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【OAK】ローテ候補のメンバー紹介~さようならコール・アービン~

 オークランド・アスレチックス(OAK)のロースターにひしめく(ひしめいていた)先発投手12人を紹介する記事です。ざっくりとした印象論で、データの裏付けはほぼありませんこちらの記事の補足となっております。

 記事を書いてから公開するまでの間に、不動の軸と認識していたコール・アービンがBALへトレードされてしまうまさかの事態が発生しました。そこで、冒頭のアービンの紹介だけ増量しました。BALやア東球団ファンの方はここだけでも読んでくださると嬉しいです。

コール・アービン(LHP)→BALへトレード

 OAK不動のエースに成長した左腕。元々は20年オフにPHIから金銭トレードで獲得されてきた、リリーフとしての起用予想もある期待度低めの投手でした。しかし21年のスプリングトレーニングで、先発として誰もが予想しなかった快投を見せると、マイク・ファイヤーズの故障もあってローテの椅子をゲット。「なぜ抑えているのか分からない」と多くのファンが不思議がる投球内容ながらも、気がつくと丸一年ローテから外れることなく30先発をこなし、21年のコンテンド期を立派に支えました。
 22年にはチームが再建期に入る中、肩の故障で離脱する時期はありつつも2年連続で30先発をクリア。多くの被安打とハードヒットを許しつつも防御率4点台前後を保ち、ちょうど良いライナー打球の量産で「打たれて取る」とも言える特殊なスタイルで大成功しました。

 アービンは、直球系の平均球速が90マイルギリギリで、変化球もチェンジアップがやや優れている程度と、スペック的には平凡そのものです。ではなぜ崩壊せずローテを回せるのかというと、コマンドの良さ、球質、巧みな投球の組み立てのおかげだと推測しています。アービンの直球はフォーシームもシンカーも2000に届かない低スピンレートで、特にシンカーはライナー性のハードヒットは簡単ですが高々と打球角度を上げきるのは難しい印象です。これを非常にコントロール良くゾーンの内外に散らしつつ、絶対に四球は出さないようにする、シンカーと同じコースにチェンジアップを通して追いかけさせる、シンカーと思わせてフォーシームで空振りや見逃しを奪う、打者を差し込んでライナーアウトにするのがアービンのスタイルです。
 アービンの投球を見ていると、角度の低いシングルヒット、角度低めのツーベース、速い内野ゴロ、外野ライナーアウトが非常にテンポ良く続いていきます。相手打線からすると、2〜3点くらいはあっさり取れるしいつでも打てそう(実際たまに炎上する)なのに、大量得点は難しい、気がつくと少ない球数でサクサクとQS/HQSにまとめられてしまう不思議な投手だと思います。その独自スタイルが、BB %とChase Rateを除き軒並み真っ青なbaseball savantの指標にも表れているように感じます。

出典:https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/cole-irvin-608344?stats=statcast-r-pitching-mlb

 狭い球場の多いア・リーグ東地区に移籍するので、これまで広大なコロシアムでアウトやツーベースになっていたライナー打球が、フェンスを超えてスタンドインするのではないかと非常に心配しています。22年からやや遠くなったBAL本拠地カムデンヤーズの外野フェンス、ホームランを浴びまくっている印象のカーブの改善、持ち前の配球IQの高さに期待したいと思います。BALでの活躍を祈っています。

ポール・ブラックバーン(RHP)

 昨年初めてオールスターに選出された、チーム最古参の投手。元々は12年にドラフト全体56位でカブスに入団したものの、その後はメジャー全体のトレンド(打者のフライボールレボリューション、投手の球速上昇やフォーシーム全盛)について行けず伸び悩んでいました。
 しかし22年は、直球をシンカーに絞った上でかつて90マイルに届かなかった平均球速を上昇させ、カッターやカーブと組み合わせてコーナーを丁寧に突く投球を展開。6/10までに12先発して防御率2.31と、ついにドラ1ポテンシャルを覚醒させました。後半戦はやや打ち込まれると、中指のケガの影響と判明し早めにシーズン終了。真の姿は前半戦と思われ、23年もブレイクした22年前半戦の姿の再現に期待です。

ジェームズ・カプリーリャン(RHP)

