳せ顔で入浴 生きるのが急激に楽しいときもある

洞察がまっすぐにするこれからの怖い人生 ハルジオンの首

 ○

説明のつかないことを愛として毒として苺として食べた




〈他 作品〉

Heart Loop

Overhaul

Whisper/Wistaria


〈SNS・告知兼現状報告〉

Bluesky

Instagram


○2025年春〜初夏頃を目処に歌集を制作しているところです(出版社:ナナロク社)。過去の連作を解体して、一冊の本として全ての歌順を再構築するつもりでいるので、この「毒と苺」もまた、この場所においてのみ居合わせた歌群ということになります。
 作るペースは変わっていませんが、ある程度歌集に気を配りながらになるので、作品発表は若干慎重ぎみになると思います。とはいえ、依頼されている数件が徐々に公開されていくと思いますので、結局出し続けている感じにはなると思います。(いつでもご依頼待ってます!)
 あんまり、歌集作ってるアピールを頻繁にする のも読者側からすれば微妙にそそられない気がするので、密かに進行していきますが、忘れられても寂しいので、''来春に何かが刊行されるような気がする''という感覚のみ ぼんやり持っておいていただければと思います。

 うまくいけば、今年中くらいに、第三滑走路(青松輝、森慎太郎、と僕で構成されている短歌ユニット)の何かしらの冊子が作られるかもしれません。うまくいくかどうかは三人の気分によります。

 また次の作品でお会いしましょう!


 


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