 17年夏にソニー・グレイのトレードによりOAK加入した右腕。TJ手術の影響でメジャー昇格に時間はかかりましたが、20年の短縮シーズンにようやくリリーフとしてデビューを果たしました。21年以降はメジャーに先発として定着。マイナー時代の球速上昇狙いをやめて直球を94マイル程度に抑える代わり、とにかくゾーンの端を狙うビタビタのコマンド勝負に賭け、多くの球種をバランス良く交える路線が一定の成功を収めました。
 際どいコースを狙いすぎて息苦しくなり四球で自滅することもありますが、ソリッドな先発4~5番手としてのポジションを確立しています。22年序盤はバッピ状態でしたが、夏場に劇的に持ち直し、最後は4連続QSと力強くシーズンを締めくくりました。
 今オフには古傷となっていた右肩の手術を行い、順調にリハビリを進めています。

ケン・ワルディチャク(LHP)

 22年途中にNYYから、フランキー・モンタスの対価として獲得された大柄な先発左腕。OAK加入後、メジャー昇格して7先発をこなし、確かな実力を示しました。シーズン最終戦では、この日が引退試合のスティーブン・ボートとバッテリーを組み、7回無失点の好投を見せたのがOAKファンとしては感動的でした。
 腕を大きく広げたダイナミックなフォームから、平均94マイルの球速以上に打者を押し込む直球、メジャー有数に変化量が大きいスライダーをゾーン内に投げ込み、コンテンダー打線相手でも力押しできるパワータイプです。たまに内角直球を狙い撃ちされるシーンが見られ、チェンジアップの活用法など配球の組み立てやコマンドはまだ模索中といった細かい伸びしろはありますが、現状でも既にメジャーの先発として通用しておりポテンシャルは疑いないです。このまま経験を積ませていきたい、将来のフロントスターター候補筆頭です。

カイル・マラー(LHP)

 22年オフに、ATLからショーン・マーフィーの対価として獲得した若手左腕。トレード成立時はATL傘下1位のプロスペクト(MLB公式ランキング)でした。昨年はメジャーで散発的に3先発し、5月の登板では炎上したものの、8月と9月の登板は無難にこなしました。
 まだ投球をちゃんと見たことはないため語る事はできませんが、球速とスピンレート十分の速球に、空振り率の高いカーブとスライダーを備える素材型のようです。ただ与四球率の高さ、コマンドの不安定さを弱点として、先発に残れるか不安視する評価も散見されます。ワルディチャクと同じくマイナーでやることはもう残っていないため、残り1のオプションを有効活用してメジャーでの先発経験を積ませ、しっかりと課題を把握させたい選手です。

JPシアーズ(LHP)

 22年夏にNYYから、フランキー・モンタスの対価として獲得されてきた小柄な左腕。恐れずに直球でバッターの胸元を攻めつつ、良質なスライダーとチェンジアップを散らしていくスタイルです。昨年はメジャーで9先発しソリッドな成績を残しました。
 ただイニングが深まるにつれて慣れてきた相手打線に捕まりやすいほか、ワルディチャクに比べて球威や球質に恵まれていない割に攻めの投球を貫くため、定期的に大炎上するのが欠点です。そのため、特に効果的なスライダーを活かし、ミドルから1イニングまで汎用性の高い左のリリーフへ転向するルートもあります。

エイドリアン・マルティネス(RHP)

 SDから、ショーン・マナエアの対価として獲得したメキシコ出身の右腕。マウンド上で踊っているような躍動感あるフォームから、平均94マイルのヌルヌルと気持ち悪い動きのシンカー、落差の大きいチェンジアップの組み合わせが強烈です。
 リリーフ適性もかなり高そうですが、本人は先発へのこだわりが強いように見えます。22年9月にはワルディチャクの昇格に伴いブルペン行きとの情報がいったんは流れたものの、先発で好投した直後だったため、結局先発ローテへの残留が発表されるという小事件がありました。


アダム・オラー(RHP)

 NYMから、クリス・バシットの対価として獲得されてきた右腕。高年齢もあり、22年は開幕からメジャーで先発起用されましたが、ボコボコに打たれ失格してしまいました。ただリリーフ転向すると球速がやや上昇、メジャーで通用する兆しを見せ始めます。
 7月にローテの都合で再び先発に戻ると、平均93マイルのフォーシームと、小さく変化するカッターを軸にゾーン高めを攻め、スライダーとチェンジアップを交える投球を展開。8月末にはNYY打線を相手に8回1失点の好投を見せ、一部のOAKファンから「オラーの奇跡」と呼ばれました。昨年1年を通してかなりの成長が見られた選手ですが、相次ぐ有望新加入選手の波により立場は不安定なままです。23年は生き残りへ向け、経験値リセットせずに春先から好パフォーマンスを再現することが求められます。

フレディ・ターノック(RHP)

 22年オフに、ATLからショーン・マーフィーの対価として獲得した若手右腕。22年は2Aと3Aで計23先発をこなしましたが、メジャー登板は1試合(0.2イニング)のみと顔見せ程度でした。マラーと同じく投球を見たことがないため語ることができませんが、95マイル付近の速球にパワーカーブ、チェンジアップと恵まれたスペックを持っており、リリーフ起用も可能な一方、先発に残るポテンシャルも持っているようです。

AJパク(LHP)

 16年のドラフト1巡目(全体6位)でOAKに指名された大型左腕。身長2メートルの恵まれた体格から、スリークオーター気味のフォームで96~97マイルの剛速球、鋭いスライダーのコンボを誇り、ランディ・ジョンソンとも比較されるロマンの塊でした。
 しかしプロ入り後、春先にローテ入りが大いに期待されるたび、負傷離脱するという無念なパターンを繰り返します。ようやくケガが落ち着いた頃にはチームがコンテンドのまっただ中であったため、未知数な彼をローテで試す余裕がなく、仕方なく球速を活かしてブルペンで稼働してきました。
 しかし今オフ、相次ぐ先発投手獲得にも関わらず、パクを先発で試したいとOAKフロントはたびたび発言しており先発転向に本気モードのようです。元々のポテンシャルを活かせない、もったいなさの塊のようなキャリアを送ってきたパク。ようやく期待されていた姿を取り戻せるチャンス到来です。

ドリュー・ルチンスキー(RHP)

 19年から22年まで4年間、韓国・KBOでプレーしていた逆輸入ベテラン右腕。特に昨年は31先発で防御率2.97の優秀な成績を上げ、今オフにOAKと1年3M、2年目オプション5Mで契約しました。
 投球をちゃんと見たことはありませんが、スライダーとスプリットが共に良質で、一定の強さの速球(93~96マイル)から両方向に変化球を散らすという、現代メジャー先発としてのオーソドックスなスペックを満たしています。渡韓以前のMIA時代にはリリーフ経験もありますが、毎年30登板する頑丈さもあるため先発で見てみたい選手です。

藤浪晋太郎(RHP)

 今年NPBからポスティングでOAKに加入した右腕。NYMコーエンオーナーの影響か今年のFA市場の動きはかなり速く、藤浪がポスティング申請した段階で、大物先発と契約を済ませてローテを埋めたチームが予想よりありました。それでもまだローテ補強が進んでいないチームは一定数残っていたのですが、藤浪の番が回ってくる頃には、今度はコレアのトラブルが発生し市場の動きが遅くなってしまったようです。
 さらにMLB球団からの評価にも、先発を強く希望する本人の希望とはミスマッチがあり、SFやARIはリリーフとして評価していたとのこと。リリーフとして安い複数年契約を結び身動きが取れなくなるよりは、先発を目指して短期契約を結びたいということで、希望の西海岸に位置し、かつメディアやファンが静かで(!)野球に集中できるOAKが選ばれたようです。
 藤浪のスペックについては、NPBファンの方が詳しく知っていると思うので細かく語りません。ただOAK先発陣においては、平均96マイルをたたき出せる藤浪の身体的スペックは非常に高い方であり、高速スプリットを武器にする点でもキャラクターは立っていると言えます。メジャー全体で見ても快速球と良質なスプリットを武器として活躍した先発のモデルケースはあり(TORゴースマンやTEXイオバルディなど)、去年日本で改善された制球を維持したまま通用する兆しを見せれば、栄転トレードやFA契約の引きも出てくるでしょう。

その他補足

 ATLから加入したマラー、ターノックについては、運河さんがこちらの記事で詳細にまとめてくださっています。併せてご覧下さい。

 藤浪、ルチンスキーについてはもーさんの記事も併せてご覧下さい。

 なお、ホーガン・ハリス(LHP)、ルイス・メディーナ(RHP)、メイソン・ミラー(RHP)については、23年にメジャー昇格の可能性もありそうですがマイナーでの登板が中心と想定し、紹介から除きました。

※見出し画像はこちらのツイートから引用しています。


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